月報 2001年度 7月号
平成13年(2001年)7月1日
編集発行・横須賀市教育研究所/代表・小山 雄二
E-mail: kenkyu@edu.city.yokosuka.kanagawa.jp
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巻頭
心の成長の芽伸ばしたい ~学校・家庭・地域の連携~
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すっかり泣きやむまで、しっかりと手を握りしめてあげたそうです。Aちゃんがこの3か月間、どんなにつらい思いをしてきたのか、お母さんには心が痛いくらいに伝わってきました。外からは子どもが育っているように見えても、心の中の育ちは見えにくいものです。Aちゃんは学校で先生に、「お母さんは、『僕を1番で、お仕事は2番にする。』と言ってくれた。」と嬉しそうに話しました。それからは、お友だちへの乱暴が少なくなったそうです。
◆また、小学校6年生のB君は、体はがっしりしているけれど自分に自身がないのか、何事にもとても消極的でした。ところが、最近、相撲大会に気が進まぬまま出場することになりました。土俵の上でもおどおどして見えたそうなので、相手は油断したわけではないでしょうが、あれよあれよという間に対戦相手をたった一つしかない得意技で次々と投げ飛ばし大活躍、とうとうチームを準優勝に導いたそうです。先生は。家庭へ写真を添えて活躍の様子を詳しく手紙に書き、教室では何かにつけB君のすごさ、頑張りをいろいろな場面で誉めました。そんなある日、クラスの代表を決めるのに初めて自分から立候補し、みごと選ばれました。B君はそれからというもの学習にも意欲的に取り組むようになりました。先生は、「きっかけさえあれば、子どものよさ、可能性を引き出すことができることをB君から改めて学んだ。」としみじみと話されました。
◆これからは、今まで以上に学校と家庭の連携を深め、日常的に信頼・協力を得ながら子どもの心の成長の芽を育てていきたい。
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◆現在、学校では、子どもたちの「個性」を伸ばし、「生きる力」をはぐくむ特色ある学校づくりに取り組んでいます。来年度は新教育課程の完全実施の年です。「地域の中の学校」「開かれた学校」として、学校のよさ、子どものよさ、地域のよさを生かした教育が期待されています。また、学校・家庭・地域が密接に連携し、子どもたちの「心」をどのようにはぐくんでいくかが大きな課題となっているわけですが、最近、聞いた話でとてもよい話だなと思ったことがあります。
◆それは、小学校2年生の[Aちゃん」という男の子とお母さんの話です。
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(小山 雄二) |
特集
障害者教育を考える
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訪問学級担当として
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人とかかわる楽しさから生まれるもの
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市立養護学校 教諭 鎌坂 宏美
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汐入小学校 教諭 原 恵子
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訪問学級の担当となって2年目を迎えました。重度の障害のために登校することができない子どもの家で週に2回,2時間ずつ授業をしています。家庭という安心できる環境の中でリラックスして学習できる反面,周囲からの刺激が少なくて感覚面や精神面で動きが見られにくいという欠点もあります。学校に来ていれば遊具で体験できることも,部屋の中ではどう工夫してもやりきれません。もっと色々なことができれば,伸びる可能性があるのに,といつも思いながら方策を練っている毎日です。 1年かけて私を認識してくれたのだと思うと,ますますがんばるぞとファイトがわいてくるのです。子どもの笑顔が私の元気の素です。この笑顔を見るために毎週はりきって訪問しています。 |
相談学級には,様々な理由や不安から在籍校に行けなく(行かなく)なった子どもたちが,遠くから電車やバスを乗り継いで通級してきます。 相談学級の多くの子どもたちは,不登校になった直後は「何もしたくない状態」になったそうです。この時期は,外出がおっくうになったり人に会うのがいやだったり,いわゆる「閉じこもる」時期です。(この期間も,心や体を休めたり自分を見つめたりするのに必要な,大切な時間と考えています。)そして,ゆっくり心身を休めることで,「人とかかわりたい,ふれあいたい」と思うエネルギーを少しずつ取り戻して「相談学級に来よう」と決めた子どもたちです。 初めて相談学級の担任になった昨年,人とのかかわりを求めて動き出し,進級し始めた相談学級の子どもたちと,どのようにつきあっていたらいいのか,とまどいの中でのスタートでした。まず,進級してくる子どもたちに『安心』と『楽しさ』を感じられるようにしたい,そして,その『安心』や『楽しさ』は家庭にいるのとはまた違う,仲間とのふれあいの中で共有するものでありたいと考えました。その,『人と共有する楽しさ』は,自分への肯定感や主体的に生きるエネルギーになってくれるのではないかと考えました。 実際は,とにかく通級してきた子どもたちとたくさん遊ぶこと,一緒に行動したり話をしたりして楽しく過ごすこと,子どものアイディアや考えを大切にして活動に生かすことなど,教師になりたての頃,大切にしていたことに立ち戻ることでした。相談学級担任2年目になり,人とかかわりふれあうことでエネルギーを回復し成長していく子どもたちに,頼もしさを日々感じています。 |
分かりあえてきたね
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教師のあり方を示してくれた子どもたち
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ろう学校 教諭 長谷川 智世
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長浦中学校 教諭 白井 豊子
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一年前の4月,A君の担任になりました。その可愛い笑顔と愛らしさには,みんな魅了されずにはいられません。でも困りました。コミュニケーションがとれないのです。一生懸命話しかけてくれるのですが,何を話しているのかほとんど分かりません。通じないと思うとA君は自分の肩に向かって独り言を始めます。分からぬまま何でも頷いてしまいそうになる自分を抑えて,何とか話していることを分かってあげたい。尋ねていることに答えてあげたいという気持ちで一杯でした。今一番興味を持っていることは何なのだろう・・・?なんとそれは私の苦手とする野球とトイストーリーの映画でした。私は早速゛横浜ベイスターズ4月号”を買い求め,映画誌はA君に持ってきてもらいました。A君は目をキラキラさせながら,あちこち指指して説明を求めます。私は素早く目を通して,今知ったばかりの事を,あらゆる方法を使って誠心誠意伝えようとしました。私とA君の分かり合おうとする気持ちが響き合います。伏目がちだったA君の目が私をまっすぐ見つめてきます。さあ発生練習も始めましょう。母音から清音へ,清音から拗音へとA君もひたむきに頑張ります。そして,それは生活の中でゆっくり生かされ始め,分からない時は,きれいに「なーに?」「どういう意味?」と尋ねられるようになりました。本好きのA君の最近の質問は「じんくすは?あぴーるは?いいどきょうは?あまいわなは?」と日毎にその難度を増し,答える私は目を白黒させています。学校と家庭での楽しいやりとりは毎日連絡帳で交換し合い,素晴らしいお母さんは,大人になった時のためにと大切に保管しているようです。最近A君は,退職間近の私に「結婚したい。」と言ってくれます。待っているヮョ・・・・・・。 |
私の教師としてのあり方をさし示してくれたのは,知的障害児施設指導員時代に出会ったU子ちゃんとHちゃんです。
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相談室
<子供とともに>
―保護者の苦情から― 教育相談室 |
◆ 保護者から学校の指導に対する不満や苦情を含んだ相談を受けることがあります。これまでにもたくさんの声を聞いてきましたが,このところ数件立て続けにあり,心配しているところです。内容的には,ちょっとしたことばの行き違いからトラブルになったもの,教師の体罰や不適切なことば遣い,中学校の部活動指導に関するもの,不登校児童・生徒の対応についてなどです。
◆ 保護者の訴えが全て事実を性格に伝えているか検証する必要がありますし,問題が学校側だけにあるわけではありませんが,少なくとも,私たちはそれを真剣に受け止め,危機感をもって対処しなければならないと思います。
◆ 今までに保護者から寄せられた相談の一部です。
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◆ これらの相談を通して,危惧されたことがあります。それは,学校が閉鎖的になることにより,教師に,冷静な判断力や人間味ある指導力が働かない状況が生まれているのではないかということです。教師も悩みを独りで抱え込み解決の糸口を見失っていたり,子どもや保護者との信頼関係が崩れてしまい孤立している,というケースが多くありました。また,教えてやっているのだという学校の意識とサービスの提供を受けているという社会の意識との差を考えさせられたケースもありました。学校からのお願いは地域住民に受け入れられて当然である,用事があったら学校へ出向いてくるのが当たり前であるといった感覚が,私たちに全くないとは言い切れません。
◆ 兵庫県で「トライやる・ウィーク」と銘打って県下6万人の公立中学2年生を対象に,5日間学校を離れて地域の中で職場体験・社会体験をするという取り組みが行われました。中学校の先生たちは学校から地域社会へと生徒を送り出すにあたり,受け入れ先の職場に挨拶回りをする段階で,名刺を急いで作って名刺交換のマナーや挨拶の仕方の特訓をしたそうです。職場としては学校しか知らない先生も多く,生徒と共に5日間いろいろな事業所に出かけ,外部の人と接することにより得るものが大きかったということを,兵庫県教育委員会の担当者が講演会の中で話していました。
◆ 今,学校は色々な意味で,社会の大きな関心の的となっています。当然,たくさんの目が学校教育に注がれます。子どもへの対応や授業のあり方を含め,教育活動全般の説明を保護者に求められた時に,社会の人から納得の得られる説明ができる教師でなければいけないと思います。
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(教育相談室直通電話・・・34-9308 下川 紀子) |
図書室・資料室
カタルシス
・表現力を育てることの意義
従来の日本の学校教育においては、知識・理解の中心の学習指導がなされてきた観がある。教師は学習指導要領に従って一定の知識を子どもたちに伝達し、子どもたちは与えられた知識を受動的に吸収する。これが伝統的な授業の形態といえるだろう。しかしながら、こうした知識伝達型の授業では表現力の育成は望めない。そのことは、日本の外国語教育の場合を考えてみればおのずから明らかである。日本の外国語教育では、伝統的に「読む力」に重点をおく指導がなされてきた。しかし、このような外国語教育では、理解中心の「情報受信型」の英語力しか育たない。 これからの外国語教育では国際コミュニケーション能力としての英語力が求められており、そのためには、「理解」だけでなく「表現」も重視する「情報発信型」の英語力の育成が重要となるのである。そして、このことは決して外国語の学習指導に限ったことではない。他の教科の学習指導においても、自分の考えや意見を自由にのびのびと、しかもわかりやすく伝えることのできる豊かな表現力の指導が重視されるべきである。そのためにも、表現力を育てることの意義が十分に認識されなければならない。
『学ぶこと・教えること』学校教育の心理学
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図書・資料研究室直通電話…TEL36-2418・一栁 直行
理科・環境教育
7月に入り,そろそろ学期末の整理に忙しくなってくる頃ではないでしょうか。それと併せて,夏休みに向けた自由研究等の指導に取りかかっている頃でもあるでしょう。子ども自らが課題を持ち,意欲的に取り組みながら,自然科学を探究するおもしろさを味わえる自由研究がなされるようご指導をよろしくお願いいたします。
理科関連研修のお知らせ 今月から夏休み中にかけ、夏季研修も含めて理科関連の研修が5講座予定されています。実際に野外観察を行うものや、施設見学、おもしろ実験等内容が盛りだくさんです。講座内容を「こくばん」等でご確認いただき、多くの先生方に参加していただけることをお願いいたします。 |
☆ 理科の評価は・・・
昨年の12月に文部科学省より評価のあり方について答申が出されました。そこでは,これからの評価の基本的な考え方が示されています。とくに,目標に準拠した評価(絶対評価)や個人内評価の重視が言われています。理科でも4つの観点における評価規準を明確にした上で評価していくことが大切です。移行期の今年度も,子ども一人ひとりの豊かな学びを実現させていくための評価がどのようにあるべきかをめざし,これからの評価のあり方を考えたいものです。ところで,一学期は子どもの価値ある変容をどのくらい確かめられましたか。
理科研究室直通電話…TEL36-6104・小田部英仁
情報教育
▲ネットワークを利用した共同作業▼
今年度構築する「地域イントラネット基盤整備事業」では,ネットワークを利用した共同学習,共同作業ができるシステムを導入します。
▲教育情報センターのアクセス数増加▼
教育情報センターのインターネットサイトのアクセス数が伸びています。昨年度は月平均約27,000でしたが,今年度は4月が48,000,5月は57,000になりました。注目度が高まっている感じがします。各校のホームページの更新を期待しています。 |
▲「はじめてコース」開始▼
情報教育研修講座「はじめてコース」が開始されました。
5/22 Windows利用コースの様子から
▲教育放送充実のために▼
本年度は次の学校や先生方にご協力をいただいて学校教育放送の充実に努力していきます。1年間よろしくお願いします。 |
情報教育研究室直通電話…TEL37-1338 小谷 孝夫
(kotani@yknet.ed.jp)
研修案内
七月の研修案内 |
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言葉抄 | ||
5月15日の初任者研修は,根岸小と池上中に分かれて特色あるそれぞれの学校の授業を参観,研究討議いたしました。協力していただいた両校の職員のみなさまに感謝するとともに,初任者の感想を紹介します。 1時間ごとのめあてがしっかりしている。それぞれが自分のめあてを持っている。発問,指示,環境作りなど,細かいところまで配慮する必要があることが分かった。 |
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子どもたちが自主的に動いているのが印象的だった。子どもを座らせて話す時,しゃがんで目線を下げるなど,できることから取り組みたい。自分で焦点を定めて見ることを学んだ。クラスの壁画や授業,空きスペースの有効活用など,たくさんのお土産を持ち帰れた。教師が支援者という立場で接している姿が印象に残った。一人ひとりがルールを意識して動いていると感じた。雰囲気作りをする工夫が必要だと感じた。生活指導の柱が生徒の心にも深く刻まれていると思った。人の話を集中して聞く訓練と,知的好奇心を引き出す創意工夫がある。教師が一つになって工夫して指導することにより,学校の雰囲気はさらによくなる。 |
(基本研修担当 中山 俊史・木屋 哲人)
こくばん
平成13年度 夏季研修講座一覧
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研究所7月の予定
巡回講演会のお知らせ | |
◆ 第1回巡回講演会 |
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1.日時 |
平成13年7月4日(水) |
2.場所 | 衣笠中学校 体育館 |
3.テーマ |
思春期の子どもたちは、今! |
4.講師 |
水谷 修 先生 |
5.主催 | 市教育委員会・教育研究所・衣笠中・城北小・衣笠小・三校PTA |
― 入場無料 ― |
◆ 第2回巡回講演会 |
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1.日時 |
平成13年7月7日(土) |
2.場所 | 北下浦中学校 体育館 |
3.テーマ |
現代の子ども気質と社会現象 |
4.講師 |
田中 喜代重 先生 |
5.主催 | 市教育委員会・教育研究所・北下浦中・北下浦小・津久井小・三校PTA |
― 入場無料 ― |
更新日:2023年10月31日 20:54:27