月報 2004年度 9月号
平成16年(2004年)9月1日
編集発行・横須賀市教育研究所/代表・五ノ井文男
〒239-0831 横須賀市久里浜6-14-3
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巻頭
小柴昌俊先生のお話から
『カミオカンデの話を通じて熱い気持ちに、そして研究に対するたゆまない努力、”やれば、できる”に勇気をいただき、これからも生徒に情熱を注いでいきたいと思います。』 |
だから、中学の先生はね、まず、先生が子どもたちに好かれるような先生になんなかったらね、教育はなかなかしにくいんだろうと思いますよ。じゃ、子ども・生徒に好かれるような先生って、どんな先生だろう。自分の中学校時代のことを考えてみますとね、やっぱりね、その教えてる科目に、その先生自身がね、興味をもって、面白いと感じてやってる。こういう先生でなきゃね、子どもに影響力はないんだという気がしますね。…》 (所長五ノ井文男) |
特集
『学校評議員から見た学校』
学校評議員1年生
昨年度の2学期から総合的な学習の時間のお手伝いで10回ほど学校を訪ね、子どもたちと楽しい時間を持ってきた。それがご縁となったのか、校長先生から学校評議員のお話があり、学区居住でないことへの戸惑いはあったが、お受けすることにした。 |
学校評議員として感じたこと 会議に出席し感じたことは、結果的にどうしても、「グットニュースの説明会」になってしまっているということである。そこで提案として学校が抱えている様々な問題を議論する際に、評議員を活用してみてはどうであろうか? 自由闊達な議論を進めることにより問題に対する様々な切り口や、新たな考え方が出て来るのではないだろうか。異業種の人達の考え方は参考になるし、さらに話を揉んでみるのも一考に値することと思う。 評議員は決して地域の利益を誘導するものでなく、広い意味で教育環境の整備等を考える役割がある。人選においても冷静に話を聞き客観的に判断できる人物が必要であろう。 異論もあろうが、あえて現役PTAを除くなど、ある程度学校から距離を置いた者の方が適任ではないかと思う。これらは気をもむところではあるが、地域を過剰に意識する必要もない。一番に大切なのは生徒なのだから。 精神的に真面目な生き方・考え方が崩れかけている日本社会で、奇をてらうことなく、真面目に議論が出来る場所は、未来を担う子供たちを育てている学校こそがふさわしい。 さあ、明日に向かって熱く語ろう! 何かが見えてくるかもしれないし、そうでないかもしれない。ボランティアとして少しでもお役にたてればと思う次第である。
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教育相談セクション
医療機関でLDとAD/HDを併せもっていると診断された中学1年の男子生徒を担任しています。小学校では、集団行動が苦手で友達とよくトラブルを起こし、5・6年生の時に不登校ぎみになった時期があったということです。中学生になってクラスや部活の仲間とささいな事でもめ、けんかになりました。こうした生徒を不登校にしないためにどのように対応したらよいでしょうか。 |
◆特別な教育的ニーズのある子どもたち LDやAD/HD、アスペルガー症候群など、学校生活において特別な支援を必要としている子どもたちは、様々な場面で非常に似通った状態像を見せることがあります。LD児とAD/HD児の中には、それぞれの主症状(学習能力の偏りと注意欠陥、多動)を併せ持つものもかなり多く、高機能自閉症のうち言語発達に問題がないアスペルガー症候群とAD/HDにも、やはり同じような症状(多動等)が見られる場合があります。 学校生活においては、集団行動ができない、教師の指示が通りにくい、他の子どもとトラブルを繰り返す、感情のコントロールができない、学習に乗ってこない、またからかいやいじめの対象になりやすいなど、集団不適応につながる可能性のある要素が見受けられることもあります。診断名の有無や集団への適応状態の良し悪しに関係なく、全体の5%程度の子どもは特別な教育的ニーズを有していると言われています。総じて、対人関係や社会的なスキルに課題をもっていることが多く、二次的な問題として様々なストレスから不登校になりやすいともいえます。 ◆人間関係づくりへの取り組み 本人のもつ問題行動や課題だけに注意がいきがちですが、周りの子どもたちを同時に育てることも重要です。対人関係をうまくとれない子どもは、それまでの学校生活の中で失敗経験が多く、自己肯定感が低くなってしまっていることが考えられます。そこで、教師はその子どもを中心に、円滑な人間関係づくりができるよう、きちんと目当てをもって学級集団を育てる必要があります。 日頃から、子どもたちが心穏やかに安心してすごせる人間関係づくりに配慮し、対人関係に課題を抱える子どもを学級の一員として温かく受け入れることのできる包容力のある健全な集団づくりを進めることが大切です。学級集団の中で十分な安心感や充実感を与え、自信を持たせることで不登校は防げます。 |
◆本人への支援 教師側の捉えだけで支援策を考えるのではなく、子どもや保護者から学校生活の何に不安やつまずきがあるのか丁寧に話を聴いておきます。そして、その解決のために教師が支援できること、周りの子どもたちが協力すること、その子ども自身が努力すること、家庭が協力すること等を明確にしていきます。それぞれの目標が見えたら、支援のためのプランニングをして実行していきます。 また、普段から子どもの行動パターンを把握し、不適切な行動が予測できる場面では、あらかじめ対策を立てておくことも必要です。心に痛手を残すような大きな失敗経験は未然に防ぎ、少しでも適切な行動が認められた点や本人が努力したことは、積極的にほめます。「次はこうしよう。」と本人が自発的に取り組めそうな課題設定をこまめに行い、達成できる毎に評価を与えます。 学習面での苦手意識を極力高めないようにすることも大切な支援です。一斉授業であってもできる限りその子どもに応じたきめ細かな配慮を行い、座席の位置や家庭学習課題の設定などは保護者の意見も参考にする必要があります。 ◆関係諸機関との連携 子どもの不適応状態が激しい時や他の子どもとの関係が厳しい時などは、スクールカウンセラーや相談機関と連携し有効な方法を検討します。情緒的な不安定さや多動傾向が激しい場合には、相談機関と連携して医療機関への受診を勧めることも想定されます。 (指導主事 下川紀子) |
研修セクション
9月の研修講座案内
基本研修
◆初任者研修
小学校教諭 | 14日(火) | 13:30~17:00 | 教科指導2 学習指導要領と教科指導の進め方 教科別グループ協議 |
学校教育課指導主事 | 第1研修室 |
中学校教諭 | 28日(火) | 13:30~17:00 | 教科指導2 学習指導要領と教科指導の進め方 教科別グループ協議 |
学校教育課指導主事 | 第1研修室 |
◆6年次研修教職経験者研修
29日(水) | 15:30~17:00 | 各自の教科指導に関する レポートに基づくグループ協議 |
教育研究所指導主事 | 2階会議室 |
専門研修
◆教育課程担当者研修
小学校教諭 | 15日(水) | 15:30~17:00 | 演習 「学校運営マネジメント初級コース ~『SWOT分析』 を学ぶ~」 |
教育研究所指導主事 | 第1研修室 |
◆登校支援担当者研修
15日(水) | 15:30~17:00 | 不登校の初期対応のポイント 2学期疲れへの対応について グループ別情報交換・協議 校内不登校対策をどう進めているか |
教育相談コーディネーター 教育相談担当指導主事 訪問相談員 |
総合福祉会館 4階会議室 |
基本研修
◆教育課題研修
29日(水) | 15:30~17:00 | 「考える力を育む授業の工夫」 ~IT機器を使って~ |
鶴久保小学校教諭 遠藤 まゆみ |
第1研修室 |
◆教育相談研修
10日(金) | 15:30~17:00 | 「不登校への支援」 ~新たな視点からの学校体制をいかに作るか~ 不登校対策(2) |
国立特殊教育総合研究所 |
総合福祉会館4階会議室 |
◆理科教育研修
22日(水) | 15:30~17:00 | 天気の変化 (小5) |
津久井小学校教諭 |
理科室 |
◆情報教育研修
4日(金) | 16:00~ | ワードの活用法 | 情報研修室 |
28日(火) | 16:00~ | エクセルの活用法 | 情報研修室 |
夏季研修を終えて
記録的な暑さとなった夏季休業が終了し、日焼けした子どもたちの元気な姿が戻って来ました。
今年度は、夏季大学及び教科・領域に渡り、54講座を設け、受講者は延べ約5,200人を数えました。
研修内容や運営方法はもとより、イントラによる申し込みの徹底、遅刻対策など、さらなる検討を続け、よりよい研修を企画します。
(指導主事:木屋・椿本・北村・北原)
教育情報セクション
■夏季情報研修講座へのご参加ありがとうございました。 夏季休業中の情報教育研修は15回行われ、延べ355人が受講しました。 また、昨年に引き続き、情報教育担当者研修が8月2~4日に行われ、ネットワークの理解、情報セキュリティなどについて学んでいただきました。参加した先生方は大変熱心に研修を受けていました。 7月に発表された文部科学省の調査では、ITを活用した授業ができる公立学校教員は6割程度で、新聞各紙は2年後の100%目標の達成は難しい状況にあると報道しています。 加速する情報化社会に生きる子どもたちに、ネットの光と陰を、主体的に学ぶ実際の場面で教えていく必要があります。そのためには、先生方がインターネットを活用した授業ができるようになることが必要です。 教育研究所の情報研修の内容も、基礎的な技能から授業での活用やネットワークの利用等に重点を移しつつあります。学校ITアドバイザーも活用しながら、更にステップアップをお願い致します。 |
■理科の授業のIT活用
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■新着ビデオ紹介 昨年、よこすか市民会議が行った 「海の自然環境学習会」 のビデオ記録を購入しました。三浦半島の自然学習にご活用ください。 〈海の自然環境学習会 11巻〉 第 1巻 小網代湾(63分) 第 2巻 葉山しおさい公園→芝崎(60分) 第 3巻 スノーケリング講習 (91分) 第 4巻 海中観察会(43分) 第 5巻 城ヶ島(60分) 第 6巻 佐島 天神島(90分) 第 7巻 天神島臨海自然教育園(90分) 第 8巻 海洋科学技術センター見学(59分) 第 9巻 平潟湾(47分) 第10巻 猿島(48分) 総集編 第4回海洋生物と環境(120分) ■「地震波立体モデル」の貸し出し
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■児童・生徒研究集録について |
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こくばん
不登校を考える
学校における不登校児童生徒へのかかわり方 | |
不登校の子は、「学校が嫌だ・つらい」という気持ちと「学校に行きたい・行かねばならない・みんなと一緒に行動したい」という気持ち、あるいは「構われたくない」けれど「関係が切れることも嫌」というアンビバレンツな状態(相反する気持ちの葛藤状態)にあると考えられる。非常に微妙な問題である。したがって、不登校児童生徒に善意で行っていることも、本人には負担になっているということがよく見られるものである。 |
それは、日常生活の中で、家庭とともに行う共同作業でもある。 |
◆様々な体験等を積んだ夏休みが終わり、学校生活の再開に児童生徒は期待と意欲で胸を膨らませていることと思います。授業や諸活動等でも、この節目のスタートの指導を大切にしていきたいものです。 |
更新日:2023年11月02日 15:01:44