月報 2001年度 11月号
平成13年(2001年)11月1日
編集発行・横須賀市教育研究所/代表・小山 雄二
E-mail: kenkyu@edu.city.yokosuka.kanagawa.jp
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巻頭
横須賀の情報教育は どう変わる
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そのため,情報メディアの活用は慎重になっているような気がする。しかし,現在の情報化の進展は留まることはないであろうし,今後は,更に進化していくことであろう。
◆学校教育において,将来の高度情報通信社会に生きる児童生徒に必要な資質を養うなど,情報化社会に適切に対応していくことが国全体の重要な課題となっている。そのため,新しい教育課程では,小・中・高等学校を通じて各教科等の学習においてコンピューターやインターネットを積極的に活用できるようにするとともに,中学校技術・家庭科の「情報とコンピュータ」を必修にし,高等学校においても新教科「情報」を設け必修としている。
◆平成11年12月の総理直轄のバーチャル・エージェンシー「教育の情報化プロジェクト報告」では,平成13(2001)年度までにすべての公立小・中・高等学校等がインターネットに接続でき,すべての公立学校教員がコンピュータの活用能力を身に付けられるようににするとしている。
◆横須賀市では,教育情報通信ネットワーク(地域イントラネット)基盤整備事業によって,小学校では,PC教室整備・デスクトップ型PC22台・プロジェクタ等の周辺機器を整備し、PC室と職員室,図書室には構内LANが設置される。また,各校1名の学校インターネットアドバイザー事業も10月より始まった。更に中学校・ろう学校・養護学校でも,教職員用ノート型PC6台が整備された。
◆このように,コンピュータ、インターネットをはじめとした機器環境の整備は,順調に進められている。これから,すべての児童・生徒が主体的に学び他者とのコミュニケーションを行う道具として,各学校で積極的に活用できるようにしていきたい。 |
◆平成9年(1997年)5月の『通信白書』によると,国内を飛び交っている情報の量は,1年間でおよそ1京3300兆ワード(1ワードは,日本語の一語に相当)で,1995年までの10年間で約4倍ほどに増加しているそうである。高度情報社会というべき状況は,新しいメディア通信の現出であり,それを可能にしたテクノロジーの進歩と言える。
◆これまで,一家に一台であった電話機も,小型化,ワイヤレス化で携帯可能になって一人一台の時代に入っている。最近では、ポケベルとともに子供たちのコミュニケーション・ツールとなり,今では動画を高速で受像できる次世代携帯電話などの時代になっている。技術革新が新しいメディアを生み、新しいメディアがニーズを掘り起こし、ニーズがさらなる技術革新を呼ぶ繰り返しになっているようである。
◆私たちの子ども時代には、テレビゲームやパソコンはなかった。今の子どもたちは,テレビゲームはもとより、より高度化し,ネットワークにリンクしたコンピューターゲームとともに,一方向だけでなく,双方向までも可能にした仮想体験世界を確実に広げている。その内容も、ただ遊ぶといったことではなく,相互理解や創造的、知的,心理的領域にまで及んでいる。
◆かつては,想像もできないことであった。今から30年前のころは,学級通信等をガリ版刷りで発行していた。懐かしく思うとともに,急速な高度情報技術の進展は、具体的に日常生活に入り込んできて、そのことの急激な変化に対応するとまどいや不安,また,そのことが数々の社会問題をもたらしていることも事実である。
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(小山 雄二) |
特集
総合的な学習・選択学習を考える カットは明浜小学校 黒岩弘明先生の作品です。 |
一人ひとりに明確な課題を |
スタートラインにたった総合 |
平作小学校 教諭 嘉山 雅人 |
野比中学校 教諭 棚橋 陽子 |
「なによりもまず,取り組んでみよう。」 私が、総合的な学習の時間に取り組む上で大切にしたいこと。それは,一人ひとりが,問題意識を持って、課題に取り組めているかどうかということです。そのためには,総合的な学習の時間で扱う課題には,子どもたちにとって身近なものであること,試行錯誤を繰り返しながら解決していくことが求められていると思います。 |
「総合的な学習の時間」(以下総合に)取り組んで3年目になります。今までの学習とは違う新しいもの、やってみないとわからない,ということでスタート。そして,「やるといろいろ見えてくる」と言われる理由がわかった1年目でした。この時間の進め方というより,日常の生活、学習の習慣、学習が進められる環境作り等,が大切なのだと。やってみたからこそわかったことが多くありました。 2年目は学年を変えて1年生で環境をテーマに行い、進め方などは前年度の経験が教師に生きていたと感じました。題材の掘り下げ方、生徒の活動を保証していくためにはどう進めたらよいのか等内容に関わる疑問が教師間に出てきました。少し進んだからこその疑問になってきたと感じました。 3年目の今年は1,2年生共に環境をテーマに,行っています。2年生は,6コースに分かれ昨年より更に多くの教師が悩みながら進めています。1年生は総合が初めての教師がほとんどで,しかもいろいろな事情を抱えながら研究をしています。 今年度はより多くの教師が、具体的に進めるときの課題を持ちながら試行錯誤し て進めており、話題も悩みも、共通理解が得られるレベルまで職員室も変わってきたかなと感じています。 これからが本当のスタートと考えています。教師も生徒と共に楽しめる総合学習が創れたら、総合の目標も達成できるかなと思っています。 |
夢いっぱいの学校づくりを |
選択学習の試行に取り組んでみて |
夏島小学校 教諭 岩田 嘉純 |
長沢中学校 教諭 山口 聡 |
総合的な学習の実践研究は,「子ども観」の問い直しであり,「学習観」・「学校観」を変えていく突破口となるものです。この時間枠をどのように使うか・・・ということに終始するのではなく,「子どもを中心にした新たな学校づくりはどうあるべきか。」という意識を常に持ちながら進めていきたいと考えています。 |
来年度から、新しい教育課程がスタートします。しかしながら,選択学習に関しては、様々な課題があると考えています。ですから,批判的な観点も含めて、2年間にわたって選択授業に取り組んでみて,感じたことをまとめてみます。 |
相談室
<子供とともに>
-本当の自分を見つめて- 教育相談室 |
◆「お久しぶりです。私のこと覚えていますか。」日曜日の昼間,繁華街の路上で,2歳くらいの子どもを抱いた女性に声をかけられました。彼女が中学校を卒業して10年以上たっていましたが,幸いにも顔を見た瞬間に名前を思い出すことができて助かりました。仕事柄,町を歩いていて突然あいさつをされることも多いのですが,正直なところ,顔はわかってもすぐに名前が出てこない方が大勢います。私が即座に「Yさんでしょ。」と言ったので,彼女はちょっと驚いたような表情を見せてから,にっこり笑いました。
◆中学時代のYさんといえば,毎日のように校則違反を繰り返し,担任の私を始め学年の先生方にも反発することが多かった生徒です。当時の彼女の顔を思い浮かべると,大人を信用してなるものかというようなきつい眼差しを思い出します。教師の前ではあまり笑顔を見せない子どもでした。それだけに大人になったYさんの自然な美しい笑顔に一瞬ハッとさせられました。
◆Yさんとは,路上の立ち話でほんの少し言葉を交わしただけでしたが,別れ際に彼女は声を落として,「あの時はずいぶん迷惑をかけてしまってすみません。」と言って去っていきました。
◆Yさんと共に思い出されるのがTさんのことです。学校へドライヤーやコロンを持って来ていたのを見つけて,いつものようにYさんを相談室に呼んで指導していた時,会話の中でふとTさんのことが出てきました。Tさんは,勉強も係りの仕事も責任持って行うしっかり者で,明るい性格なので男女ともに人気のある生徒でした。Yさんの口からTさんの意外な行動が知らされ,担任として何も気付いていなかったことに愕然としました。確かYさんはこんな言い方をしていたように思います。「先生たちは私みたいなツッパリばかり目をつけて悪者にしているけど,まじめないい子だって陰で悪いことをしている。
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Tさんだって,文房具屋で消しゴムだとかシャープペンの芯だとか盗ってきている。でも,先生は私の言う事なんて信じてくれないでしょ。」私は直感的にYさんの話は嘘ではないと感じました。のめり込むように話を聞いていた覚えがあります。いつになくYさんが素直な表情で話してくれていたような気がします。その後,自分が話したという事をTさんに言っても構わないとYさんが言い切るので,Tさんを呼んで事情を聞くと,全くその通りの内容でした。
◆放課後,Tさんとふたりきりで向き合って長いこと話しました。細かい言葉は忘れてしまいましたが,泣きながらTさんは自分の切なさを訴えました。Tさんの家は母子家庭で,母親が夕方遅くならないと帰って来ないので,下の弟妹の世話や買い物などもしなくてはならず,ストレスがたまっていたのだと思います。勉強もできるので母親から期待され,近所の人からも日頃ほめられて,いい子をいつも演じているのに疲れてしまったのでしょう。
◆Tさんは大好きなお母さんに真実を話すのがつらいと言っていましたが,家庭訪問をして一緒に家へ行き,自分からお母さんに話してもらいました。Tさんのお母さんは,本当に驚いた様子で,時には涙を見せてショックは隠し切れませんでしたが,実に冷静で立派でした。そして何と「このことを私たちに教えてくれたYさんに心から感謝します。」と自分の子どもの前で言ってくれました。
◆人間には表と裏があると言われますが,表も裏もなく本当はすべてがその人そのものなのでしょう。時に子どもたちは,普段と違う心の内を見せ,色々なサインを出して,大人を困らせたり驚かせたりしますが,それも本当の自分をわかって欲しいというメッセージなのだと思います。
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(教育相談室直通電話…34-9308 下川 紀子)
図書室・資料室
教育史資料室
【写真に見る横須賀の教育のあゆみ 1】
中体連の設立と第一回中総合
○ 中体連の設立
今年、横須賀市中学校体育連盟(中体連)は、設立50周年を迎えた。
6・3制の発足とともに、それまでの集団訓練的体育から、生徒が自主的に参加し、課外の活動を楽しむ「クラブ活動」が重視されるようになった。1950年(昭25)当時、中学校では五日制が実施され、土曜日は授業を行わずクラブ活動にあてられていた。
貧弱な体育施設、不足する用具、少ない指導者など劣悪な条件下でも、クラブ活動でいきいきと躍動する子供たちの姿は、戦後教育の明るい風景であった。
柔道・剣道は禁止された時期もあったが、球技などは奨励され、中学校のスポーツは盛んになり、種目ごとの大会が各地で行われるようになった。そのため、指導者の育成や大会運営の組織化が求められた。 (体育館ではなく競技は外で行われた)
本市では、1951年(昭26)4月、横須賀市中学校体育連盟(会長:笹子武夫)が設立された。 |
○ 第一回中学校総合体育大会(中総合)
それまで、種目別に行われていた中学生のスポーツ大会は、中体連の設立によって「総合体育大会」として統合された。そして、その第一回大会が1952年(昭27)6月22日、坂中・入中・坂本遊園地(現桜小校地)を会場として開催された。
翌年の第二回大会では、前年のヘルシンキ・オリンピックで活躍した体操の竹本正男選手等が、全市中学生の前で鉄棒などの模範演技を行い、大会に花を添えた。
また、第一回大会では総合優勝(坂中)を表彰したが、第二回大会以後は、種目別表彰のみとなって、今日にいたっている。 この大会の種目は、「 陸上競技・庭球・卓球・排球・ソフト・籠球」の6種目。参加校は市内11中学校。「田浦・坂本・不入斗・池上・馬堀・浦賀・久里浜・北下浦(当時の校名は野比)・武山・長井・大楠」である。(『坂中新聞』復刻版 昭和27年6月9日号による)
第一回中総合開会式
(市内の全中学生が集まった)
第一回大会当時、最大規模の学校は不入斗中で、生徒数2,206名、45学級。もっとも小さい学校は武山中。240名、6学級であった。
全市の中学生は、当時すでに1万人を超えていた。その全中学生が、選手団・応援団としてひとつの会場に集結したのだが、「遠隔の中学校の中には、トラックを仕立てて選手団と応援団を繰り出した」(『戦後横須賀教育史』1964 教育研究所)とあるように、開催には大変な苦労が伴った。教職員の熱意と努力が大会を成功させたとともに、その成功が、中体連の組織的な力を示すことにもなった。
今年、第50回を迎えた大会は、参加校27校、参加選手5,000余名となった。総合体育会館での総合開会式は、整然・堂々とした入場行進のもとに行われ、スポーツの祭典として、毎年感動を呼んでいる。
(佐藤 設夫)
理科・環境教育
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(理科教育研究室直通電話…TEL 36-6104 小田部英仁)
情報教育
小学校でのアドバイザー事業が始まりました。中学校、ろう・養護学校では巡回派遣で各校を回っています。アドバイザーが学校にいて、気軽にコンピューターの操作を聞ける期間もあと5ヶ月になりました。積極的に活用していきましょう。
■アカウント(利用者名)■
地域イントラネット基盤整備事業では,ネットワークを有効に活用していくため、グループウェアという共同作業のためのツール(道具)を導入します。児童生徒用には「学びの泉」,教職員用には「ネクスト」というものが入ります。
そのアプリケーションを利用するためのアカウント(利用者名)を次のような考え方で用意しますので,積極的に利用してください。
[ネクスト]=教職員一人一人に発行(姓_名)例=Kotani_takao
[学びの泉]=学校に3つ発行(管理者用,教職員用,児童生徒用)学校名_学校種(小学校=e、中学校=j,高校=h,ろう学校=sd、養護学校=sh)・アクセス権(管理者=a,教職員=t、児童生徒=t)。例えば、追浜小学校の児童は,oppama_etになり,追浜中学校の教職員は,oppama_jtになります。
また,「マイクイック」という教育用データベースも導入します。アカウントの考え方は「学びの泉」と同様です。
各アプリケーションの操作方法については,12月に入ってから担当者対象に研修会を持ち、また,アドバイザーにも聞けるようになります。
ネットワークを利用した学習、業務を積極的に推進していきましょう。
(情報教育研究室直通電話・・・TEL37-1338・小谷 孝夫)
研修案内
十一月の研修案内 |
■ 基本研修 ● 初任者研修
■ 現代教育課題講座(15:00~ 教育研究所) ■ 学校教育相談研修講座(15:00~ 教育研究所) ■ 情報教育研修講座 ■ 理科実験講座 ■ 研究所学習会 |
言葉抄
16年次研修
(9月28日 「学級・学年経営に関する問題について」~カウンセリングの立場から~
千葉大学教育学部付属教育実践総合センター 清水幹夫先生講演)の感想から
○ 常に急ぎ足で余裕なく仕事に対していますが,子どもの訴えていることを,はたして自分は常に受け続けてきたのか?(形だけで流してきたところがあったかもしれません)
○ いろいろな研修でおぼろげに感じていたことが明確になったように感じます。
○ テクニックではなく教育の本質に少し触れることができたような気持ちがして,また明日からがんばっていく原動力をたくさんいただいたような気がします。
○ 教育の現場でカウンセリングを行うことの難しさと,経験の足りなさを感じました。これを機に,「聞く,うなずく練習」をしてみたいと思います。
○ 一人一人きちんとやるため(話を聞く)には待たせることもあります。順番が来るのを待ちきれないと「しかとだよ」と言い出します。もっと教師の人数をふやすことの大切さを感じます。
○ 講演の中で言葉のすみずみにエールを多く感じ取れました。「(世の中の学校に対する)偏見では……」と思うところもありましたが,今の世の中においては謙虚にそれを教師サイドで受け止めなければいけないと,残念ながら思いました。
○ 行事の前で職場もあわただしく,走り回っているような毎日の中,今日の研修がありました。大切なものを忘れていたことに気づいてよかったと思います。子どもの語りかけを切り捨てることが多く,能率ばかりを追求してしまっていたようで,はやく明日クラスのみんなに会いたい気持ちです。
(基本研修担当 中山・木屋)
こくばん
研究員会だより
教育史資料 ~学習指導要領に関する資料収集~
本研究員会では、昨年度より「学習指導要領に関する資料収集」というテーマに基づいて、調査研究を行ってきました。
○ 学習指導要領の変遷史
各校の紀要,学校要覧,教育月報などの資料を活用しながら、戦後教育史の一部として役立ててもらえるようにまとめていく予定です。
小早川 暁 (高坂小)
(学校学級経営相談室 小田切 武夫) |
研究所11月の予定
◆ 現代教育課題講座 | |
日時 | 11月13日(火)15:00~17:00 |
場所 | 第1研修室 |
内容 | 学校と子どもを変える「朝の読書」の実践 |
講師 | 横須賀市立大津中学校教諭 上森 義喜 先生 |
◆ 第4回巡回講演会のお知らせ | |
日時 | 11月22日(木)13:30~15:20 |
場所 | 桜小学校・ランチルーム |
内容 | 「親の思い、子の思い」~見えにくい部分を見ていく目を~ |
講師 |
木下 泰子 先生(臨床心理士・スクールカウンセラー) |
更新日:2023年10月31日 20:45:27