月報 2002年度 5月号

 

平成14年(2002年)5月1日
編集発行・横須賀市教育研究所/代表・小山 雄二
横須賀市久里浜6-14-3 / TEL(0468)36-2443(代)
(〒239-0831) / FAX(0468)36-2445  
 

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巻頭


 

 

新しい力で学校文化の創造を

~今年もフレッシュな仲間を迎えて
完全学校週五日制がスタート~

 

教育基本計画策定の趣旨を十分理解の上、子どもの声に真剣に耳を傾け、子どもとともに歩みながら、学校に求められているのは何なのか、教師に求められているのは何なのか、その解決に向けて努力し、学校教育を創造してほしい。また、社会人として自覚を持って職務に関わること。全体の奉仕者として全力を挙げて職務の遂行に専念しなければならない。公務員としての服務義務に違反し、市民の信頼を損ねる不祥事については厳正に対処する。教師には、学習指導だけではなく、人格形成や社会性の修得のための指導という役割があり、市民から大きな期待が寄せられている。これから先輩の指導・助言を受けながらも、自信を持ってのびのびと教育活動や研修に励んで欲しい。」など話された。

 

◆ 完全学校五日制のもと、「ゆとりの中で生きる力をはぐくむこと」をねらいとした新教育課程が実施されて1か月が過ぎようとしている。これから、経験豊富な先生とフレッシュな教師が協働し、新しい時代にふさわしい創意と活力のある学校づくりに精力的に取り組みたい。時代の変革期にある今、時代の変化に即応できる新しい学校文化の創造が求められている。

 

(小山 雄二)

 

 

本年度の教育研究所のスタッフ(常勤)

 


◆ 今年度も、本市の公立学校教職員の人事異動が大規模に行われた。小・中・高・ろう・養護学校を含めた職種別に見ると校長が19人、うち新任が5人、教頭が29人、うち新任が7人、教諭が177人、養護教諭が6人、栄養職員が2人等である。また、今年度新たに採用された学職員は63人で、そのうちの58人が教諭であり、他市町村からの転任が8名、初任者研修対象になるのは50人となっている。校種別では、小学校教諭が33人、中学校教諭が17人である。新採用教員の数は、かつて、10人に満たない年度があった。しかし、平成11年は11名、平成12年は12名、平成13年は19名と少しずつ増加してきた。今年度は、予想を遥かに上回る大幅な増加となった。久しぶりに多くのフレッシュな教師を迎えることになった。

 

◆ 4月2日(火)、午前9時より本教育研究所第一研究室において、平成14年度第1回初任者・新採用教員研究会及び他地区からの転任採用教員研修会が実施された。

 

◆ この初任者研修制度は、実践的指導力と使命感を養うとともに幅広い知見の獲得のために、初任者に対して、校内研修(60日程度)、校外研修(30日程度)を組織的、計画的に行うものである。校外研修としての30日は、そのほとんどが本研究所を会場として本年度も行われる。

 

◆ オリエンテーションのあと、藤原尉夫教育長の講話があった。「本年度教育基本計画を策定した。10年後の横須賀の姿とそこで生活する市民像を設定し、市民協働で教育行政を進めていくための指針である。

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特集


 

「一人一人の声を聞くことから」

 

 

「私の学級づくり」

~新学期を向かえて~

 

鷹取小学校  教諭 丸茂 忍

 

 

久里浜中学校  教諭 原崎 陽一

 

 新学期をむかえるたびに、期待と希望とともに、緊張と不安をいつも感じます。(子どもたちも同じように感じていると思いますが。)子どもたちとうまくやっていけるのだろうか、自分の学級経営がうまくいくのだろうかと。
 学級経営には、子どもとの信頼関係・人間関係を気付いていくことが重要なことだと思います。それには、子どもたち一人一人の「声」を聞くことを基本に置き、子供たちをより良く理解していくことが必要だと考えました。
 そこで、「毎日、子どもたち全員の声(話)を聞く」ことを目標としてきました。ですが、努力不足からなかなか実現することができなかったので、朝の健康視察の時間を有効に使っていくことにしました。「○○さん」と名前を呼んだあとに、子どもたちには、返事とその日の自分の体調などについて話をしてもらいました。これによって、普段あまり話をする機会を作ることが出来なかった子の「声」を聞くことができるようになりました。
 これからは、子どもたちの「声にならない声」を聞くことができるように自分を磨いていきたいと思います。
 「学級経営が基本」であり、「学級経営が全て」と聞きます。今年度も子どもたち一人一人の「声」に耳を傾けていくことを基本に子供たちとともにより良い「学級づくり」をしていきたいと思います。

 

 

 4年前の4月、久里浜中に赴任した私は、1年生を担当することになりました。入学式後の教室で、新入生を前に「おめでとう」の言葉の後、ありきたりでしたが、次のような問いかけをしました。「小学校と中学校では何が違う?」。予想されたとおり、制服がある、英語が始まる、算数が数学に変わる、といった答えが出てきて、それらを一つ一つ板書していきました。ある生徒が「そうだ電車やバスの運賃が変わるよ!」といったのを聞き、黒板に“運賃”と書こうとして、なぜか漢字が出てきません。仕方なく、“うんちん”と書いたら大爆笑をかいました。保護者も後で見ている中、かなり恥ずかしかったのですが、それからしばらくの間“うんちん先生”と呼ばれたのも辛いものでした。
 「このままではまずい!」、何とか巻き返しを図らねばと思い、どこで読み知ったかも定かではないのですが、こんな話をしました。「そういえば子供料金、大人料金の子供、大人って,“小人、大人”とも書くよね。この“小人、大人”って別の読み方もあるんだ。」。怪訝な顔の生徒たちに向かい、「これは“しょうじん、たいじん”とも読むそうだよ。どんな意味か知っているかい?」,「聞いたところによると、小人とは“人を引き摺り下ろして、さも自分は偉いかのように見せかける人”、“人の不幸を口ではかわいそうだといいながら、自分の胸をなでおろしているような人”のことを言い、逆に大人とは、“人を受け入れ、人の良さに学び、自らを変えながら、高めていく人”を言うそうだ。ぜひ君たちには、学ぶ意識と姿勢を持って、大人を目指して欲しいな。」
 今でも新学期を向かえると、生徒の学ぶ姿勢に負けぬよう、共に大人を目指したいと思うのです。

 

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教育相談セクション


 

 

子ども一人ひとりがみんな主役だ!!

 

 

 テレビ大好き人間の私は,ニュース,スポーツ,ドキュメント,グルメ食べ歩き等なんでもござれである。とりわけ,サスペンスものには目がなく,時の経つのも忘れて視てしまう。
 特に各種のドラマを視ている時は,ドラマの中身にもよるが,どちらかと言うと主役より脇役に注目して視ている。
「あんたはへそ曲がり,素直な見方をしていない」と言われることがある。別に当人は間違っていると思っていないが,ちなみに私は,「バラ」「ひまわり」といった目立つ花よりも,そっと野に咲く「すみれ」「たんぽぽ」に惹かれるせいかも知れない。 他人の目につかないようなところに気を使い,力を入れてある仕事(作品)には,やはり評価できるものが多い。なぜかと言うと,脇役がしっかりしているドラマは,概ねよくできた作品が多いと思っている。 主役とは関係のない通行人や買い物客,見物人,画面の背景に出てくる人たちがしっかりとした演技をしているドラマは,安心して視ていられる。そういうドラマは,内容構成や展開,出演者の演技も優れ,ストーリーが面白く,視ていて飽きない。ところが脇役,端役の演技があやふやなドラマは大抵出来がよくない。

 先日,ある人間ドキュメントの番組で,斬られ役が数十年の大部屋俳優の生きざま,取り組み姿勢を取り上げた番組を引きこまれるように視てしまった。その心構え,心意気に痛く感心させられた。名だたる監督ほど,脇役の一挙手,一投足にもこだわると聞いたことがある。
 教室での授業は,多彩なプログラムで構成される一つのドラマであり,進行する各場面での子どもの動きが気になる。
 子どもの様々な実践活動を見たり評価するとき,はっきりと正面に登場してくる子どもは,当然目にとまりやすく,印象に残るものである。
 しかし,その陰にいる子ども,脇にいる子どもを決して見逃さない教師であって欲しい。
 なぜって,子どもに脇役はなく,一人ひとりが主役だから。
 元気のない子どもの表情や活動を見落とさないためにも,教師はその子の隠れた本当の能力や適性を見出し,「やる気」を起こさせるのが専門職としての教師の仕事であると思う。
 教室での学習場面で,いつも元気よく行動的な子どもに視線が注がれがちだが,同じ教室の中でも目立たないけれども,一生懸命取り組んでいる子どもが気になるそんな感性を持ちたい。


(学校学級経営相談室 小田切武夫)

 

 

 

学校学級経営の参考になる図書  ~教育研究所の新着図書から~

 

・「相互交流のコミュニケーション」が授業を変える

有元秀文著 明治図書

 

・思春期の子どもと向き合うために
文部科学省著 文部科学省

 

・教室経営の方略
辰野千寿著 図書文化

 

・嫌いな子・ダメな子なんて言わないで
品川裕香著 小学館

 

・子ども同士の関係性をどうつくるか
坂本光男著 明治図書

 

・自立と共生の心を育てる小集団学習
高旗正人著 黎明書房

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研修セクション


 

 五月の研修案内

 

5月の基本研修

 

☆ 初任者研修

 14日(火)学級経営と授業づくり 9:30~16:00 教育研究所

 

<小学校>

 ・講義「小学校における学級経営と授業のあり方」

 元逗子市教育研究所 櫻井 和一 先生

 

 ・講義「小学校における授業の基本的なスタンスとその実践」

 横須賀市立大津小学校教諭 内田 千春 先生

 

 ・研究協議  教育研究所指導主事

 

<中学校>

 ・講義「中学校における学級経営と教育のあり方」

 横須賀市立池上中学校長 鈴木 綾子 先生

 

 ・講義「子どもの実態に即した学級経営と学級指導の実践」

 横須賀市立大矢部中学校教諭 三谷 寛子 先生

 

 ・研究協議  教育研究所指導主事

 

 21日(火)教育指導全般・学校訪問 9:00~16:00    
 小学校・・・横浜国大附属鎌倉小学校            
 中学校・・・横浜国大附属横浜小学校


☆ 社会体験(11年次)研修
 28日(火)社会体験経験者講話 15:30~17:00 教育研究所        
 ・講話「社会体験研修に参加して」        
 横須賀市立平作小学校教諭 梶川 友恵 先生        

 

☆ 16年次研修(含養護教諭)
 7日(火)オリエンーション 15:30~17:00 教育研究所        
 ・講話「教育公務員としての自覚・心構え、服務について」
 教職員課 指導主事


 ・講話「これからの学校のあり方」        
 教育研究所長

 

☆ 26年次研修        
 22日(水)オリエンーション 15:30~17:00 教育研究所        
 ・講話「教育公務員としての自覚・心構え、服務について」
 教職員課 指導主事        

 

 

 

5月のその他の研修

 

☆ 教育課程担当者研修

 1日(水)15:30~17:00 教育研究所

 ・講義「特色ある学校づくり」

 横浜国立大学教授 高木 展郎 先生

 

☆ 教育相談研修

 8日(水)15:30~17:00 教育研究所

 ・講義「反社会的行動をとる子どもたちへの関わり方」

 神奈川県警少年相談・保護センター主幹 真壁 坤子 先生

 

☆教育課題講座

 15日(水)15:30~17:00 教育研究所

 ・講義「学校におけるジェンダーフリー授業のあり方」

 フェリス女学院大学助教授 諸橋 泰樹 先生

 

 31日(水)15:30~17:00 教育研究所
  ・講義「小学校の英語活動を考える」

 松香フェニックス研究所 松香 洋子 先生

 

 

言 葉 抄

 

 今年度は52名の新採用の教職員の方々が仲間に加わりました。第一回初任者研修でお聞きした抱負の中から、その一部を紹介いたします。
 「本日,諸先生方の講話の中で『教師は授業で勝負する』という言葉が印象に残りました。もとより失敗は覚悟の上ですから,いろいろなことに挑戦し,多くの先輩や同僚の話に耳を傾け,研究し,収穫の多い一年にしたいと思います。また,学校では常に児童と共に学び,遊び,信頼される教師をめざします。」
 「私は自分自身が小学生の時の先生の影響を受け,この道に進みました。困った時に話を聞いてくれたり,子ども一人一人の個性を受け止めてくれたり,あたたかく見守ってくれたり。私もそうして頂いたように,今度は私が子どもにそうしていきたい。そして少しでも子どもがあんな先生いたなと思い出してくれる先生になりたいです。」
 初心を大切にしていただきたいと思います。

(研修セクション:中山・木屋・北村)

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教育情報セクション


 

「はじめまして」

 

 教育相談事業の移動により,4月から「教育情報セクション」が誕生しました。3月までは研究所3階に情報教育研究室・理科教育研究室,そして図書資料研究室として,各担当ごとに事業を実施してきましたが,より大きな視点で考え直し,3つの研究室に共通する「教育に関する資料・情報の収集」今まで以上により効果的に提供する方法を模索した結果,教育情報セクションとして一部業務の見直しと,編成の変更を行いました。
 今年度は,次の4つの分類に業務を分け,実施していきます。

 

○ 教育情報の収集・提供
 情報の収集・提供をまとめました。理科教材の斡旋・配布や図書資料・ビデオ教材の貸出に関する事業を行います。また,理科の講座やネットワークの利用も情報の提供と考えます。

 

○ 教育の情報化の推進
 教職員の情報教育に関するリテラシーの向上推進するため,各種研修やよこすか教育情報センターの運営を担当します。

 

○ 研究調査
 研究員会を通して,横須賀市の教育の方向性や課題について研究します。

 

○ その他関連事業
 以上3つの事業に関連していくつかの事業を推進します。


 新しいセクションの業務について説明したのですが,当面は旧3研究室が担当してきた事業を中心にそれぞれが運営し,少しずつセクションとしての方向性を生み出していきます。
 

・長期研修員の紹介

 平成14年度長期研修講座受講生として,森崎小学校の片田敦子教諭が情報教育の分野で研究を進めます。研究テーマは「子どもたちの生きる力をはぐくむ情報活用能力の育成をめざして」です。一年間横須賀市の情報教育の発展を目指して研究を進めますので,ご協力をよろしく願いします。

 

・教材ビデオの利用規程

 図書室に配架してある教材ビデオは,一人3巻以内,2週間までご利用頂けます。
また,予約申し込みもできますのでご利用下さい。活用ガイドの活用にもすべてのタイトルと内容を紹介しています。

 

・ 図書の利用規程

 図書資料の貸出は,一人3冊まで,1ケ月以内です。
開館時間は,午前9時から午後5時30分(土日・祝日は休館日です)
また,図書管理システムを利用して,検索と貸出状況について確認をすることができます。

 

・不要薬品・液浸標本の処理について

 昨年度の調査には御協力ありがとうございました。それをもとに来年度に向けて予
算化を考えています。従って,実際の回収は来年度以降になりますので,別途回収の
連絡をするまでは,各学校で保管をお願いします。

 

 

・研究所2階の旧プレイルームに移動しました。研究所に直接お訪ねのときはご注意下さい。

 

 

 

・各担当の電話番号

小谷 孝夫 直通電話 37-1338
坂庭 修 直通電話 36-6104
一栁 直行 直通電話 36-2418
FAX 研究所共通 36-2445

(教育情報セクション 小谷・坂庭・一栁)

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こくばん


 

学校教育賞 

 教 育 賞

明浜小学校 荒川 正敏 教諭 

 

『特殊学級における個別教育』

~太田ステージの実践を通して~

 

 荒川教諭の研究は,特殊教育や太田のステージについての基本的な考え方に触れながら,太田のステージを実際に利用した個別指導の内容,指導経過,子どもの成長といった実践記録をもとに,今後の教育支援のあり方や「個別教育計画」の方向性について論じている。
 研究の成果としては,次のようにまとめられている。


 (1) 太田のステージを基盤に置いて個別教育を行うことにより,児童の障害の状況,発達段階を容易に的確に把握できた。そして,子ども一人一人の指導目標・内容を明確にし,指導に取り組むことができた。
 (2) 教師は太田のステージを通した共通の尺度で子どもを見ることができ,教師間の共通 理解が可能になり,話し合いや対応等が一層スムーズになった。
 (3) 日常の学校生活においても,子どものステージを意識した指示の出し方や課題の提示ができ,個別教育以外の場面でも有効であることが分かった。特に3年間に渡るM児 への個別教育の成果は大きく,太田のステージの有効性と太田のステージを含む「個 別教育計画」の必要性を再認識した。

 

 

 努 力 賞

衣笠小学校 田野口 則子 教諭 

 

『自分の可能性をひらく』

~子どもと共に取り組む総合的な学習の時間~

 

 田野口教諭の研究は,子どもが主体になって取り組む「総合的な学習の時間」の立ち上げから,やりたいことが分からない子どもの立場に立って,行動することの意味,実行した充実感,分かってもらえた喜びを,実践を通して検証した。学習した内容や体験を自らの生きる力として日常生活の中に生かし,基礎・基本として授業の中に生かしていく指導方法と評価について報告している。「総合的な学習の時間」の実施にあたってのポイントとして以下の点を明らかにした。


・    子どもの実態を的確に捉え,目の前の子どもにどんな力を育てたいのかを明確にする。
・    カリキュラムの工夫。各教科の基礎・基本を統合して,真に自分の力となるような「総合的な学習の時間」を組み立てる。
・    学びの方法を明確にする。
・    自己の確立と他者の関わりから自分の個性や可能性をひらく。
・    評価の視点を子どもと共に育てる。など

 

研究所の各室の配置がかわりました。今まで3階にありました図書資料室・理科研究室・情報教育室が一つになって,元プレールームに移動しました。

また,研修担当室は元の相談室に移りました。来所の際はお間違いないようお願いします。

 

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更新日:2023年10月31日 21:29:24