月報 2004年度 3月号
平成17年(2005年)3月1日
編集発行・横須賀市教育研究所/代表・五ノ井文男
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巻頭
「魅力的な授業」を創造する
明日は楽しいドライブ。 車内の雰囲気を盛り上げる音楽を用意しようと思います。どのように準備しますか? 1 ネットからダウンロード 2 携帯で 3 PCで 4 デジカメで 5 CDに 6 MDに 7 MP3・・・ さて、いくつのことがらを具体的にイメージすることが出来ましたか。私たち大人には、目新しく感じられるこれらのメディアも、子どもたちの生活にはしっかりと定着しているようです。 では、それら「情報化」が、学校において順調に進展しているか、というとインフラの整備も含めて、十分とは言えない状況にあります IT活用というと、なにか手間のかかる面倒な仕事のように感じる方もいるようです。得意な人に任せるしかない、時間のある人のやることだというような呟きを耳にすることもあります。 果たしてそうでしょうか。学校だけがIT社会と無縁でいることなどできるのでしょうか。 黒板は板書の他、短冊や模造紙の掲出や映像の投影先としても活用されています。板書も、まとめ方や色チョークの使い方等。授業を効果的・効率的に進めるための工夫がなされてきました。 ここにITを加えてみます。短冊はプレゼンソフトを、映像はビデオクリップを使えば、手直しも簡単、保存も利いて繰り返し使えます。資料や板書事項はプリンタがあれば、その場で印刷・配布することも可能です。子どもたちの興味・関心を大いに喚起しそうではありませんか。 もちろん、黒板や色チョークがよい授業に不可欠だと断言出来ないように、ITの活用度も教科や単元ごとに違いがあって当然です。 |
その違いは、子どもの理解や思考を深め、学力の向上につなげるような授業を展開するために、教具をどう使うかという「的確な教材解釈」に基づいて、その授業のポイントをギュッ!とつかんだ各先生の判断の相違から生じるものです。 そういう意味で、授業においてITを有効活用することが出来るのは、「ITの得意な先生」ではなく「より良い指導のあり方を模索する先生」であるように私には思えます。 ここでいう「的確な教材解釈」とは単元の本質や系統的なつながりを明確に把握して、カリキュラムを構成していく営みをさします。 そして、授業はその解釈に基づいて展開されていくわけです。ただし、そこで忘れてはならないことがあります。それは、先生が教えたいと思ったことを教えるだけでは、子どもたちの深い学びを導き出すことは難しいという認識です。 ITを一例にして、進めてきたここまでの話はIT活用にとどまらず、学校におけるすべての指導にあてはまるのではないでしょうか。 普遍である真理を子どもたちに伝え、さらに深い学びへとどのように導いていくか。そして「生きる力」をどう育むか。その方法は個々の先生方の創意工夫に委ねられています。 【おや?】で始まり、【そうかぁ!】→【それで!?】と深まっていくような・・。子どものみならず先生の目もいきいきと輝くような・・。そんな授業を展開していきたいものです。 そのために大切なことは、目の前の子どもの状況に応じて自分のプランをアレンジしていく「しなやかさ」とそれを可能にする「的確な教材解釈」、これでいいのだろうかと常に自分の指導を評価し続けていく「謙虚さ」ではないでしょうか。 |
(指導主事 髙木 尚) |
特集
わが校の2学期制 |
より良いものを目指して | 新たな教育活動のきっかけに |
逸見小学校教諭 二見 喜久子 | 鷹取中学校教諭 八木田 実 |
逸見小学校では、新教育課程の実施をふまえ「豊かな心と確かな学力を持った子どもの育成をめざして」研究を進めてきた。その中で2学期制のメリットとされる「授業時間の確保」や「長期的視野にたった指導計画」「長期休業の活用」などを有効に活用して、私たちの目指す子どもの育成をめざしたいと考えた。 2学期制を実施して、授業時間数に大きな違いはないものの、学習のまとめ・キャンプなどの行事が重なる7月に夏休み直前までじっくりと授業ができる良さやゆとりを実感した。また、学期の途中である夏休みには、事前の個人面談などで、子どもにも保護者にも具体的な課題を提示することができ、休みをより有効に活用できた。 教育を巡る環境の変化は著しい。学校が変わること、私たちの意識を変えることも求められている。2学期制を契機に「より良いものを目指そう」と教育課程を見直し、様々な工夫や試行が動き出すこととなった。 2学期制に取り組み2年目が経過する本校であるが、現在も本校の目指す子どもの育成にむかい行事や教育課程などの検証を進めている。保護者にもアンケートをとり、面談や夏休みの在り方などの参考にしている。保護者の中には、長年親しんだ3学期制からの移行に戸惑いもあるが、学校からの2学期制の意義や評価などの説明で不安を解消し、理解を得ている。 2学期制の在り方は一つではないだろう。逸見小の子どもたち・目指す教育には、どのような学校・教育課程の在り方がより良いのか、まだまだ検証中である。 |
2学期制を実施している学校の教職員は、「2学期制のメリットは何」と聞かれることがあると思うが何と答えているだろうか。 鷹取中は2学期制を実施して2年が経とうとしているが、2学期制導入にあたり、学校教育目標や教育課程、行事、授業と評価、効果的な面談、長期休業の過ごし方などを全職員が分担して検討を進めた。学期の途中に夏休みがあるので、学びを継続させるために夏休みをどのように過ごさせたらよいのかを検討した。夏休みは生徒自らが学びを組み立て、必要とする学習を行い個性を伸ばすときと考えた。そして、それを支援するために自己課題書作成のアドバイスや「ほっと‥サマースクール」を開講した。他にも指導・評価計画の見直しや評価の伝え方の工夫、行事のねらいの吟味なども行った。また、このような取り組みをすることで、一人一人が鷹取中の教育課程を創り出そうとする意気込みにつながった。 2学期制導入の目的を『年間を2つの学期に分け、ゆとりを生み出し、単に授業時数を確保すること』で終わらせてしまってはならないと思う。2学期制導入が目的ではなく、新たな教育活動を展開するための手段にならなければ無意味である。すなわち、自校のよさを生かしながら新たな発想で生徒や保護者、地域のニーズに合った教育課程を創造し、特色ある学校づくりを推進するきっかけにすることこそ2学期制の大きなメリットではないかと思う。教職員が今までの習慣や価値判断を検証し、新たな視点で教育課程を捉え直し学校を活性化する教育課程を再構築していきたい。そして、これからも2学期制導入の意味を全職員で問い直し続けたい。 |
平成16年度 長期研修員研究内容 | |
「子どもたちのコミュニケーション能力を高めるために」 | |
平成16年度 教育研究所長期研修生 野比小学校 佐藤 とみ子 | |
現代の子どもたちは、人と関わる体験がとても不足しているように感じます。相手の気持ちを受け入れ、自分の思いを適切に表現するスキルを、教室の子どもたちも学んでいく必要があります。そうした中で学校は今、子どもたちが集団体験を通してコミュニケーションを学ぶ大切な場になっています。 今年度、教育相談室における長期研修で、学校生活に困難が生じている子どもたちの個別相談に関わる機会を得ました。個別相談で担当した子どもたちは、主に学習面でのつまずきや、社会性でのつまずきを持っています。それらが解消されないまま集団不適応を起こしている子どももいます。 個別相談を受けた小学校低学年のA君の場合、「集団と上手く関われないこと」「仲のよい友達が作れないこと」が課題です。こうしたことの背景に、友達との関係における的確な状況判断ができないなどの課題があると判断し、ソーシャルスキルの指導を行いました。 ところで個別指導を集団場面で運用するには限界があります。なぜならソーシャルスキルは、実際の生活集団での体験を通して、活用し、獲得されていくものだからです。 そこで、A君の個別指導を続けると同時に、ソーシャルスキルの習得を目指した授業をA君の学級で行うことはできないかと考えました。 そこで次のようなねらいを設定しました。 1 ソーシャルスキル実践の場を学級生活の場に設定し、A君のスキルの向上を図る。 2 学級の子どもたちのソーシャルスキルを高め、学級の集団としての育成を図る。 |
この2点をふまえ、小学校低学年段階にふさわしいソーシャルスキルと、ふれあい・楽しさ・協力・協同の体験を取り入れたゲームやワークを学習活動の中心に取り入れました。 実践する際には、学級全体のソーシャルスキルのレベルを捉えると共に、スキルの低い子どもが、集団参加することへの配慮や工夫が大切です。そこで、学級観察の他に「ソーシャルスキル尺度」や「たのしい学校生活を送るためのアンケートQ-U」などの調査を行い、その結果を参考にしながら、学習活動を実施しました。期間は9月から12月にかけての毎週1時間、計14時間です。 個別相談で関わったA君は、少しずつ集団への参加や友だちと関わる意欲を高めていきました。学級の子どもたちも毎時間の活動で、友だちとの関わりをふりかえり、様々なことを感じ取っていました。詳しい内容・課題は次年度に発表する予定です。 本研究を進めるうえで、共に取り組んでくださった担任の先生、学年の先生、またご協力いただいた校長先生はじめ職員のみなさまに感謝申し上げます。それとともに、本研究が少しでも各学校のお役に立つことができれば幸いです。 |
情報セクション
■年度末の「情報関係処理」について 年度末から新年度にかけては、他の校務と同じように情報機器についても設定・保存ファイルの整理をお願いします。 現在校務のデータはNASに、児童・生徒の作品は共有サーバー内に保管されています。必要なデータと削除するデータ、外部記録メディアに移動するデータと共有するデータを、確実に整理してください。デジカメの高機能化により、画像ファイルは想像以上の容量を必要とします。過去のものはまとめて保管するなどの工夫が必要です。 また、ネットワークを利用している場合は異動に合わせて、各設定の見直しが必要となります。個々の使用方法・機器により整理するデータ・再設定する内容が違うと思いますが、共有で使用する環境からはデータを移動し、設定したパスワードは元に戻すことが原則です。ファイルの価値は作成者でなければ判断できません。所有者が不明でいつまでも「削除」できないということにならないようにしてください。 イントラネット上の「操作の資料」(横須賀市教育情報センタートップページ)には、校務で使用しているパソコンを例として、異動の際に確認する手順や、メールデータのコピー方法など各ソフトのデータのコピーについても紹介してありますので、ご利用ください。 なお、市内学校間での異動では、メールアドレスの変更はありませんが、機器を接続する設定は学校ごとに違います。ご不明な点は教育研究所までお問い合わせください。 |
■「ウィルスチェック」は簡単 ■「子ども読書の日」を機会に ■理科研修講座アンケートより |
※職員室の環境から http://telecaster/teacher |
(指導主事:高木 TEL837-1338・一栁 836-2418・坂庭 836-6104)
研修セクション
校内研修のあり方を考える
教育研究所が企画・運営する研修講座には、各学校を取り巻く様々な教育課題に対応することを目的として、「教育課題研修」「教育相談研修」「夏季研修」を設定しています。
ところで、研修実施上の課題として、上の数字からも読み取れるように,課業期間中の研修に参加しにくい状況が見受けられます。その対策として教育研究所の研修方法も検討していかなければなりません。 |
これまでにも、校内研修で、各学校が自校のニーズに合った講師を招聘する場合がありました。昨年度、本市は横浜国立大学と協定を結びました。このことは、昨年6月に学校教育課より文書連絡をしたとおりです。そして今年度、この協定により講師招聘を行い、校内研修を実施した学校が、14校ありました。 今後、従来からある教育研究所の研修講座については内容を精選し、より充実したものを目指していきます。一方で、各学校での校内研修がより自校のニーズに合ったものになるように、教育研究所としてできる限りのバックアップをしていきたいと思います。具体的には、各校校内研修の企画運営のアドバイス、講師紹介、また出前研修を教育研究所が担うといった支援ができると考えています。また、あくまでも、会場校の校内研修であることが基本ですが、横須賀市としての研修の充実を考えた時,他校の職員への公開なども考えていただきたいと思います。 特色ある教育活動による学校づくりを進めるために、こうした方策も有効であると思われます。次年度、これらのことを視野に入れながら進める予定です。 |
(指導主事 木屋 椿本 北村 北原)
■連載コラム <学校と著作権2> ~学校における例外措置とは~ 著作権は英語でcopyrightといいますが、文字通りコピー(複写)が行われるとき、原則そこには権利(right)と義務が発生します。しかし、学校現場はコピーなくしては成り立ちません。そんな中で、著作権を真面目に守れば損をする、これまでの教育活動が制限されると考えているのであれば、それは大きな間違いです。 |
こくばん
不登校を考える | |
学校における不登校児童生徒へのかかわり方 | |
不登校の児童生徒とかかわりを持つようになってから十数年。今はカウンセリングの場で会うことこそ少なくなったが、それでも適応指導教室や学校で検討ケースとして見ていることは多い。最近の不登校の事例を見ると、その背景も随分様変わりしたなと思う。思い出に残った事例を紹介しよう。 A子は中学2年生の2学期から学校に行っていない。親はあちらこちらの病院に連れて行き、やがてカウンセリングが必要であると言われ、教育相談室に連れてきた。顔にそばかすがあって、どちらかというとボーイッシュな感じのA子。動物が大好きで、何も話すことがないときは二人でだまって猫のパズルを作ったりもした。カウンセリングルームに慣れた頃、A子は同性の友人とのあわなさを語り始めた。4年生頃から友だちの話題が変わった。みんなどんどん女の子になって、自分はとてもついていけなかった。また、自分の家は裕福ではないから、親から公立学校に入らなければ学費を払えないと言われ、プレッシャーが大きいことや将来は大学に入って気のあった友人と哲学を語り明かしたいなど、多くの夢も語ってくれた。 この事例を整理すると大きく2つの特徴がある。一つは、A子の心の中には友人との明確な葛藤があった。もう一つは、不登校になった時のあわてぶり、進学についての負担などに代表されるような親の反応の強さである。 |
当時、日本社会はまだ高度成長期に向かっているころで、教育資金の確保は大きな課題になっていた。「不登校」で親子ともに苦しみを味わったのである。しかしその中でやがてA子は再登校を試み、見事に高校に合格するのである。最後まで目標をしっかり持ってがんばりきる強さがあったのである。 最近、「芯」のある「不登校」になかなか出会えない。無気力、無感動に日々を過ごし、張り合いのない学校生活を過ごしているうちに勉強が遅れ、友人も離れた。面白くないと感じているうちにだんだん足が学校から遠のくタイプや、対人面での意志疎通性はもともと悪く、友人と接するよりも自分のペースでやる方がいいと登校を避けるタイプ。あるいは発達に軽度の偏りがあって、学校集団になじまないところから不登校になった例もある。 いずれの例も、昔のように心に強い葛藤を持つことはなく、そのため立ちなおりたい意欲も弱い。そういう意味では、最近は教師である我々が学校の良さをアピールし、我々自身が愛情を向けないと簡単にドロップアウトしてしまう子どもが不登校になっているのである。この場合、愛情を込めた適切な登校刺激はむしろ本人の単調な生活に一石を投じ、自覚を促す効果があると筆者は思う。 |
◆子どもたちへも感謝
学年末のこの時期は、子どもたちの成長した顔を浮かべながら、教師にしか味わえない“ささやかな達成感”を感じられる時です。また1年間をふり返ってみて、子どもたちがいなければ体験できなかったことや気づかなかったこと、子どもたちから教えられたことがいくつも浮かんできます。これらが私たちの次へのエネルギーであることは確かでしょう。
“夢や希望や未来”を語れる学校づくりをめざして、教職員もお互いの頑張りを認め合い、子どもたち一人一人の顔を思い浮かべて年間反省や新年度の計画作りを進めていきたいものです。
更新日:2023年11月02日 15:21:25