月報 2004年度 8月号
平成16年(2004年)8月1日
編集発行・横須賀市教育研究所/代表・五ノ井文男
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巻頭
「たのしい学校」・「苦しい学校」
ある若い先生の保護者会での言葉。 「学校教育目標に ”たのしい学校” とありますが、それはとらえ方によっては、間違いです」 少々、驚くべき発言ですが、この言葉には続きがありました。 「学校は楽しい場ばかりではなく、苦しいことも多いところです。子どもたちが成長するための苦しみも学校にはあります」 という内容だったそうです。 そういう考え方もあるかと思いました。そういえば、かつて私自身も、学級担任という仕事が面白くて仕方ない時期に、「学級に波風を立てるのも担任の仕事です」 と公言して憚らなかったことを思い出しました。 ところで、あらためて「たのしい」という言葉を辞書で引いたところ、枠のようにありました。しかし、普段、私たちは「苦しい」の対義語としてしか、この 「たのしい」 という言葉を使っていません。語源までは調べませんでしたが、古くは、おおよそ「満ちている」、「豊富である」 というような意味があったように予想されます。 そこで再度、「たのしい学校」ということを考えます。「たのしい学校」とは、何かが「満ちている」場であるということになります。子どもたちにとってそれは、ワクワクするような知識や経験、そして友だちや先生、社会との関係ということになりましょうか。しかし、そのような知識や経験、人との関わりは、得てして容易に手に入るものであるとは限りません。それらを得るための 「苦しさ」 を伴う場合があります。そうであるならば、むしろ「苦しみ」もまた、「満ちている」 ということになります。 |
たのし・い 【楽しい】 |
ただし、言うまでもなく、それは苦しむたの「苦しみ」 ではなく、何かを実現させるための 「苦しみ」です。実現する達成感が「満ちている」からこそ、「たのしい学校」ということになります。 (指導主事 木屋 哲人) |
特集
鴨居の「海」を調査研究した子どもたちの「学び」 鴨居小学校 教諭 臼井淑子 「鴨居の海は初めに想像していたより、ずっときれいでした。海環境会議で鴨居の海のすばらしさをもう一度感じました。この海を大切にするために何をしたらいいか、私は今いっぱい考えています。」と6年生の子どもは話してくれました。 昨年度、5年生の総合的な学習の時間での活動は子どもたち自身が 『学び』 を追求した活動でした。子どもたちは鴨居の『海』について知ろう」をテーマに学習をスタートしました。 当初、子どもたちの課題は 「海の生き物」 「鴨居の漁業」「塩」「海の水質」など多岐にわたりましたが、子どもが追求していく中で、インターネットを通じ知り合った海洋ジャーナリスト一柳洋氏との交流は、子どもたちの課題意識をさらに高めることとなったのです。一柳氏の特別授業の依頼と現実をきっかけに、子どもたちは 「鴨居の 『海』 は本当にきれいか」 の課題をもつようになりました。それは、様々な観点からの調査、海上保安庁での取材、専門家を招いての水質検査、そして、「鴨居の海環境会議」 へと展開していったのです。会議は子どもたちの調査研究をもとに進み、話し合いでは鴨居の 『海』 のきれいさを再確認するとともに、この環境を維持する使命感をも抱かせたのでした。 6年生の子どもたちは今、鴨居の環境を守るための具体的な活動を始めています。 本校では 「一人ひとりが自分のよさと可能性を発揮できる活動をめざして」をテーマに、「教育課程全般」 での研究に取り組んでいます。「みつける力」「学ぶ力」「生活を生かす力」の3つの力の育みが「生きる力」につながると考え、実践研究を重ねています。その中で、6年生の言葉はまさにその『学び』を体現していると思います。 |
目的に応じた授業
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研究員会
月1回の教育員会を重ね、研究テーマに基づいて研究を進めています。総勢61人の研究員を紹介します。
番号・研究員会名・氏名 (所属)/担当指導主事 <順不同・敬称は省略しました。
(1)教育史資料 |
長塚直機 (夏島小)・桐生すみ子 (小原台小)・池野 操 (長沢中)/一栁直行 (教育研究所) |
(2)よこすかの子ども | 原口尚延 (大津小)・黒田雅子 (北下浦小)・白井宏一 (坂本中)・萬俵千里 (久里浜中)/木屋哲人 (教育研究所) |
(3)情報教育 | 加藤和浩 (田戸小)・遠藤まゆみ (鶴久保小)・栗原 裕 (池上中)・野呂昌史 (上の台中)・梶山健一 (横須賀総合高校)/高木 尚 (教育研究所) |
(4)総合的な学習の時間 | 長谷川泰子 (桜小)・宇佐美 暁 (馬堀小)・三橋和夫 (大矢部中)・半田美鈴 (北下浦小中)・外川しのぶ (横須賀総合高校)/市川敦義 (学校教育課) |
(5)人権同和 | 小島弥生 (山崎小)・佐藤礼子 (明浜小)・斉藤由美 (浦賀中)・堀越成明 (長井中)/小田部英仁 (学校教育課) |
(6)小学校・英語活動 | 伊藤安子 (大矢部小)・青木葉子 (森崎小)・稲永純子 (鴨居小)・木下恵一 (公郷中)/黒川理美 (学校教育課) |
(7)横須賀の教育 | 棟居 心 (鷹取小)・戸田朋宏 (荻野小)・赤羽明宏 (衣笠中)・小板橋貴久 (岩戸中)/椿本幸光 (教育研究所) |
(8)障害児教育 | 川名裕子 (神明小)・吉目木 令 (武山小)・荻野量一 (田浦中)・小川瑞江 (常葉中)・青山一江 (養護学校)/田野口則子 (学校教育課) |
(9)学校図館活用 | 柴田治美 (小原台小)・百瀬美佐子 (野比東小)・関場孝男 (長井中)・伊部えりさ (大楠中)/一栁直行 (教育研究所) |
(10)環境教育 | 大津 晃 (鶴久保小)・内田のぞみ (公郷小)・市川由香 (浦賀中)・二葉隆弘 (横須賀総合高校)/坂庭 修 (教育研究所) |
(11)生徒指導 | 鶴迫節子 (鶴久保小)・青木慶子 (汐入小)・菅原和子 (光洋小)・小山要治 (不入斗中)・進藤真由美 (衣笠中)/秋澤純哉 (学校教育課) |
(12)不登校問題 | 原 恵子 (汐入小)・渡辺喜代子 (衣笠小)・川端久詩 (公郷中)・星野嘉郎 (久里浜中)・井上 泉 (坂本中)/下川紀子 (教育研究所) |
(13)スクールマネジメント | 礒口弘樹 (鷹取小)・望月俊一 (陽光小)・伊藤香代子 (大津小)・岡部俊輔 (不入斗中)・勝 康雄 (浦賀中)・松山雅彦 (常葉中)/中山俊史 (教育研究所) |
(14)学校経営 | 南 久直 (森崎小)・木村美之 (野比東小)・夏野 正 (北下浦中)/五ノ井文男 (教育研究所) |
「研究紀要」の発行
平成14・15年発足の研究員会の研究テーマ・研究成果を紹介します。研究の詳細は基準が整い次第、これまでの 「研究紀要」 と同様に、イントラネット上で全文を紹介します。 ・275集 「教科研究会の返遷」 ・276集 「よこすかの子ども調査」 ・277集 「授業におけるコンピュータ活用の研究」 ・278集 「小・中学校の連携のあり方を探る」 ・279集 「評価・評定の実践的研究~小学校~」 ・280集 「評価・評定の実践的研究~中学校~」 ・281集 「小学校の英語活動のあり方」 ・282集 「中学校総合的な学習の時間」 |
研修セクション
8月の研修講座案内
基本研修
◆初任者研修
2日(月) | 9:30~17:00 | 講義「総合的な学習の時間のあり方」 | 第1研修室 |
講義「教職員の服務について」 | |||
3日(火) | 8:45~17:00 | 保健安全教育 「心肺蘇生法講習」 | 正庁 |
第12回初任者研修について | |||
23日(月)~24日(火) | 8:30~17:00 | 宿泊研修:班別協議・講演・実習 | 湘南国際村センター |
◆11年次教職経験者研修
9日(月) | 9:30~16:30 | 学校教育相談と児童生徒理解 児童生徒指導の実践報告 研究協議 |
2階会議室 |
◆21年次教職経験者研修
4日(水) | 9:30~17:00 | 講演 「今日的教育課題のとらえ方」 グループ協議 |
第1研修室 |
20日(金) | 9:30~17:00 | 講演「総合的な学習の時間と特色ある教育活動」 グループ協議 |
第1研修室 |
専門研修
◆管理職研修
校 長 |
10日(火) | 学校における組織マネジメントのあり方 | 第1研修室 |
教 頭 |
17日(火) | 学校における組織マネジメントのあり方 | 第1研修室 |
◆情報教育担当者(リーダー)研修
2日(月)~4日(水) | 9:00~16:00 | 大塚台小学校 | 自校の情報化推進のリーダーとしての自覚の育成 ネットワークの理解、情報セキュリティ |
◆英語教員集中研修
2日(月) | 9:00~17:00 | オリエンテーション、基調講演他 | 横須賀総合高等学校メディア室他 |
3日(火) | 9:00~17:00 | 英語スキルアップ研修、指導法改善研修 | 横須賀総合高等学校メディア室他 |
4日(水) | 9:00~17:00 | 英語スキルアップ研修、指導法改善研修 | 横須賀総合高等学校メディア室他 |
5日(木) | 9:00~17:00 | 英語スキルアップ研修、指導法改善研修 | 第1研修室 |
17日(火) | 9:00~17:00 | 英語スキルアップ研修、指導法改善研修 | 横須賀総合高等学校メディア室他 |
18日(水) | 9:00~17:00 | 英語スキルアップ研修、指導法改善研修 | 横須賀総合高等学校メディア室他 |
19日(木) | 9:00~17:00 | 英語スキルアップ研修、指導法改善研修 | 横須賀総合高等学校メディア室他 |
20日(金) | 9:00~17:00 | 研修の成果まとめと課題、修了式 | 横須賀総合高等学校メディア室他 |
◆教育課程担当者研修
26日(木) |
9:30~16:30 | これからの学校教育のあり方 -開かれた学校を具現化する学校外教育との連携を考える-協議交流 |
第1研修室 |
その他の研修
◆理科教育研修
<理科基礎技術講座>
19日(木) | 13:30~16:30 | 地域の環境を学習に活かす | 第1研修室 |
20日(金) | 14:00~16:30 | 観察・実験基礎技術3 ~事故防止とガラス器具作成~ |
理科室 |
<理科教材研究講座>
20日(金) | 10:00~12:00 | 学校ビオトープづくり | 不入斗中学校 |
◆情報教育研修
<実務コース>
2日(月) | 9:30~ | 画像処理 | 情報研修室 |
3日(火) | 9:30~ | プレゼンテーション (パワーポイント) | 情報研修室 |
4日(水) | 9:30~ | ホームページ作成 | 情報研修室 |
(指導主事 木屋・椿本・北村・北原)
教育情報セクション
■実験中の事故防止 残念なことですが、理科の実験において毎年のように事故が起きています。毎時間の授業において、子どもたちの思考と活動をどれくらい予想できるかが、良い授業づくりとその評価、さらには危機管理につながります。 子どもたちは実験・観察が大好きです。事故をおそれて実験に尻込みをするのではなく、予備実験を含めた十分な準備で安全で楽しく、意義ある実験を行ってください。 |
■カブトムシの幼虫、堆肥のあっせん 公園などの樹木の剪定枝の再資源化による木材チップの中でカブトムシの幼虫が育ちました。 このカブトムシの幼虫とチップから作られた完熟堆肥をあっせん致します。すでに学校に送らせていただきました申込み票に希望数をご記入の上、今月20日までに研究所に送って下さい。 なお、カブトムシの数につきましてはご希望に添えない場合がありますので、ご了承ください。 |
■よこすかスクール携帯ネット 6月から本格運用されました 「よこすかスクール携帯ネット」 は、各学校での更新が頻繁に行われるようになり、保護者からの感謝のメールも研究所に届いています。 これからもこの更新作業をより多くの先生方に経験していただき、ホームページも含めた積極的な情報発信を今後もお願いいたします。 |
■8月の理科教育研修講座のご案内 8月19日 「地域の環境を教育に活かす」 では理科や総合的な学習の時間において、地域の自然や施設、そして人や組織といった資源をどう教育に活かすかをワークショップ方式で学びます。 8月20日 「学校ビオトープづくり」 では本格的なビオトープづくりに取り組み始めた不入斗中学校を会場に研修を行います。これからビオトープを作ろうと計画されている学校の先生は是非ご参加ください。 |
■コンピュータ 「操作の資料」 を活用ください コンピュータの利活用が進み、学校用環境の設定についてや、教育活動での独特な使い方の質問が多くなってきましたので、イントラのトップページに 「資料の操作」 を開設してあります。 |
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(指導主事 高木 TEL837-1338・一栁 TEL836-2418・坂庭 TEL836-6104)
こくばん
不登校児童生徒とのかかわり方 -学級担任としてどうかかわるか- |
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「不登校児童生徒」 といっても、ここ数年来、一人一人の抱えている課題は多様化してきています。最近では、LD (学習障害)、ADHD (注意欠陥多動性障害)、或いは軽度の発達障害が原因となっている場合もあります。また、対人関係そのものに問題が無くても、学校生活上のつまずきに対する耐性の弱さがきっかけとなっていると思われる事例も多くなっています。10人不登校になった生徒がいれば、10通りの課題がその背後にあるということです。今までの経験から生徒とのかかわりを考えていくには難しい状況が担任の先生方には多くなってきています。私自身、数年来相談学級の担任として多くの不登校生徒と接していますが、年々生徒との安定した関係を築いたり、生徒が学級に自分の居場所をつくったりしていくのに時間がかかるようになる等、生徒個々の持つ背景や課題が難しくなっていくのを感じています。 今回は 「学級担任としてどのようにかかわるか」 ということについてお話したいと思います。 生徒とかかわるにあたって、まず、個々の背景や課題についての理解が必要になります。単純に人との関わりがうまく出来ないといっても家庭の状況や、育ち方、関わりがうまく出来ない要因によって、かかわり方が変わってきます。 まずは保護者とじっくりと話をする事が必要です。 ただし、話をするというよりも聴くという姿勢が大切です。こちらの話を一方的にするのでは必要な情報は得られません。 相談機関にかかっているようであれば、担当者と連絡を取り合いながら生徒の課題や背景について情報を得て理解をしていく事が大切です。これは基本的なことですが一番時間がかかり、一番難しいことになっているのではないでしょうか。 |
しかし、この基本的な事が保護者との信頼関係を築くことになります。保護者との関係が安定していくと、生徒と直接かかわる事ができるようになってきます。そこにいくまでには時間がかかる場合がありますのでじっくりと取り組んで欲しいと思います。 すでに夏季休業に入っていますが、長期休業中は生徒も 「学校に行っていない」 ということに対する心理的な負担が少ない時期で、比較的かかわりを持ちやすい時期です。 日ごろ顔をあわせたり、話をするのが難しい生徒には手紙を書いたり、メールを送るなどしても良いと思います。 顔を合わせる事ができる生徒については休業中、生徒の少ない学校への登校を勧めてみることも良いでしょう。 また、学習会や学年・学級独自の行事などが企画されている場合には個別に対応することも考えての参加を促すことも出来ると思います。 しかしこれらの場合にも、担任の先生が何らかの形で生徒とのつながりを作ろうとする事が大切で、すぐに目に見える成果が出ることを期待してはいけません。 相談学級へ登校している生徒でも長期休業中に何らかの形で担任の先生から接触のあった生徒は、たとえ休業期間が終わった後の登校再開につながらなくても在籍校への心理的な距離が縮まったという発言が多くなりますし、自分からかかわっていこうという姿勢が見られるようになります。 ほんの少しの時間でも、気がついた時に様々な手段で連絡を取っていく事が大切ですし、日ごろからの保護者との信頼関係の積み上げをしておいてこそ成果が現れてくると思います。 |
『スペースゆうゆう坂本』 開設 7月1日、中学校の不登校生徒を対象とした適応指導教室 「スペースゆうゆう坂本」 を開設しました。 (見学可) 住 所 : 横須賀市坂本町2-39 (旧坂本小学校) 電話・FAX : 046-821-0166 |
更新日:2023年11月02日 14:53:09