月報 2002年度 10月号
平成14年(2002年)10月1日
編集発行・横須賀市教育研究所/代表・小山 雄二
横須賀市久里浜6-14-3 / TEL(0468)36-2443(代)
(〒239-0831) / FAX(0468)36-2445
巻頭
教師の研修の充実を
~新「10年経験者研修」
の実施を前にして~
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◆ 平成14年度から全国の小・中学校で実施されている新しい学習指導要領等のもと、基礎・基本を確実に身に付けさせ、自ら学び考える力等を育成し、確かな学力の向上を図るとともに、心の教育の充実を図るためには、実際に指導に当たる教諭等にこれまで以上の指導力が必要とされていることから、制度化されたものである。
◆ 任命権者(県費負担教職員については、市町村の教育委員会。)は、10年経験者研修を実施する。実施に当たり、各校の校長は、教頭、主任等の協力を得て、10年経験者研修を受ける者の能力、適正等について評価を行う。その結果に基づき、当該者ごとに10年経験者研修に関する計画書を作成することになる。
◆ 10年経験者研修は、校外研修として、夏季・冬季の長期休業期間等に、20日間程度、教育研究所等において研修を実施する。校外研修は、生徒指導や教科指導に関する研修と、適正に応じて得意分野づくりを行うための選択研修の二本立てを想定している。生徒や教科の指導に関する研修はベテラン教師や指導主事を講師に、少人数形式の模擬授業や、教材研究、ケーススタディー等を、選択研修は社会体験や、情報教育、環境教育、カウンセリングなどを見込んでいる。更に校内研修として、課業期間に、20日間程度、長期休業期間中の研修において習得した知識や経験を基に実施する。また、研修終了後に、個々の教員の能力、適正を再び評価し、その結果を、その後の研修等に活用することになる。
◆ 制度化を受け、教育研究所では平成15年4月1日から新10年経験者研修を実施する。教員研修の一環をなすものとして、現在の研修の精選や見直しを積極的に行い、教員の経験に応じた体系的な研修の一層の充実に、今後も努めていきたい。
(小山 雄二)
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◆ 昔から「教育は国家百年の大計なり」とか「教育は人なり」とか、教育や教師の役割の重要性がいわれてきたが、これは現在でも変わっていない。
◆ 平成14年度より、完全五日制や新学習指導要領の完全実施、インターネット等情報教育の推進、基礎・基本の徹底から絶対評価、個人内評価への移行など、これまでにない新しい施策の実現に向けての努力がなされているところである。
◆ これまで、教師の養成・採用・研修が常に問題になり、その改善、充実が図られてきている。特に、現在のように教育改革が急激に進められている時には、教員養成においてはもちろん、現職教員の研修においても、時代の変化や社会の要請に対応する指導力の向上が大きな課題となっている。
◆ 平成14年6月5日、第154回国会において、「教育公務員特例法の一部を改正する法律」案が可決、成立し、同年6月12日に「教育公務員特例法の一部を改正する法律(平成14年法律第63号)」として公布され、平成15年4月1日から施行されることとなった。
◆ 今回の改正は、平成14年2月21日の中央教育審議会「今後の教育免許制度の在り方について(答申)」を踏まえ、教員の資質能力の向上を図る観点から、国立及び公立の小学校等の教諭等の任命権者に対して、その在職期間が10年に達した後相当の期間内に、個々の能力、適正等に応じた研修(10年経験者研修)を実施することを義務づけたものである。
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特集
総合的な学習の時間 |
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総合で学んだこと
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「LIFE、その本当の意味」
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豊島小学校 教諭 康乗 弘美
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桜台中学校 教諭 半田美鈴
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総合的な学習の時間の中で、子どものみとりをどうすればよいのか、考えさせられた場面がありました。それは、3年生で「地域」を題材とした時のことです。
地域へ出ての学習の1回目、子どもたちがどこでどんな事をするのか知りたくて、ひとつのグループに付き添い、一緒に回りました。私が想像していた以上に子どもたちは、いろいろ試したり、出会った人に話を聞いたりして、新しいことを発見していました。2回目も、また別のグループと出かけましたが、子どもたちが、自分で学習を進めていくたくましさに、感心させられました。
そこで3回目はぜひ、全グループの活動をこの目で見ようと思い、車で回ることにしました。
「何をやっているの。」と声をかけながら、子どもたちが取り組んでいる様子を見ていきました。
でも、何か物足りない感じがしました。
何が違うのか振り返ってみたところ、その時、私が見ようとしたのは、子どもたちの行動であり、その裏にある心の動きはみえていなかったことに気が付きました。初めの2回は、一緒に回る事で、
子どもの思いを私も共有していたのだと思います。そこで一緒に回れない子どもたちの活動もみとるにはどうしたらよいのか考え、やったことだけではなく、なぜそれをやりたいのか。困ったことや嬉しい事はどんな事か。思いは達成されているか。次にやりたい事は何か、などをじっくりと聞き、把握することを心がけました。
子どもの「活動をみとる」ということは、行動だけでなく、それに至る過程の思考や、心の動きも共感的に受け止めていくことなのだと、あらためて実感する出来事となりました。
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総合的な学習の時間を「LIFE」と名付け、学習をスタートさせて今年で3年目になりました。「life」にはたくさんの意味があります。生命、生活、生物、活気、生涯、人生、実物、など辞書を引くと次々と言葉があふれ出てきます。その全てがまさに総合的な学習で身につけさせたい力そのものだと思ったのです。
子どもたちは、1年目には多くの外国人ゲストとの出会いに感激し、自国の文化を見つめ直し、国際感覚を広げることができました。2年目は、身近な環境から暮らしを考え、テーマ設定から調べたことのまとめや発表までできる力をつけてきました。また、校外に職場体験実習に出ることで、新たな出会いと未来に向けての意識が芽生えました。だんだんと力をつけていく子どもたちに、その場に応じたどのような支援が必要なのかを考えさせらた2年間でもありました。
そして3年目の今年、世間では「総合的な学習完全実施」と騒がれている中、「今年のLIFEはどんなことやるの?」「この時間割の総合って何?最初からLIFEって書いてよ」という明るい雰囲気で3年生の学習がスタートしました。私の受け持つグループでは、福祉という大テーマのもと、「国際協力」について学習し、調べたことや分かったことを伝えるためにポスターやチラシを作成し、小学校に持って行ってPR活動をしました。子ども同士の活動や話し合いの中でまだまだアイデアが生まれてきそうです。
LIFEの授業の中で子どもたちが一つでも二つでもその意味や価値を見つけだし、これから生きていく上での糧にしてほしいと願い、私もまた、LIFEの意味を考えています。
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教育相談セクション
「転校をめぐって」
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◆ 子どもの問題で相談に訪れる保護者から,転校ということばがよく聞かれます。転校を,子どもの環境を変えるための一つの機会ととらえ,それについて前向きに考える保護者が,最近ではずいぶん多くなったような気がします。子どもが変わった,とよく言いますが,保護者の意識も大きく変化してきています。従前からの人間関係や地域とのつながりにはそれほどこだわらない,考え方の転換や決断がひじょうに速い,学校教育に対して主体的な意見を持っている,といった傾向が感じられます。当然,学校に対する注文には,厳しいものがあります。
◆ 転校そのものに可否はありませんが,現状では,希望すればすべて実現できるわけではありませんし,子どもの問題解決のために本当に有効な方法であるのかの判断は,難しいと言えます。判断が正しかったかどうかは,転校してしばらくたってみなければわかりません。また,保護者だけでなく,子ども自身が,転校の意味をどれだけ理解していて,望んでいるのかという点も重要なのですが,子どもは不安な気持ちが先行して,明確な意思表示が十分にはできない場合もあります。
◆ 転校を希望する理由は,ケースにより様々です。例えば,クラスメートからのいじめを受けたと訴えるケース,学校の指導方針に不満をもっているケース,環境を変えることで不登校を直すきっかけとしたいというケース,近所に友達ができず地域にとけ込めないといったケースなどです。共通しているのは,人間関係のトラブルを抱えているという点です。こじれた人間関係をリセットして仕切り直しをしたい,そんな思いが相談の端々から感じ取れます。
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◆ しかし,環境を大きく変えて一から人間関係を築き直すという作業には,当然のことながら,大きなストレスがかかります。また,環境が変わっても,子ども自身が変われなければ,本当の意味での問題解決にはなりません。保護者や新しい学校の教師など,周りの大人たちが子どものストレスを上手に受け止め,新しい環境に適応できるよ
うに細やかな気配りや支援をする必要があります。それがあって初めて,子ども自身も変わることができるのだと思います。心機一転,新しい学校で不登校を克服しようと挑んだ子どもが,学校復帰を果たすのは,容易なことではありません。
◆ 「転校を考えているのですが…。」という相談があった時には,そこまで考えるようになった事の経過や心情の移り変わりを,一つ一つ丁寧に聞き取っていくように心がけています。悩んだ末の手詰まり状態から,混乱したままで,転校を考えるようになっている場合も多いからです。気持ちを整理した上で,問題解決のための最善の方法が転校以外に残されていないのか,転校に伴うリスクも予想して冷静に考えるようにとアドバイスしています。そして何よりも,学級担任をはじめとする学校の先生方と,納得いくまで十分に話し合うことを勧めています。
◆ 前にも触れたように,転校それ自体の賛否を問うつもりはありませんが,子どもが大きなエネルギーを費やすことだけに,慎重に考えたいものです。子どもが毎日を楽しく安心してすごせる環境を,私たちが作り出していかなければいけないと強く感じています。

(教育相談セクション24-1200:下川紀子)
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研修セクション
基本研修
初任者研修
☆他校種間交流
各初任者が各々指定した市立幼稚園,市立高等学校,地域の小学校又は,中学校に赴く。
1日(火),8日(火),15日(火)
☆29日(火)校外研究授業(中学校)
午後日程で実施。詳細は後日連絡する。
桜台中学校,池上中学校,久里浜中学校,大楠中学校の各会場で行う。
新採用養護教諭研修
☆22日(火)専門分野研修 県立総合教育センター
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その他の研修
教育課題研修講座
☆8日(火)15:30~ 教育研究所第1研修室
・講義「地域とともに生きる学校」
逗子市立沼間中学校長 長崎 祥夫 先生
☆23日(水)15:30~ 教育研究所第1研修室
・講義「学校における環境教育」
横浜市立新治小学校副校長 和泉 良司 先生
管理職研修講座(校長研修)
☆15日(火)15:30~ 教育研究所第1研修室
・講義「男女参画社会の推進」
横浜弁護士会 弁護士 渡辺 智子 先生
教育相談研修講座
☆16日(水)15:30~ 教育研究所第2研修室
・講義「チームで支援する学校教育相談の体制づくり」
日本女子大学 教授 鵜飼 美昭 先生
理科研修講座
小学校理科教材研究講座
☆23日(水)15:30~ 教育研究所理科実験室
・「ものの温度とかさ(4年)」
野比小学校教諭 宇佐美 暁 先生
情報教育研修講座
経験者コース
15:30~ 教育研究所情報研修室
☆プレゼンテーションコース 4日(金)・8日(火)
☆画像処理コース 15日(火)・22日(火)
☆ホームページ作成コース 29日(火)
授業活用コース
☆11日(金)15:30~ 教育研究所情報研修室
(25日(金)は中止となりました)
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◎ 研修セクションからのお知らせ
平成15年4月1日から「10年経験者研修」の内容が教育公務員特例法が改正され制度化されます。
この研修の概要は以下の通りです。 |
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(1) 事前に個々の教諭等ごとに研修計画を作成する。
(2) 夏季・冬季の長期休業期間等に20日間程度,教育センター等において研修を実施する。
(3) 課業期間に,20日間程度主として校内において研修を実施する。
(4) 研修終了時に評価し,その結果をその後の研修等に活用する。
横須賀市教育委員会としましては,従来より実施している11年次教職経験者研修を踏襲しながら,研修内容について検討していく予定でおります。
詳細については,今後,学校長を通じてお伝えすることになると思いますが,来年度,該当する方がいらっしゃる学校につきましては,管理職を中心に研修への参加体制づくりについて,今年度より検討していただくことになると思います。有意義な研修になるよう,ご協力の程,お願いいたします。
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(研修セクション TEL34-9308 : 中山・木屋・北村)
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教育情報セクション
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今月、当セクションが担当する研修は、理科研修講座と「経験者コース」、そして今年度からはじめた「授業活用コース」の7講座です。「ネットワーク利用コース」から引き続き受講される先生方も多く、忙しい校務の中、熱心に参加される姿に研修の必要性と、内容の充実についての責任を実感しています。 |
○ 「連生」でのIT活用
中学校の連合生徒会では,IT(情報通信技術)を利用した活動をここ数年模索してきました。昨年度はTV会議システムによる会議を10回程度行い,今年度のリーダースキャンプでは,生徒会役員らの手によって,連合生徒会のホームページを作成し,インターネット上に公開をしました。研究所のトップページから閲覧できますので,ぜひご覧ください。
○ 学校図書館の活用
8月6日、学校図書館先進校視察が実施されました。今年度は袖ヶ浦市立昭和中学校を訪ねその実践から、学校図書館の利用・活用についての講義と図書館でのブックトークの実演を交えての研修でした。

ブックトークでは、長年図書担当をされている先生方もいつの間にか本の世界に引きこまれ、20分間暑い夏を忘れたようでした。
○ 10月からの学校ITアドバイザー
10月から来年3月まで、新しいアドバイザーが派遣されます。今期の派遣は、小学校を大きく2つのグループに分け、10月から12月までと、1月から3月までの3ヶ月間、それぞれのグループ校ごと、2校に1名を集中的に派遣する方式にしました。
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集中的に派遣されない期間は、中学校と同様に巡回担当のアドバイザーが派遣されます。また、校内研修の一環として情報教育を予定されるようでしたら、出前研修の形でも協力させて頂きます。
○ 「はじめてコース」の成果
夏季研修期間中に実施した「はじめてコース」には、延べ675名のご参加頂きました。当初の予定を変更し、午後3時30分から5時という時間帯もありご迷惑をかけました。僅かな時間のでの研修で十分に実習できない部分もあると思いますが、テキストを利用しての復習も考えてください。
○ 輝く理科授業のために
魅力ある理科授業に、先生方ご自身の科学への興味・関心、そして好奇心は欠かせません。
理科の教育雑誌には、全国の先生方の実践や教材のアイデアがたくさん載せられ、眺めるだけでも元気が出てくるものがあります。
下に紹介したものは研究所理科室にもありますが、書店に置かれているものは少ないようです。他にも定期発行誌はありますが、どれも薄く、すぐ読めるものばかりですので、一度手に取ってみることをお勧めします。
初等理科教育 農文協
たのしい理科授業 明治図書
たのしい授業 仮説社
理科教室 星の環会
授業のネタ 教材開発 明治図書 |
○ お詫び
年度当初の予定では、10月25日に「授業活用コース」の研修を予定していましたが、講師のご都合で中止にしました。10数名の先生方にはネット上でお申し込みを頂いたあとでしたので、ご迷惑をおかけしました。この他の「授業活用コース」は順次ネット上から申込みできるようにしていきます。
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(教育情報セクション
小谷 直通TEL37-1338・坂庭 直通TEL36-6104・一栁 直通TEL36-2418)
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こくばん
研究員会だより
よこすかの子ども研究員会
『子どもの「今」をとらえる』
この研究員会は,よこすかの子どもの事実を調査・研究するため,今年度,新しく設定されました。ただし,過去の研究紀要一覧を見ると,これまでにも同様の趣旨の研究員会があり,「遊びの傾向」や「こづかい」,「人間関係」や「生活体験」,「生活意識」といった子どもたちの状況がまとめられていることがわかります。
これらの調査・研究が昭和48年以降,おおよそ5年間隔でまとめられていることの意味,そして「なぜ,今,よこすかの子ども調査であるのか」ということを考えるとき,私たちは,以前の先生方の諸先輩方の労力をかけた資料を活用し,子どもの「今」とを比較分析する調査・研究を行うことが課題なのだと判断しました。
そこで本研究員会では,子どもの「生活スタイル」,「学習意識」,「将来に対する夢」という観点から調査を試みようと検討しています。
「生活スタイル」の調査は,過去の調査を継承する意味があります。それとともに,現在との比較ができると考えます。
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また,学校週五日制や一人一人の良さや成長の過程をさらに丁寧に見ていく評価など,教育の新しいシステムが,試行を経て完全実施されました。「学習意識」は,そんな「今」の子どもの状況を分析することができると考えました。
「将来に対する夢」からは,価値観の多様化した中での子どもの夢を探ろうとしています。
以上のような調査から,今後の学校教育のあり方を探るための基礎的資料となりうるものを作成したいと思います。
子どもたちが変化してきていると言われ,久しくなります。2年間というスパンが与えられていますが,的を絞り,学校現場で有効に活用される調査・研究にしていきたいと考えます。
津島 利光 (岩戸小学校)
黒田 雅子(北下浦小学校)
清宮 律子 (大津中学校)
原崎 陽一(久里浜中学校)
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夏季休業中の科学教養講座には21名の申し込みがあり、夏島町にある海洋科学技術センターで海洋利用や深海生物の講義を受けました。加えて、飼育されている深海生物の見学や潜水艇の見学等も行い、あっという間の2時間半でした。参加された先生方は大変熱心に質問をされていました。
このような世界に誇る施設が横須賀市にあり、誰でも見学できることは幸せなことだと思います。
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