月報 2003年度 3月号

 

平成16年(2004年)3月1日
編集発行・横須賀市教育研究所/代表・五ノ井文男
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巻頭


 

 

「教育の情報化」は何のために

 

 

 

 

◆ 具体的に何をするのか
 積極的・能動的な目標は三つあげられます。
 一つ目は【ITを活用して子どもたちに確かな学力を身につけさせる】です。先生方のプロとしての指導力や日頃の子どもたちとの関係が大切であることは言うまでもありませんが、(1)調べる場面(2)共同で作業する場面(3)表現する場面(4)ビジュアルで直感的に理解する場面等において、ITは「わかる授業」「興味を持てる授業」に貢献できるのではないでしょうか。
 二つ目は【ITを活用して保護者や地域との連携を深める】です。ITを活用して学校の説明責任を果たしたり、情報を交換したりすることは、子どもたちに学校が提供する教育の質を向上させることにつながります。自校のホームページを利用する方法も考えられます。市内の全校が自校のホームページを、自校で随時更新できるというのは、全国的にも大変先進的な事例なのです。ぜひ、活用してください。
 三つ目は【ITを活用して事務処理の時間を減らし、子どもと共に過ごす時間を増やす】です。迅速・正確な情報処理はITの最も得意とするところです。セキュリティーに充分配慮した上で、多いに活用して下さい。

 

◆ コンピュータのこれから
 まだまだ、不充分で安定しない面もあるITです。イライラさせられる時もあります。操作が苦手だという方もおられるでしょう。今まで、述べてきたような場面でほんのちょっと勇気を出して、ご利用になってみてはいかがでしょう。

 

(指導主事 高木 尚)

◆ コンピュータのこれまで
 本市の学校におけるコンピュータの整備は、平成2年(1990年)から始まりました。
 それから約15年。コンピュータをはじめとする情報関連機器は急速に進歩しました。今年1月末の総務省発表によると、我が国のインターネット利用人口は約7,000万人を超え、さらに増える勢いだそうです。コンピュータ本体も機能分化され、小型・軽量化して普及するといわれています。高度情報化社会が、発展のペースを加速していくであろうことは自明のことです。
 本市でも、昨夏の小学校コンピュータ教室の整備により、私立学校のすべての児童生徒学習用コンピュータが、100Mbpsの高速でインターネット及び横須賀市・葉山町・三浦市に跨るイントラネットを利用することが出来るようになりました。

 

◆ コンピュータをどう活かすか
 文部科学省は、平成17年度までに(1)全ての公立学校のすべての授業において、コンピュータやインターネットを活用できる環境を整備する(2)各普通教室等にコンピュータ・ネットワークを整備する(3)全公立学校の教員がコンピュータを用いて指導出来るようにすることを目標としています。
ただでさえ、学校では解決に向けて取り組みたい課題が山積しています。いづれは、コンピュータが教室に導入されます。この流れをどう受け止めていったらよいのでしょう。「世の中は情報化がすすんでいる。だから、学校もそれなりに乗り遅れないように、教育の情報化を進めなければならないのだ。」というような受け身の姿勢ではなく、情報化によって、「子どもたちを成長させたい、学校をこう変えていくんだ。」という情報化に対する積極的・能動的な意識を持つことが、大切になってくると思います。

 

 

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特集


 

今、学校では~職員室から~  

 

 

実感ある学びから
生活への帰着へ

 

 

 

開かれた学校は、
開かれた職員室から

 

長浦小学校  教諭 志村 和彦

 

 

岩戸中学校  教諭 小板橋 貴久

 

 新教育課程の実施により、以前にも増して「実感ある学び」が強調されています。「ああ、なるほどこういう事なのか。」という納得を伴った概念の形成を示している訳ですが、重要なことは「なるほどそういうことか。じゃあ、あのこともそういう事だな・・。」というように発展・転移し、ひいては学びが子どもの生活の中にとけ込んでいく事であると考えます。生活の中で学びが再現され、それがくり返される事で学びが「生きてはたらく力」に質を変えていくことでしょう。
 私はいつも子どもたちからのお話にせよ、日記や手紙にせよ、地域(子どもの生活の場)のニュースを大歓迎しています。今まで、子どもたちの地域にかかわる、いろいろな気づきや発見・思いなどが寄せられましたが、その中には学校での学習に関連したことやその発展が少なくありません。
 それらに共通することは、地域や子どもに身近な素材を授業に生かしたことや、体験的活動を通して子ども自ら問題を発見・解決させることができた授業であったことが挙げられます。インパクトの強い学びが、発展・転移するように学習と関係づけられた受け皿としての地域(子どもの生活の場)を意識して授業をつくることがポイントとなるのではないでしょうか。
 「カマキリのたまごをさわったらあったかい感じがしました。発砲スチロールみたい。寒さからまもっているんだと思います。」地域をさんざん歩いて昆虫の学習をした時の報告です。子どもの潜在している力に心が動かされました。

 

 社会に通用すべく学校の変化は著しいものがあります。その中で新教育課程の実施にともない、各学校では様々なシステムの改良や工夫がなされていると思います。
 本校は団地の中の小規模校です。その良さを生かすために「開かれた学校づくり」を積極的に進めています。その1つとして、地域の教育力の活用があります。本校ではゲストティーチャーによる授業(総合的な学習・選択教科・道徳など)、学校評議員による知恵袋の活用、地域や保護者との交流(あずまの会)等が単発的でなく継続的に行われています。これらは体験的な要素が強く、心に響く授業になると同時に、生徒の社会性確立の支援にもなると私は強く感じ始めています。
 この場合、キープレイスとなるのが「職員室」です。職員室の明るい雰囲気、元気な挨拶が飛び交う出入り口、多彩な人間層が違和感なく存在している状況が生徒指導も含めて大切になります。本校ではいつの間にか「第2の教師」が職員室にいます。我々教師や生徒たちは、時に身が引き締まり、時に雑談の中に親近感を感じています。
 この時代、教師に要求される教育課題は年々増えています。しかし、教師だけが教育者ではないことを素直に悟り、学校のもつ閉鎖的な体質とこだわりを捨て、情報の共有を意識したいものです。そして地域に対しての教育情報の発信、受信基地を職員室に求めることも新しい学校像のひとつだと思います。
 今年度より岩戸中に赴任した私自身、開かれた職員室の一員として地域・保護者・職員との共同作業やチームワークを大切にした教育実践にチャレンジしていきたいと思います。

 

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相談セクション


 

 

防犯対策の動向を探る

 

 学校の内外を問わず児童生徒にまつわる事故・事件は後を絶ちません。本年度各地区で行われた「児童生徒指導ブロック情報交換会」の情報では、「小学生(高校生も)の女の子が不審男に腕を捕まれ車のほうに引きずられた(未遂)」「小学5年女の子が『殺すぞ』と男に投げ飛ばされる。(犯人は不明)」「刃物男が地域にいる」「市内某交番の警察官が刺される」などが報告され、横須賀でも大変深刻な状況があります。
 先日、京都宇治小で起こった校舎侵入児童刺傷事件は、被害者をはじめ児童生徒、保護者、学校、地域社会に怒りと不安を与えました。この事件は、平成13年に起きた大阪教育大付属池田小学校の校内児童殺傷事件の教訓が生かされているかどうかをも大きく問われた事件でもあったと思います。
 宇治小は、防犯カメラや警報器も備えていたが、それでも男の姿に即座に気付くことはできませんでした。校長は、マスコミのインタビューで謝罪をしていました。学校管理下での事故は、常に厳しく責任を追及されるので苦しい対応ではなかったかと思われます。
 防犯カメラの設置は、「防犯カメラを操作する人的配置が組織的に完璧かどうか」という問題があります。勤務時間内に子どもの指導に関わっている時間および教材づくり、教育評価その他の事務処理等の職務がゆとりをもって遂行されつつ、日常的な防犯意識も高まっていることが基本的な要件ではないかと考えます。そういう視点から、宇治小の防犯カメラ問題は論じられるべきではないでしょうか。
 近年、「開かれた学校づくり」施策が全国的に進行している中、このような惨事の再発防止のため“学校を閉じる”方向にいってしまう

 

のではないかという懸念がありますが、文部科学省は、「地域に開かれた学校施設とは、不審者に対して何の備えもなく空間が開かれていることを意味するものではない」(「学校施設の防犯対策について」平成14年11月)とし、現在は、学校整備指針の見直しが検討されているそうです。しかし、ハード面の充実は迅速な指針や予算措置が必要となってくるので、今後の対応が待たれます。
 ソフト面での課題は、「日常的な注意レベルをどう維持するか」であり、「教職員にどこまで防御活動を求めるか」ではないかと思います。情報では、最近、大阪教育大の調査研究会は、「安全管理を教職課程の必修科目にする」、「安全管理の専門資格『学校安全管理士』(仮称)を創設し、資格者を各校に配置する」といった提言をまとめています。人的なソフト面をシステム化していこうという動きは注目に値するものではないでしょうか。
 横浜市伊勢佐木地区では、昨年某小学校に刃物を持った男が侵入する事件が発生したことを受けて、県内初の「スクール・モニター制度」を導入することが決まっています。
 「児童生徒指導ブロック情報交換会」で野比中学校から『野比中学校区危機管理情報伝達マニュアル』を作成した旨の報告がありました。日常的には「子ども110番」はあるものの、地域に不審男による刺傷事件があったので、更なる防御策を講じたそうです。特長としては、子ども110番の体制を生かし、小中学校は言うまでもなく幼稚園、保育園、地域の公的機関及び施設、更に地域全てのコンビニエンス・ストアと連携体制を強化していることです。「多くの目で子どもをみる」という意識づくり、組織づくりを大いに参考にしたいと思います。

(学校学級経営相談 大橋 倫人)

 

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 研修セクション


 

 初任者研修 拠点校指導教員

 

平成15年度から導入された初任者研修の新方式において、年間を通して初任者の校内研修を担当する指導教員のことです。初任者4人に対して1人の拠点校指導教員が指導を担当し、日々、初任者の育成に努めています。
 今年度、本市では、小学校5名・中学校2名の「拠点校指導教員」が配置されています。今後、2ヶ年計画で、すべての初任者研修の校内指導方式が、この新方式に移行します。拠点校指導教員の先生は、具体的に以下のように活動しています。
○ 初任者一人に対して、年間210時間(1日7時間:年間30週)以上の研修を行います。
○ 原則として月・水・木・金の4日間を研修日とし、初任者に対し研修を実施します。

 

○ 初任者の校内研修を実施する担当者であると同時に、初任者の育成について中心的な役割を担います。
○ 拠点校指導教員は本務校の職員です。初任者研修および指導を職務としますので、その他の授業・分掌等は担当しません。

 

 初任者の研修・指導は「拠点校指導教員」だけに任されるものではありません。校長先生をはじめ、コーディネーターの先生や初任者の所属する学年の先生などと連携しながら指導にあたることが必要です。
「拠点校指導教員」の職務内容をご理解いただき、互いに協力・連携しながら、全教職員で充実した初任者指導をお願いしたいと思います。

 

(指導主事:木屋・北村・椿本・望月 TEL834-9308)

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 教育情報セクション


 

■ 2400名の来場
 1月8日から15日まで開催した第14回横須賀市読書感想画展には、例年を上回る2400名の方々の来場がありました。各学校において、課題図書を利用した指導からはじまり、校内審査会、コンクールへの応募と、熱心な取り組みをして頂いた成果だと考えます。また、市審査会・感想画展の運営と、実に多くの先生方のご協力により実施することができました。ありがとうございました。応募する作品も回を重ねるごとに質が高まり、今年度の県審査においても多数の本市代表作品が入賞を果たすことができました。

 

 

■「子ども読書の日」に向けて
 
4月23日は「子ども読書の日」です。平成13年12月の「子どもの読書活動の推進関する法律」の制定以来、すでに3回目を迎えようとしています。4月・新学期は、新しい取り組みを始めるには絶好の機会です。この「子ども読書の日」を一つ目標にして、学級文庫を入れ替える・読み聞かせの時間を計画するなど、司書教諭、学校図書館担当者と相談して読書指導の計画を立てて下さい。先生方のほんの少しの後押しで、本の持つ魅力に興味を持つ子どもが増えるかもしれません。
 また、市の読書感想文コンクールに応募し、入選した児童生徒作品とその書評をまとめた「読書感想文集・第47号」を3月上旬には各学校へ届けますので、読書指導にご利用下さい。

 

 
平成15年度 横須賀市教育研究所長期研修講座の受講を終えて


鶴久保小学校教諭 遠藤 まゆみ


 「小学校教育におけるマルチメディアの役割」をテーマに、1年間研修にとりくんでまいりました。
 先生方には学期末の多忙な時期にもかかわらず、アンケートにご協力いただき、感謝しております。
 アンケート結果からは、予想以上にパソコンが活用されている実態をうかがうことができました。
活用の利点としては、子どもたちの学習意欲の向上につながるという声が多くありました。反面、操作上の問題などのほか、本当に学力向上につながるのかという疑問もまた指摘されました。
 確かに、パソコンがどんなに優れたツールであっても、教師の工夫なしに授業が成立しませんし、子どもたちの力を伸ばすこともできません。しかし、これまでの「手作りの教育」にパソコン等IT機器を有効的に加えたなら、そこには新しい授業の形が生まれてくるのではないかと考えました。
 そこで、社会科教育を中心に教材作りをすすめ、在籍校で授業実践にとりくんでまいりました。
 具体例として、横須賀中央地域の埋め立ての歴史をデジタル教材化しました。これによって、入手が困難であった資料の保存と活用が、非常に容易になります。例えば子どもたちは、一律のプリントを配布してもらうのではなく、複数の資料の中から自分が必要なものを選択して学ぶことができます。さらに、自分の選んだ地図をパソコン上で重ねてみるなど、新しい学習の形にとりくむこともできます。
 このような学習は、主体的に考えながら学ぶ力を育むものとして期待できることから、さらに研究をすすめたいと思います。
 初めて教室を離れて過ごした1年間を振り返ってみますと、長かったようにも短かったようにも思われますが、実に多くの方々に出会い、新しい考え方や技術に触れることができました。まさに「一期一会」の言葉そのものです。この感動を教室に戻っても忘れることなく、子どもたちと共に未来につながる授業つくりに取り組みたいと考えております。

 

(指導主事 : 高木 TEL837-1338 ・ 一栁 TEL836-2418 ・ 坂庭 TEL836-6104)

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こくばん


 

 不登校を考える

 

『話を聴く』ということ

 

 横須賀市適応指導教室「スペースゆうゆう」では、学習や体験活動などの取り組みを通して、不登校の児童・生徒への援助的な教育活動を行っています。ここでは“相手の話を聴く”という行為を大切にして、日頃から子どもたちに接するようにしています。私が教師に成りたての頃、先輩に話を聴くコツを尋ねたところ、“相手の目で見て、相手の耳で聴いて、相手の心で考える”と言われ、なるほどと感心しました。
 初期の面接において、子ども本人から不登校になった経過を尋ねることがあります。そんな中で場合によっては、教師への不満やクラスメートへの嫌悪感、あるいは保護者に対する甘えや反抗の言葉が出てくる時があります。
 例えば、「先生がうるさい」という言葉を聞いた時に一般的には“声が大きくて厳しく指導する先生”というイメージが浮かびます。しかし、今までの経験では、実際にお会いしてみると穏やかで優しい感じのする先生方ばかりでした。では、子どもが言っていることはウソなのかというと、そうではないと思うのです。実際にその先生が「うるさい」と感じたときがあったのではないかと思います。どんなときにそう感じたのか子どもの話をじっくり聴いてみなければわかりません。

 

 

 

 同様に、保護者へも同じように“話を聴き”ます。「ウチの子は臆病なのです」という言葉を聞いても、すぐに「そうなのか」とは思いません。具体的にはどんなときにそう思うのかを聞きたいのです。「相手の目で見る、相手の耳で聴く」ということのように思います。もしかするとその子どもが“臆病”なのではなくて、保護者が“子どもの臆病な面を嫌っている”ということに過ぎないのかも知れません。
 先日、教室に通うある生徒と話をしました。「先生、ひどいんだよ。お母さんが『高校に行かないと家を追い出す』って鬼のような顔で言うんだ。」と言いました。実際にどんなやり取りの中でそんな話になったのかわかりません。前後の話の流れがきっとあるのではないかと思います。本人には鬼のように“見え”、ひどい話だと“聞こえた”のでしょう。しかし、それだけではまだ話を聴いていません。「あなたはどう考えるのか。どうしたいのか。」そこを聴かないと、相手の心で考えるということにはならないと思うのです。“話を聴くということ”…簡単なようで、なかなか難しいことだと感じています。

 

(適応指導教室 落合 賢一)

 

入学や卒業、転勤、結婚‥。そんな人生の出発を激励する意味をこめてする贈り物のことを『はなむけ』といいます。
 昔、旅立つ人のほうへ馬の鼻を向けて道中の無事を祈った風習から『はなむけ』ということばが生まれたのです。紀貫之の『土佐日記』にも「船路なれども、馬のはなむけす」とあります。
 送る人、送られる人、時代は変わっても、その気持ちだけは変わらないようです。旅立ちを迎える教え子たちに、いつまでも心に残る『はなむけの言葉』を贈りたいですね。

 

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更新日:2023年10月31日 21:34:02