月報 2004年度 6月号

平成16年(2004年)6月1日
編集発行・横須賀市教育研究所/代表・五ノ井文男
〒239-0831 横須賀市久里浜6-14-3
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巻頭 特集 研修セクション
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巻頭


規範意識をどう育てるか

◆子どもの規範意識の崩れが語られ始めて久しくなりました。昨年、ベネッセコーポレーションが東京・埼玉・神奈川の中学生全学年を対象に実施した調査の中で、規範意識を取り上げたものがあります。その調査結果の一部を抜枠しました。出現率(%)を予測してみてください。
(1)授業中に自らが 「している」 割合
・「黙ってトイレに行く」  ( )%
・「手紙のやりとり」    ( )%
・「友達とおしゃべりをする」( )%
(2)次の場面で自分のとる行動
・「学校に遅刻しそうでも走らない」( )%
・「持ち主不明のカサを無断で使う」( )% 
・「期限を守るために友達の宿題を写して提出する」 (  )%
結果は上から(1)2.4%、9.5%、49.1%(2)15.1%、
21.4%、50.3%の順ですが、この結果を先生方はどのように感じられるでしょうか。
◆この調査結果について東京成徳短期大学の深谷昌志先生は 「規範意識が崩壊していることはないが、『まあ、いいか』 という感じで、自分にとって楽な方を選択する傾向が見られる。巨悪ではなく微悪なので、つい大目にみてしまう。そして、学年が上がるにつれ中悪になりがちになる。」 と指摘しています。
◆こういった傾向は子どもの世界だけなのでしょうか。「赤信号の交差点を渡る」 「駐輪禁止の場所に自転車を放置する」 「電車の中、携帯電話で通話する」 等、ルールは理解しているけれども、自分にとって都合がいいからと、要領のよい生き方を見せているのは、大人たちです。そんなお手本を子ども達は敏感に感じ取り、自らの生活の中で表現しているような気がしてなりません。

 
◆学校の中ではどうでしょう。一人一人の発達段階に留意することはもちろんですが、「ダメなものはダメ」 ときちんと指導し、「まあ、いいか」 ではなく、我慢をすることやルールを守ることを全職員が共通して身につけさせようとしているでしょうか。ワガママを押し通そうとする幼児期から除々に他人の気持ちや都合も考える力を身につけることは必要不可欠です。
◆そのためには最低限これだけは全員に守らせるという共通の目標を校内で認識することが大切です。決めたことに関しては 「子どもが気づくのを待つ」 という待ちの姿勢ではなく、「最低限身につけさせる」 という攻めの姿勢で要求していく中から育っていくものだと考えます。微悪だからと物わかりのよい大人になるのではなく、指導する場面を的確に捉え、適切な指導を進めていくことが大切です。もちろんこれらは学校だけが担うものではなく、親のしつけと連動させていくことが有効でしょう。
◆一方で、ルールが実態にあわなくなったときにはどういう手続きを経て、改正していったらよいかを学ぶことも重要です。児童会や生徒会などが中心となって自分たちでルールをつくり、それを守ると共に、つくったルールを改正する方法や手順を是非体験させたいものです。
◆深谷先生は「日本では規範感覚を形成する際の基準が見いだしにくく、子どもたちは外部からの規制に従って行動している。今さら宗教に土台を求めにくい中では、市民社会の支え手を規準に規範を考えることが妥当なのではないか。」 と言われています。一番近にいる大人の規範意識が子どもたちに見られています。
          (主幹 中山 俊史)

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特集


私の学級づくり

ゼロからのスタート
            鶴久保小学校 教諭 草苅 幸美

 念願の教師になったものの、はじめてのことばかりで毎日が精一杯でした。泣いたり笑ったりしながらも、この1年でたくさんのことを感じ、その中でも 『私自身が心にゆとりをもつ大切さ』 を痛切に感じました。
 私に余裕がない時には、子どもにも落ち着きがありません。これは授業でもいえることでした。 「授業がうまくできない。子どもものってこない。」と悩んでいた時、指導教員の先生の授業を見せていただきました。先生は身振り・表情・声と全てで授業をされており、先生自身が授業を楽しんでいることが伝わってきました。私までわくわくしてきました。その時、私の授業に対する不安が子どもにも伝わっていたことに気づきました。教師が授業を楽しまなければ、子どもも楽しいはずがありません。授業を楽しみ、全身で子どもに伝えようと心がけることで、子どもの反応は確かに変わってきました。
 1年生の担任である今、その大切さを実感せずにはいられません。また、ほめることの大切さも実感しています。ほめることは、単に嬉しいという感情だけではなく、そのことに自信を持ったり、次への意欲につながったりする魔法のような力を持っていることを感じます。子どもの頑張りや努力を見つけたら、タイミングよくほめてあげられるよう、心にゆとりをもち、子どもをしっかり見るアンテナを常に張っていきたいと思います。
 多くの課題を抱えている私ですが、子どもたちの笑顔が輝くことを楽しみに、今私ができることを精一杯やっていこうと思っています。
明確になってきた教師としての目標
              神明中学校 教諭 清田 直紀

 多くの人に支えられ1年間を何とか乗り越えることが出来ました。昨年度は先輩方に助けていただきながら日々の仕事をこなしていくのが精一杯でした。しかし教師生活2年目に入り、少しずつですが心に余裕が持てるようになっています。1年目にはあいまいな形でしか把握できていなかった教師としての目標も段々と心の中でしっかりとした形になりつつあります。
 その目標とは生徒のやる気や向上心、魂に火を付けることです。自分の目標や夢に向かって努力を積み上げることに充実感と楽しさを感じるような生徒を育てていきたいです。そのためには、生徒を教えるよりもまず私自身が常に学び続け、自分を高め、生徒にとって魅力ある教師になることが重要だと考えています。生徒は教師の教える内容よりもむしろ教師の姿、生き様から何かを感じ学び、真似ていくと思うからです。
 教師の役割には、教科を通じて知識を与えることや校務分掌など様々なものがありますが、その中でも一番大切なのは 「身近な大人として生徒の手本や見本になる」 ことだと信じています。生徒の心に火を付けるためには私自身の心に火が付いていなければなりません。私は社会科の教師として日本の良さを学び続けることに力を注いでいます。この国の歴史や伝統、文化、国際社会の中でどうあるべきかなどについて学んで見識を深め、その学びから得たものを生徒たちに還元していくことに情熱を燃やしていきたいと思っています。
 そういう私の姿勢や生き様から生徒たちに何かを感じとってもらい、生徒の魂に火を付けるのが私の教師としての目標です。


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研修セクション 


6月の研修講座案内

 基本研修 
◆初任者研修                    時刻13:30~17:00(29日 8:15~13:15)

1日(火) 教科指導1
〈授業参観および協議〉
大塚台小学校教諭
田中 孝和    嘉山 雅人
梶川 友恵 工藤由紀子
大塚台小学校
岩戸中学校教諭 小板橋貴久 上の台中学校
15日(火) 児童・生徒指導について 神明中学校校長    松永 和夫 横須賀アリーナ
29日(火) 障害児教育1
〈授業参観および体験〉
〈学校長講話〉
  ろう学校
養護学校


◆2年次教職経験者研修  時刻15:30~17:00

8日(火) 教職員に求められる資質 横浜国立大学教授 
人間科学部教授   髙木展郎
第1研修室

 

◆21年次教職経験者研修 時刻15:30~17:00

16日(水) 「職員の連携と危機管理」 横浜国立大学教育
人間科学部教授  小泉 秀夫
第1研修室


 その他の研修 
 

◆教育課程担当者研修        時刻15:30~17:00



30日(水)  グループ協議交流「校内研修の企画と運営」 第2研修室他


25日(金)  グループ協議交流「校内研修の企画と運営」 第2研修室他

 

◆初任者研修拠点校指導教員研修 時刻9:30~17:00

8日(火)     カウンセリングマインドとその技術 横浜国立大学
教育人間科学部助教授    芳川 玲子
第1研修室


 

◆情報教育担当者研修

研修オリエンテーション 日程未定 15:30~17:00 会場未定 指導主事
情報教育担当者研修 8月2日(月)~8月4日(水) 9:00~16:00 大塚台小学校 指導主事、外部講師

 

◆理科実験講座
(1)理科基礎技術講座  開始時刻 15:30~

9日(水) 観察・実験基礎技術1~科学の扉~ 教育研究所指導主事  坂庭 修

 

(2)小学校・中学校理科教材研究講座 
        開始時刻(1)(2)(4)15:30、(3)10:00 会場は別途連絡

2日(水) 校内樹木調査  県立高校教諭  横山 一郎 理科実験室他
16日(水)
※実施日が変更になりました。
星や月〈小4〉 大塚台小教諭  梶川 友恵 理科実験室


 

◆情報教育研修
(1)実務コース  開始時刻 16:00 (夏季休業中は9:00)  会場は教育研究所

8日(火) ワープロソフト(ワード) 情報研修室
11日(金) 表計算 情報研修室
15日(火)
25日(金)
プレゼンテーション(パワーポイント) 情報研修室
22日(火)
29日(火)
画像処理 情報研修室

 

(2)管理職コース   開始時刻 9:30   会場は教育研究所

9日(水)
16日(水)
校長対象 情報研修室

 

◆教育課題研修 開始時刻 15:30  会場は教育研究所第1研修室または第2研修室

11日(金) 教師が取り組む不登校対策 国立特殊教育総合研究所
情緒障害教育研究室長
花輪 敏男
第1研修室

 

◆教育相談研修 開始時刻 15:30 会場は総合福祉会館4F会議室

4日(金) 「リストカットにどう対応するか
~精神科医からのアドバイス~」
国立精神・神経センター
精神科医  松本 俊彦
総合福祉会館
5階視聴覚室

(指導主事:木屋・北村・椿本・北原)

 

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教育相談セクション 


教育相談Qand A
中学2年の女子が5月の連休明けから不登校になっています。朝になると吐き気やめまい、腹痛などの身体症状が強く出て、そのために登校したくてもできないと訴えます。家庭訪問をすれば会って話せます。友人関係のトラブルなど学級生活上の悩みは特にないということですが、本人は真面目で完璧主義傾向が強く学習の遅れを気にしています。担当としてどのような働きかけをしたらよいでしょうか。
◆不登校の身体状況をどうとらえるか
不登校になった子どもの多くは何らかの身体的な不調を訴えます。頭痛、腹痛、倦怠感、関節痛などが一般的ですが、中には38度を越す発熱や目が回って歩けないと歩行困難を訴えるケースもあります。こうした身体症状は精神的な強い緊張が長引いたことにより自律神経が不安定になって発症するもので、検査をしても身体的な異常が認められない場合が多くあります。このお子さんも医療機関を受診したのですが、特に病気ではないということで胃薬が2週間分処方されました。今回のケースは保護者が受容的なのでお子さんは安定していますが、場合によっては周囲の大人たちから自分の苦しみが理解してもらえないように感じて子ども自身がつらい思いをすることがあります。
 また、胃炎や神経性大腸炎等の診断を受け治療を開始するようになった場合には、病気の治療のみに関心が集まり、病気を治療すれば学校に行けるはずであるという思いが、かえって子どもを追い込んでしまう場合もあります。いずれにせよ、子どもが身体の不調を訴えた時には医療機関や相談機関とも連携しながら、まず子どもの痛みやつらさに共感し不安な気持ちを支えてあげながら、本人のできることから始めることが大切です。
◆起立性調節障害について
 朝起きられない、眠気がとれない、立ちくらみがする、食欲不振などの症状が強い場合は起立性調節障害の可能性があります。これは思春期前後に多く発症する自律神経失調症の1つです。医療機関ではO.D.診断基準に照らし診断を下し、家族や子ども本人にこの病気についての説明を十分に行った上で、投薬治療や鍛錬療法、または生活指導を行います。教師は、医療機関や保護者と連絡をとり、適切な関わり方を検討した上で支援を行うようにしましょう。
◆本人への支援
 登校時間前後に限って身体症状が強く出る場合には、朝は無理をせず 「体調が少し良くなったら登校しよう。」と受容的に接します。登校時間や登校形態にこだわらず少しでも体調の良い時間帯に、安心できる場所(例えば保健室等)に登校を促してみます。本人が望むなら保護者の送迎や同伴も認めましょう。短時間でも学校に来たことを大いに認め、長続きすることに重点を置きます。「学習の遅れを気にしている」 という状況を上手に利用し、負担になりすぎず且つある程度の達成感の得られる学習課題を用意して少しずつ与えます。学校で過ごす時間が短いのであれば、残りは家庭学習にして後日登校するための動機づけにします。この時大切なのは、本人が学校に来た時は極力誰かが相手をして、学習課題のまる付けをしたり励ましのことばを掛けたりできるような校内の支援体制作りです。
 ただし、別室登校というのはあくまでも応急的な対応と考えるべきです。校内の教育相談会議で本人の状況、今後の支援の目当て、支援の期限をきちんと話し合っておきます。その上で長引きそうな時は支援方法の変更をします。学校への登校に限界があれば家庭訪問指導に切り替えたり、相談機関にかかることを勧めましょう。学校外の場所であれば緊張感が低く、小集団での生活や学習に適応できそうなのであれば、適応指導教室や相談学級を勧める方法もあります。
 「少しずつでも学校へ来ているのだから」 と安心して別室登校を半年以上も続けているというのは感心しません。長期間に渡り教室で一斉授業を受けていないという不安が新たな不安要因になり集団不適応を招いています。支援方法の見極めが大切なのです。

                             (指導主事 下川 紀子)

 

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こくばん



◆平成15年度 学校教育賞(2)

奨励賞
『衣笠中学校の環境整備』

衣笠中学校    技術吏員    和田 照子
用務員    酒井 素之


 除草、植木の剪定、側溝の清掃をはじめ、校舎内外のペンキ塗り等学校内の環境整備に細やかに取り組みました。生徒の学習環境を整える担当者としての取り組みの努力が伺えます。また、教師、生徒に対して作業の手ほどきをするなど、学校環境向上への意識づくりに一役かっています。

 


『認め合い、共に育つ学級を目指して』

浦郷小学校 教諭 鈴木 可恵


 クラスの実態を分析して、学校教育目標の実現に向けて具体的な手だてを講じ、実践を積み重ねました。子どもたちがお互いの良さに気づくように活動や接し方を工夫し、トラブルの多かったクラスを 「認め合い、共に育つ学校」 に変容させています。初任者が熱意を持って一年間の取り組みをまとめ上げ、学校全体の活性化にも役立っていると思われます。

 

『情報・ワープロ教育におけるタイピング指導実践報告』


横須賀総合高等学校 教諭 渡辺 雅人
 

 タイピング技術において、商業課程の生徒の挑戦意欲を向上させ、全国レベルにまで引き上げていった実践報告です。
 コツコツと地道に学ぶことが不得手な生徒が多くなっている中で 「職能育成教育」 として長年にわたり、継続的に積み上げられたものであり、参加した生徒の作文からも、その生徒の 「生き方」 にまで影響を与えている様子が伺えます。​

 

 

『本校の資格取得の取り組みと今後の方針』

(代表)横須賀総合高等学校 教諭 長島 博

 市立工業高校時代より教育課程の編成上指導が可能である各種の資格取得について、生徒の学ぶ意欲の向上を目指し、職業につながる意欲的な取り組みがなされ、成果を挙げてきました。一人一人のさまざまな要望に応えるべく、講習の時間を工夫しながら、関係する職員の協力体制のもとで長年にわたって続けられた努力は大いに評価されます。

 

『地域改善対策事業(地域学習会)をおこない、地域や本校生徒に還元できたこと』

横須賀総合高等学校    教諭 大島 巌
教諭 大古 聡

 地域改善対策事業として、資格取得を目指した受講生をしっかり支援し、目標を達成させました。卒業生であるこの受講生の人生や生き方に大きな影響を与えています。また、その社会人としての心意気や努力を高校生に直接語りかけてもらうことによって、生徒の意欲高揚を図り、大きな教育効果を与えました。 
 

  学校教育賞は本市の学校教育の発展振興をはかるために、昭和24年から実施され、昨年度で54回を迎えました。例年を上回る10作品の応募を頂きましたが、特に高等学校から多くの応募があったことと教諭以外の方から応募を頂いた点が特徴的でした。今年度についても引き続き実践を広く奨励していく方向ですが、それに伴って、一部内規の見直しも検討していきます。
 募集の詳細は7月頃にご案内させていただく予定です。今後もより多くの方々の熱意と努力の伝わってくる実践を、お寄せ下さい。                                                                    (中山)


(訂正とお詫び)

5月号の氏名に誤りがありました。関場孝夫先生は関場孝男先生、八田羽榮子先生は八羽田榮一先生の誤りでした。ここにお詫びとともに、訂正させていただきます。

 

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更新日:2023年10月31日 20:28:50