月報 2004年度 2月号

平成17年(2005年)2月1日
編集発行・横須賀市教育研究所/代表・五ノ井文男
横須賀市久里浜6-14-3 / TEL(046)836-2443(代)
(〒239-0831) FAX(046)836-2445  
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巻頭


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ネットワークの見直し

「リンク切れ」という言葉を耳にすることがあります。インターネットで情報を検索し、目的のホームページをクリックすると、すでに閉鎖されていたり、アドレス(URL)が変更されていて、「ページが表示されない」ことがあり、この状態をリンク切れと言います。このリンクはインターネットの特性の一つで、一つのホームページにある情報は少なくても、他のホームページ・情報へのリンクが張ってあることで、全体としては膨大な情報源になっています。さらに関連する情報が相互にリンクし合い、次々と拡張していることもその特性です。
 情報化が加速する中で、インターネットという仮想の空間ばかりでなく、現実の社会生活の中でも様々なリンクがネットワークとして、人と人のつながりを加速しています。異業種交流などの組織間のものから、利害関係を越えた個人と個人のものまであります。また、地域社会の中でも、「新しいネットワークづくり」が様々な形で進められています。
 学校でも児童生徒に対して学習指導を行う時、地域の方々に地域講師・アドバイザーとして、協力を頂くことが多くなりました。これも複数で取り組むことによって、それぞれの指導者の持つ特性を引き出すという、ネットワークの例と考えることができます。
 また、運動会などの各種行事にPTAとして、保護者の方々の支援を頂いていますが、企画・運営面での協力が中心で、学習指導の場面で支援を頂くことは稀でした。しかし、「総合的な学習の時間」で地域の学習をテーマに取り上げた頃から、地域のことを熟知している方や伝統を受け継ぐ方などを講師として依頼したりすることがより一層多くなりました。
これも学校と地域が、新たなネットワークを創り出した成果と考えることができます。
 この他にも、学校図書館ボランティアとして、本の修理や掲示物の作成という協力から一歩踏み込み、読み聞かせや紙芝居をするなど、積極的に児童生徒に関わる活動も多くなっています。
 このような動きも年数を重ねてきましたので、学校・教員もネットワークを再構築していく必要があります。
 さらに、初任者研修指導教員・司書教諭・特別支援教育コーディネーターなど、ここ数年間だけを考えても、様々な課題に対応するため、新しい分掌が位置づけられています。新しい仕事は今までとは異なり、それぞれの個々の仕事で完結するものではありません。例えば、司書教諭については、学校図書館の運営者と単純に捉えてしまえば、従来の図書館担当者と変わるところはありません。しかし、司書教諭が発令された趣旨を考え、図書館を効果的に活用していく中心者と捉えれば、教育課程担当者・学習指導担当者・担任等とネットワークを創っていくことが求められます。
 学校はこれまでも、保護者や地域の方々と協力し、児童生徒を指導してきましたが、これからも積極的に情報を交換しながら、新しいリンク先を模索するネットワークを見直していくことが必要不可欠です。

(指導主事 一栁直行)

 

特集


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小中連携の実践と効果
夢をつなぎ 学びをつなぐ 小中交流授業で得たもの
桜小学校教諭 山元悦子 馬堀中学校教諭 石井美乃
小・中学校が同じ敷地内にあるので、お互いの姿が自然と目に入ってくる。今までも、年間行事に組まれて交流してきたものがいくつかあるが、隣同士であるにもかかわらず、教員同士は顔も名前もあまり知らず、お互いの児童生徒の実態を話し合うこともほとんどなかった。今年度は、すでにそれぞれの学校で教育課程が編成されていた上でのスタートだったので、活動は無理をしないで、職員の交流をメインにした。
 (1)教科の年間計画を作成し(カリキュラム編成の第一歩として)、これを利用してお互いの授業参観をした。小中のつながりや他教科との関連・内容の重複・小学校でしっかり培っておくべき内容・指導法のコツ・子どもたちの様子など改めて意識させられ、大変有意義だった。(2)合唱コンクールには、3年目の参加をした。「中学生になったらあんなふうに歌いたい・中学生の前で歌えてよかった」など子どもたちの感想から、中学生へのあこがれや場を共有できることの喜びが伝わってきた。(3)9年間を通して、子どもたちにどんな力をつけたいのか検討している。
 9年間の義務教育の学びを充実していくために、小学校6年間で積み上げた学びを土台として中学校へつなげていく必要がある。そのために、小中が同じ視点を持って子どもたちを継続的・発展的に丁寧に指導していくことは必須である。そうすることで、小学6年生から中学1年生へのステップをスムーズにつなぎ合わせることができると考えている。子どもたちの活動も交流の域を脱していないが、両校の良さをプラスできるような場の設定を模索しながら、「学び」をつなぐことができる連携のあり方を探っていきたい。
 最近「確かな学力」を定着させるために小学校から中学校までの9年間を見通した「学びの連続性」が大切であると言われており、本校においても様々な形で小中連携に取り組んでいる。
 体育科では中学生と小学生が一緒にマット運動を楽しむという取り組みを2つの小学校で試みた。一つは大塚台小学校で行われている夏のセミナーへの参加で、小学生と中学生の合同のグループによる「集団マット」の演技創作を行った。もう一つは、選択の授業時間を利用し、中学生が馬堀小学校の体育館へ出向き、小学生に技のポイントや練習方法を教え、一緒に練習をするという交流授業を行った。
 これらの取り組みは、体育科の教科目標の一つである「評価活動の充実」を発展させるためにとても効果的であったと考える。中学校の体育授業においても、自己評価能力を高めるための教え合い活動は行っている。しかし、年下の小学生を教えることによって、その小学生の意欲や技の出来栄えはすべて自分の責任であるかのように捉え、普段の授業以上に教え方や励まし方などを工夫している様子が伺えたのである。小学生への関わり方を工夫することによって、小学生の喜びや悔しさを共有し、自分の学習にフィードバックしていたことが大きな成果であった。
 今回の取り組みをとおして、小学生には体を動かすことや仲間と一緒に取り組むことの楽しさを味わってもらえたように感じる。更に工夫を凝らし、小中互いに技能や意欲を高め合えるような学習を展開できれば、小中連携の本来の目的である「学びの連続性」に近づけるのではないかと考えている。

 

教育史


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横須賀教育史

【写真・資料に見る横須賀の教育のあゆみ 12】

 

教育研究所と活動・刊行物
 横須賀市教育研究所(以下、研究所)の沿革の一部と主な刊行物等の面から紹介したい。

◆横須賀市教育研究所の推移
 本研究所は、新学制がスタートした翌年の昭和23年9月に市立田浦中学校内に、県下では横浜市に次いで設置された。翌年6月に旧陸軍施設を利用した坂本に移転し、学校教育や地域に対して教育の理念や意義を普及し、理解を深める役割を担ってきた。研究所の大きな転機は「横須賀市教育研究所条例」が施行された昭和39年9月であった。独立機関として専任の職員も配置されて、企画運営面でも自主的な活動が本格的に機能し始めたのである。
 昭和45年12月に成立した「横須賀市都市基本構想」に「本市教育活動の中核となるべき教育センター設置」が明記された。昭和46~47年度には市民各層の意見、学者・専門家の指導助言をもとに、教育センター設立構想が練られた。
 当初の建設計画が用地難等で繰り延べになったが、教育改革進展の中の昭和60年1月に施設が完成し、現在地に移転した。以後、横須賀の教育活動の発信地として、時代の要請に応えられるよう所内の組織、運営面の改変を逐次実施してきた。
 平成13年4月より、本市の中核市移行に伴い、県費負担教職員の研修は市で実施することとなった。教員研修・教育調査の中核的センターとしての役割と期待が一層大きくなっている。

◆定期刊行物にかかわって
【月 報】独立した教育センターとして歩み始めた昭和39年10月に「研究所月報」「教育研究資料月報」の月1回の発行が始まった。用紙不足から3人に1部の割で配布されていた。B5版6ページのガリ版刷り月報は昭和41年3月第18号まで続いた。

 


 

昭和42年度の各号には、女性教師論・教科書論・現代子ども論・しつけ論・学力論・指導主事論・校長論・教頭論・教師論と題して熱く論じられている。この時期の月報には、横須賀市長や中学生、教職員組合委員長などの文も掲載されている。
 何回かの内容や装丁の改良があり、現在のA版構成になったのは、平成7年第367号からである。
【所 報】昭和23年11月、ガリ刷りの広報誌「月報」創刊号が刊行された。しかし、予算や印刷など諸般の事情で毎月の発行は困難となり、翌年7月第6号から「所報」と名を換え、年2回発行となった。その後、昭和27年度第13号以降は年度末に一回発行されるようになった。
 現在の所報は一年間の日本の教育の概観や横須賀の教育(子ども・教師・教育行政)、研究所の各種事業、指定研究、教科・教科外各研究会の活動、教育行事、教育年表等を一冊に集約した貴重な資料となっている。時代の状況によって構成も変化してきたが、昭和42年度第29号から現在の装丁となった。

(教育史・図書資料室担当 齋藤 紘征)

 

事業 図書・資料 昭和23年9月~ 研修 小学校理科実験・教材講座 昭和36年5月~ 667回
教科書センター 昭和23年9月~ 読書会 昭和40年~平成11年度 578回
教育相談 昭和24年6月~ ゼミナール 昭和43年~平成12年度 479回
視聴覚ライブラリー 昭和26年4月~58年9月 刊行物 自由研究・研究発表集録 昭和24年9月~  43号
理科教育 昭和36年4月~ 学校文集(小・中別冊) 昭和25年11月~  72号
情報教育 平成2年4月~ 図書ニュース 昭和40年~55年度 169号

 

※視聴覚ライブラリーは市立図書館に移行
※研究発表集録No.12~No.34小中学校別冊

 

研修セクション 


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2月の研修講座案内
 

☆基本研修
◎初任者研修
8日(火) 13:30~17:00  第1研修室
実践報告会
・実践報告書に基づく班別協議
・閉講式

☆専門研修
◎初任者拠点校指導教員研修
15日(火) 9:30~17:00 会議室 
拠点校指導に関する研修
・実践報告
・情報交換

 

~21年次教職経験者研修を終えて~

私が実行しようと決めたことは
○子ども(保護者)のニーズにこたえる○今までの教育実践のもと、さらに三浦半島におけるビジネス教育において全力を尽して努力していきたい
○『学校』として必要なことは何なのかの精選
○何を残して何を変えていくべきものなのかを考えていく
○本当に興味のある分野の研修に努める○総合高校を中学生のあこがれの学校にする努力
○自己の教育技術を高めていくとともに、学校全体を意識して、仕事をしていく○子どもの心により添える教師でありたい(弱い者、できない者、悲しい者の心をいつも感じられたらいいと思う)

 教育研究所の研修セクションとしては、学校内における児童生徒指導・教育相談をはじめ、学校経営に関する研修など、今後よりいっそうの充実を図っていきます。

21年次教職経験者研修が1月6日に終了いたしました。21年次教職経験者研修は、今日的教育課題への取り組みに対する意欲を高め、教育実践の検証と学校運営に積極的に関わる視点を身につけることを目的とした、年間7回の研修です。  今年度の受講者からは、以下のような「ふりかえり」を得ています。

私にとって必要だとわかったことは
○広い視野を持つ
○学校の状況を変える中心になる
○自分の持ち場プラスアルファを意識していく
○自分自身の成長。それが子どもにとっての環境整備になる
○学校運営への積極的な参画
○自分自身の立場というものに対する自覚
○自分の教育実践だけでなく、全体の動きの中で自分のあり方を検討しながら進む
○教科指導に対する意識の向上
○世の中の流れを知り、学ぶ
○校内での21年目としての動きをとるように努める
○アンテナを高く持って情報収集・整理・活用を心がける

(指導主事 木屋・椿本・北村・北原)

情報セクション 


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■小学校に導入されているソフトウェアの紹介

忙しくて、小学校のコンピュータにどんなソフトが入っているかよく分からないという声がありました。以下にソフト名だけですが紹介をします。

 

算数
・小学校算数シミュレーション4.5.6年
・新しい算数基礎基本ドリル
・マルチあきんど・図形編・計算克服編*

 

国語
・小学校国語基礎基本ドリル
 

理科
・動画データベース
・マルチメディア図鑑 Navi3本パックA*
・植物の観察3*
・ステラナビゲーター*

 

社会
・WEB日本の歴史、日本の地理
・データマップ神奈川*
・横須賀市デジタル都市計画基本図
(インストールされている学校のみ)*

 

音楽
・たのしいおんがく2*
・音楽を作ろう2*

 

英語
・こりゃ英和!一発翻訳スクール Ver4.0
・SayHello

 

キーボード練習ソフト
・ケンチャコ大冒険ローマ字キーマスター*
・スペースキーボーダー2

 

ワープロソフト
・一太郎Ver.11*
 

HP作成ソフト 
・ホームページミックス
・ホームページビルダーVer.6*

 

画像編集ソフト
・PaintShopPro7J*
・Visual Shot*

 

統合ソフト
・一太郎スマイル(デスクトップ機)
・スーパーYUKI(デスクトップ機)
・ジャストスマイル(ノート機) 
・ジャストスマイル2@フレンド(ノート機)

 

生徒機管理
・SKYMENU Pro Ver,4.0


注:ソフト名の最後に*印のついているものはデスクトップ機には入っていますが児童用ノート機には入っていないものを示します。

 

■連載コラム<学校と著作権1> ~自分と他人を大切にすることを学ぶ~


 先月号で「学校における著作権教育アンケート」について述べましたが、今月号から何回かに渡って「学校と著作権」について連載をします。
 教育研究所では子どもたちの自主研究を集めた「児童・生徒研究集録」を毎年発行しています。その中で、ホームページの写真や文章の一部を使ったものが最近は目に付くようになりました。昨年1月に学校における著作権の例外措置の一部が、児童・生徒にも拡大されたものの、そのままでは印刷原稿として適切でない場合もありました。また、スクールデジタルコンテストへの応募作品の中に、フリーの壁紙素材をトップページに使用したものがありました。しかし、そのサイトではwebページとしての使用は禁じていることがわかりましたので、こちらで一部手を加えさせていただきました。
 いずれも、制作者側が注意を払わなくてはならない例ですが、これまでの学校における著作権教育が十分に行われてこなかったことの反省と、これからは不可欠になる指導であると感じました。
 著作権が大切なのは分かるが、大変難しいものと思っておられる方も多いでしょう。しかし、著作権教育を「自分のものと他人のものとを区別し、大切にする」ことを学ぶ機会と捉えていただければと思います。
 まずは教師が著作権について正しい認識を持つことが大切です。著作権についての全部を理解するのには時間がかかりますが、その基本となるポイントは多くありません。学校での具体的な事例をあげながら説明をしていこうと考えています。
 以下に紹介する2つのサイトは大人が見ても楽しく、理解しやすいものになっています。ぜひ1度ご覧になることをおすすめします

 

・著作権情報センター「楽しく学ぼう著作権」 http://www.kidscric.com/
・文化庁 http://www.bunka.go.jp/index.html(小学生・中学生向けソフトがダウンロードできます)

(指導主事:高木 TEL837-1338・一栁 836-2418・坂庭 836-6104)

 

こくばん


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不登校を考える

 登校支援の取り組みについて

田浦中学校校長 相澤 宏一
登校支援担当  山田 政昭

 本校における不登校の実態は、平成14年度までかなり厳しい状況にありました。各学年会でも、何とか不登校を少なくしていこうと努力をしていましたが、具体的にはほとんど担任に任されていたため、担任の時間的・精神的負担もかなり重く、関わり方もその担任の考え方や力量に左右されていた、というのが実情でした。
 このような状況の中から、平成14年度に「田浦中学校区小中連絡協議会」を立ち上げ、スクールカウンセラーをアドバイザーにして、不登校児童生徒の情報交換と対応について協議を重ねました。平成15年度には、前年度の協議をもとに、初期対応に重点を置き、学校現場の実態に即した「教職員のための対応マニュアル」をスクールカウンセラーの監修のもと作成することができました。また、平成16年度には登校支援担当を校務分掌に位置付け、組織的に取り組む努力を進めてきました。
 登校支援担当を中心とした取り組みとしては、教育研究所指導主事の指導を受けながら、職員の共通理解や意識を高めていくために、学年会を中心にしながら進めることにしました。
基本的な考え方としては、
 (1)長期の取り組みになるので無理をしない
 (2)学年の教師と養護教諭が参加する研修会の形で開く
 (3)専門的な知識を持った研究所指導主事に参加してもらう
 (4)現状報告で終わるのでなく具体的な行動を考える
といった4点を確認してスタートしました。具体的には、各学年とも三ヶ月に一回研修会を開き、登校の可能性が高い生徒を数名選び、様々なアプローチを行ない、その結果どう変化したかを見て新たなアプローチを考えるという方法で取り組みました。
 登校支援の方法としては、生徒一人一人によって違いがありますが、担任の負担が過重にならないよう毎日の連絡は副担任も分担する、週一回程度の家庭訪問は必要に応じて複数で行う、訪問相談員に学習相談を依頼する、学習・相談の場として相談室・保健室・校長室・職員控室を提供する、生徒の状況に応じて外部機関との連携を行う、というようなことで、一人一人の生徒に応じた早期の対応を心がけてきました。
 不登校生徒への取り組みの成果は一朝一夕には上がらないと思いますが、日々の地道な努力を重ねてきたいと考えています。

 


こくばん
 

◆今の子どもだって

”子どもの実態”というと、学力の低下をはじめとして、本離れ、体力の低下、基本意識の欠如、はては、木登りができない、魚釣りをしたことがない、日の出・日の入りを見たことがないなど、諸調査をもとにマイナス面のことばかり紹介されています。
 確かに、昔の子どもに比べたら、できなくなったり、機会がなくなったこともあるでしょう。しかし、今の子どもだって優れていることがたくさんあるはずです。こんなことができるようになった、こんな力がついた、こんなことをしているなど、学校からもぜひ積極的に発信していきたいものです。

 

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更新日:2023年10月31日 13:42:34