月報 2001年度 1月号
平成14年(2002年)1月1日
編集発行・横須賀市教育研究所/代表・小山 雄二
E-mail: kenkyu@edu.city.yokosuka.kanagawa.jp
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巻頭
気を組み合わせテンションを耐える学校を
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横須賀市教育委員会 生涯学習部長 |
■生来不器用で,通信簿の美術・職業はいつも1か2だったが,数年前のある日突然弦楽器が作りたくなり,以来,材料や道具を買い集めてきた。どんな音が出ようとも定年退職までには完成させて,自分の宝物にしたいと思っている。小さな弦楽器でもその弦総体では数十キログラムのテンションがかかるらしい。 棹の部分「ネット」には長い年月自然乾燥させた楓やマホガニーといった堅い木材が使われる。かなり吟味したワン・ピースの材料でも強いテンションがかかり続けると曲がってくるので強度をつけるために頭の部分を継ぎ足したり,ネットの芯に主材より堅い材を張り合わせて弦の張力に対抗させるようにする。ネックの中に鉄芯を入れて補強するとともに反りを補正できるようにするのも一般的である。ワン・ピースで反りを捻じれもなくいい音が出れば、それは名器であり名工である。
■最後の宮大棟梁といわれた西岡党一氏は「木組みは木の癖組み」だと言っている。力のある宮大工は山を見ながら,これはこういう木だからあそこに使おう,これは右に捩じれているから左捩じれのあの木と組み合わせたらいい,というようなことを見つけることが大切だという。 使いやすい木だけを求めて作業を平均化することを優先してしまうと「いいしごと」ではなくなってしまう。
■指導要領は10年スパンで変わるが,現代社会はもっと速いスピードで変わってくる。そんな世の中にあって,容易に変わらない,変わろうとしないのが学校であるといわれる。 これはけっしてほめ言葉ではなく,学校の保守性,硬直性の指摘であり,学校の変革を求める声である。 |
■本市も近々学校評議員制度を導入すべく具体的な検討に入っているが,これも学校を変わりやすくする方策の一つである。学校が保護者や地域住民の意向を把握し,それらを運営に反映させるためのしかけである。一人一人の評議員には,それぞれの責任において,意見を述べてもらうわけだが,当然のことながら,相当辛口の評価や意見が出ることが予想される。 校長対応だけの問題だとたかをくくっていてはいけない。辛口の意見を前向きによく咀嚼して日々の教育実践と組み合わせようとする謙虚さとしなやかさが学校に求められている時代だと思う。転換期の今,学校はどんな「いいしごと」をしてくれるのか,世間の期待は大きい。
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「ぴょんぴょんとぶよ」 大津小1年(当時)菅原 繭さんの作品 ~版画集「よこすか」第44集より~
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特集
総合的な学習・選択学習を考える カットは明浜小学校 黒岩弘明先生の作品です。 |
国際交流を通じて体験したこと
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「ありがとう」は言葉から
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桜台中学校 教諭 大波 広之
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望洋小学校 教諭 丹治 美穂子
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先日,マレーシアとシンガポールの中学生と本校2年生との交流会がありました。2時間ほどの短い中,あっという間に打ち解けた子ども達の姿に,驚きとともに確かな成長を感じました。
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今年,望洋小の6年生は,ALTのポーター先生と4回の英会話学習を行ったり,英語ボランティアの方と一緒にパンケーキ作りに挑戦したりすることができました。英語嫌いな私は,当初ALTとのコミュニケーションを考えただけでも,めまいが起こりそうでしたが,それは無用の心配でした。子どもたちの元気な声と目の輝きに助けられ歌やゲームに参加し,一緒に楽しんでます。
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姉妹校交流の効用 |
ふれあいを大切に |
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横須賀高等学校 教諭 小野 治子
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沢山小学校 教諭 立川 祐子
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オーストラリア・クィーンズランド州にあるエラノラ高校との国際交流事業も今年で6年目を迎えました。この6年間で日本からは65名,エラノラからは50名の生徒が参加し,お互いの国の文化や生活に触れることができました。
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沢山小学校の国際理解教育は,外国の人とのふれあいに重点をおき,言葉の学習だけでなくスポーツやゲームなどを通して,コミュニケーション能力を身に付けようとするものです。
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相談室
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<子どもとともに>
-子どもの家庭生活と学校- 教育相談室 |
◆Aさんはどんな冬休みを過ごしたのだろう,家族と心暖まるお正月を過ごせたのだろうか,と気にかかっているところです。Aさんの夏休みは散々でした。楽しみにしていた田舎への旅行は取りやめになり,海や山にも連れて行ってもらえず,ほとんど毎日家の中ですごさなければなりませんでした。お父さんは仕事で船に乗っていて,長い間家に帰って来ない時もありますから,お母さんと二人きりの生活には慣れていました。ところが,去年の夏にお母さんは体調を崩して,家事がほとんどできないような状態になりました。お母さんの心身の不安が,家の外で友達と自由に遊ぶことさえAさんに許しませんでした。
◆同じようにBさんも,長い夏休みの平日をほとんど一人で過ごさなければなりませんでした。両親は共働きで朝から夕方遅くまで仕事をしています。Bさんに兄弟はいません。近所付き合いはほとんどなく,親がいない時にBさんの面倒を頼める人はいません。Bさんの祖父母や親類は他市に住んでいます。そんな家庭の状況の中で,まだ小学1年生だというのに,一人で毎日留守番をして過ごさなければならないのです。「寂しくないの?」とBさんに聞くと,「別に。TVゲームをやっているから。」という返事でした。Bさんが孤独を感じていないように見えるだけに,余計深刻だと思いました。
◆AさんやBさんと同じような家庭環境の子どもは,きっとたくさんいるのでしょう。こういう子どもたちにとって,学校に行っていない時間は彼らの成長にどのような影響を与えているのかと考えると,暗い気持ちになります。なぜなら,家庭生活に何らかの問題がある子どもたちの多くは,学校でも人間関係が良好でなく,集団不適切などの深刻な問題を生じているからです。当然,学校で問題を指摘され,「お家でも協力してください。」という話になるわけですが,もともとが家庭の状況として厳しいのです。そう簡単に改善するものではありません。
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◆本来なら,学校が休みの時にこそ,子どもは家庭や地域の中で,学校生活とはまた違う意味で様々なことを学び,成長していくものです。特に長期の休みには,普段はなかなかいけないような場所へ行ってわくわくするような体験をしたり,いろいろな人に出会ったり,ゆったりした時間の中で,好きな事に熱中したりすることができます。そのような体験の中で,子どもは感性を磨き,社会性を身につけていきます。親子でたくさん遊んだり,話をしたり,一緒に家事をしたりし触れ合うことにより,家族の絆を深める絶好の機会にもなります。
◆子どもが心豊かな家庭生活を送れるかどうかは,多くは保護者にかかっいます。その肝心な保護者が何らかの事情で子どもに十分かかわれない場合には,学校は地域社会や行政と連携して,家庭に手を差し伸べなければなりません。具体的には,保護者の力になれそうな機関や制度を紹介したり,学校の休日に子どもが活動できる場所やプログラムを提示したり,保護者や子どもの相談相手になることなどが考えられます。子どもが家に帰った後のことまで関知するのは,学校にとっては荷の重いことであり,役割が違うのではないかという意見もあるでしょう。しかし,今,教育界も変革の時代を迎え,学校は地域に開かれ,地域と共に子どもを育てて行こうという姿勢が学校教育に求められています。学校は,家庭や地域への協力はなかなか難しいという考えでは,社会に理解されません。
◆いよいよ来年度から完全学校週5日制が実施されます。週2日の休みが,子どもたちにとって豊かな学びを生む機会となり,学校での学びと相互に反映し合うものになることを願っています。
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(教育相談室直通電話…34-9308 下川 紀子)
図書室・資料室
図書の紹介
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-新しい教育課程・総合的な学習- | -教育論- | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(図書・資料研究室直通電話・・・TEL36-2418・一栁 直行) |
理科・環境教育
いよいよ平成14年の幕開けです。この4月から新教育課程がスタートする新年度へ向けての様々な準備に追われることでしょうが,子どもたちの力を伸ばす問題解決学習による理科授業にも力を注いでください。
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(理科教育研究室直通電話…TEL 36-6104 小田部英仁)
情報教育
▼来年度からのより良い運用をめざして▼
教育情報通信ネットワーク(地域イントラネット)基盤整備事業が終了しました。
この事業は通信環境の基盤を整備するということで,整備された通信基盤をどう運用していくかがこれからの課題です。
学校間が100Mbpsという高速な回線で接続され,インターネットだけでなく,ネットワークを利用した新しい教育活動も想定されています。
小学校では中学校等に続き,コンピュータ室が整備され,本格的に児童のインターネットを利用した学習活動が始まりました。
職員室や図書室からのネットワークの利用もできるようになりました。
新しい環境ができましたが,まだ完全なものにはなっていません。実際に利用していって,ここはこうした方が利用しやすくなるとか,ここは不具合があるとか,あるいは,こんな機能があった方がいいとか,改善すべき点が多く出てくると思います。
3月までの間は改良期間として位置づけていきたいと考えています。利用してみて気がついたことがあったら,どんどん指摘してください。できる範囲で改良し,来年度からのより良い環境作りをめざしていきたいと考えています。
▼ネットワークを利用した情報の共有▼
グループウエアという共同作業のためのシステムを導入しました。時間と場所の制約を乗り越え,リアルタイムで情報の共有を行うことによって,より良い教育活動や効果的・効率的な学校運営をめざしています。
児童生徒用と教職員用がありますが,教職員用は,一人一人に利用者権限があります。
個人名のユーザIDで入る(ログイン)ことにより,個人の場所で情報の交換ができます。
また,学校間等の文書のやりとりもグループウエアを利用することにより,効率的に行うことができるようになります。
▼学校のメールアドレスの変更▼
新しいネットワークが構築されたことに伴い,今まで利用してきた学校のメールアドレスを変更し,全体の統一を行います。
今までは,例えば追浜小学校は,
e-oppama@edu.city.yokosuka.kanagawa.jp でしたが,これからは,
admini@oppama-e.yknet.ed.jp になります。
yknet.ed.jp の部分が横須賀市の教育機関を表しています。児童生徒用が学習活動で電子メールを利用するときは,
std@oppama-e.yknet.ed.jp になります。
職員室のデスクトップ機を学校の中心マシンと位置づけ,1月から設定を行います。3月までの間に関係各所に各校で連絡をしてもらい,4月からは新しいメールアドレスの利用になります。
【新しい小学校のコンピュータ室】
▼Webメールの利用を▼
教職員用グループウエアにWebメールという機能があります。インターネットを見るのと同じ画面でメールのやりとりができるというものです。
個人で専用のPCがあり,アカウントの申請をした方はメールソフト(Outlook Express等)でメールのやりとりをし,他の方はこのWebメールを使ってもらいます。
今までメールのやりとりをするためには特別な設定が必要でしたが,インターネットが利用できる環境があれば,誰でもメールの利用ができるようになりました。
教職員全員が利用できるようにしていますので,積極的にメールを活用していってください。
(情報教育研究室直通電話・・・TEL37-1338・小谷 孝夫)
研修案内
一月の研修案内 |
■ 基本研修
湘南国際村センター(葉山町上山口1560-39 TEL55-1810)泊
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言葉抄 | ||
初任者研修 11月13日 「国際理解教育の実践」川崎市総合教育センター佐藤裕之先生講演の感想から |
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○範囲が広いなあと思いました。身近な問題から社会の問題につなげていけたらいいです。 |
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11/20 初任研授業研究 衣笠小 | ||
○こんなにも身近なことだと思わなかった。理論だけでなく,たくさんの実践を教えていただき,また,実際に体験してみて,私自身の考え方を変えて,視野を広げていこうと思いました。また,ただ実践するだけでなく目的を持つことが評価につながるということがとても勉強になりました。 |
初任者研修授業研究会の感想から ○久しぶりにじっくりと教材研究をした。ひとにみられるということは,こんなにもボロが出るのだと改めて実感したので,子どもの成長を思うのなら,授業研はどんどんやるべきだと思った。 |
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12/7 人権・同和教育研修,6年次研修 |
あとは,日頃から授業研のようなアドバイスがあれば,教師はもっと伸びる,少なくとも私は,伸びる教師でありたいと思った。 ○子どもがとても協力的だったのですが,普段からそうできるのに自分がさせられていなかったのだと痛感しました。 ○授業には無限の可能性があり,教材研究は一通りではないということを実感しました。 |
人権・同和教育研究会、6年次研修
12月7日「在日外国人の教育に関わる課題」
川崎市ふれあい館 朴栄子先生の講演の感想から
○在日の朝鮮の方のお話を聞かせていただいたのは初めてでしたので,大変,様々な事について考えることができました。教師として,「違い」にフタをせず,違いを見つけ,その違いを肯定的に受け止める子どもたちを育てていきたいと思います。
○”ふれられない差別”という言葉にハッとさせられました。子どもたちと接する中でとても大事なことなのに,話を切り出すことに戸惑いを覚える問題がいくつかあります。
(基本研修担当山・木屋)
こくばん
研究員会だより
教育課程(中)
菊池 剛(長沢中学校) |
研究所1月の予定
○ 現代教育課題講座について
日時 1月22日(火)第1研修室 15:00~
テーマ 「学ぶ喜びを育て,基礎・基本を定着させる事業のあり方」
講師 有田 和正 先生(前愛知教育大学教授)
有田先生は,筑波大学付属小学校・愛知教育大学教授を経て現在は,教材授業開発研究所代表(その他に日本生活科・総合的学習教育学会常任理事等)を務めておられます。
主な著書:「総合的学習に必須の学習技能」「総合的学習の布石の打ち方」等々多数執筆されています。
更新日:2023年10月31日 20:41:45