月報 2004年度 1月号

平成17年(2005年)2月1日
編集発行・横須賀市教育研究所/代表・五ノ井文男
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巻頭


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 変革のなかの教師

◆「ドッグイヤー」という言葉を聞いたことがあると思います。直訳すれば「犬の年」です。犬の寿命は12歳から15歳前後ですから、犬は人間の7倍のスピードで年をとり、人間の1年は犬の7年分にあたる計算になります。「ドッグイヤー」には、もう一つ意味があり、コンピュータ業界で使われます。この業界の進化のスピードが他の業界に比べて異常に速く、製品やソフトのライフサイクルは他の製品に比べると4~5倍短いのです。ですから、この頃の情報社会のスピードを「ドッグイヤー」と言うのだそうです。
 コンピュータの開発と情報化の進展が顕著になり始めてせいぜい10数年です。これを人間の寿命で考えると10数年の7倍、つまり100年近い年数が過ぎたことになります。ここ数年に100年分の問題が起こったと考えると、最近の社会の変化の速さや「何となくついていけないな」と感じる気持ちも理解できるような気がします。 
◆ここ1~2年の間に戦争・テロ・犯罪そして自然災害とこれまでには考えられないようなことが続けて起こりました。また、教育変革の動きも速く、今まさに学校や教員は大きな過渡期の時代にいるといえます。従来の仕組みが崩れ、新しい仕組みが次々に導入されています。
 主な施策を列記してみても、平成15年4月には、文科省の不登校問題に関する調査研究協力者会議「今後の不登校への対応の在り方について」報告(校内の指導、支援体制の確立、官民の連携)。12学級以上の学校に司書教諭を義務付け。教員の10年経験者研修を実施。6月には、いわゆる骨太の方針2003を閣議決定(公立学校の民間委託化などの検討を求める)。12月には、学習指導要領の一部改正を告示(学習指導要領の基準性の明確化、発展的な学習の導入など)。

 
 年が明けた平成16年3月には、中教審「今後の学校の管理運営の在り方について」答申(地域運営学校、幼稚園・高校の民間委託など)。そして11月には、文科相が義務教育改革案を公表し、中教審で検討を開始(教育基本法の改正、全国学力テストの実施、教員免許更新制などによる教員の質の向上、人事予算などの市町村の権限強化等)。等々  
◆禅寺の玄関に「看脚下(かんきゃっか)」の掲示があることがあります。<履き物を揃えて脱げ、禅は足下にある>という意味で、ひらたく言えば<足下に気を付けてください>との示唆です。しかしこれは、単に履き物の脱ぎ方だけを言うのではないそうです。観念や思索でなく「いま、ここで、自分は何を、どうすべきか」をとっさに見極めて実行すること、或いは「足下がしっかりしていれば不安はない」ということを「看脚下」と言うらしいのです。
◆学校教育全体が急激に変化しようとしていますが、教育は専門家としての教師の見識・技量によるところが大きいのです。教師は周囲の意見に耳を傾けるべきことには傾けながらも、右往左往せず、常に「児童・生徒が主役」という原点への立ち返りが大切です。どんなに時代が変わっても、変わらぬ教師の願いは、子どもたちが「よく分かった」「勉強が楽しい」と実感できる授業を展開し、一人一人の子どもに学習の充実感や成就感を与えることです。今こそ、教育の「不易と流行」を問い直し、教師一人一人が、何を、どうすべきかを考え、足下をしっかり見つめ、実践する熱意と力量が期待されています。
(所長 五ノ井文男)

 

特集


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座談会“心、体を鍛え、社会性を身につける…現代 若者像”
平成16年11月12日(金)  教育研究所会議室にて
○出席者 三宅 豊(池上中)/井上敦子(大津中)/高橋享子・戸丸一美(横須賀総合高)

 

司会:今の子どもたちは耐性や社会性が育っていないといわれる。日頃感じていることや、指導で心掛けていることをお話しいただきたい。

近頃の中高生の学校生活の様子を見て、気になること、変わってきたことは?
高橋:大正4年、夏目漱石が “心”の中で『現代の若者は忍耐がない』と著わしているが、若者に耐性がないのは今も昔も同じだと思う。
井上:我慢する気持が弱くなっている。3年前ともまた違う。幼稚っぽくもなっている。
三宅:我慢のなさは携帯電話の広がりからも感じる。学校で話さない友達や知らない人ともメールで話すようだが、連絡がないと不安が募るようだ。携帯電話の広がりで、今までなかったトラブルが生まれ、新たな生活指導が必要になってきている。
戸丸:中高校生はゲーム世代で、すぐ結果を求めたがる。途中でだめだとすぐあきらめ、リセットしてすぐやり直そうとする。また、本人は一生懸命やっているつもりでも、他人から見るとあまり努力をしていないよう見えることもある。
高橋:人間関係が希薄になっていることが気になる。友達はほしいが、自分が傷つきたくないので、これ以上は踏み込まない距離をとり、本当に言いたいことを心に押し込めてしまっているようだ。

 

高橋先生 井上先生

三宅:中学に入学した当初は、叱られることになれていないのか、注意するとすぐにしょげて泣いてしまう子もいる。自分の分が悪いと、身を引いてしまう子が多いが、部活動では負けてもそれを乗り越えようとする子はさらに上達していく。
戸丸:横須賀三浦地区の高校の部活動への入部率は、学校によって様々である。放課後の活動に多くの生徒を参加させ、高校生活を充実させてもらいたいが、横須賀はアルバイトのできる場所が多いのも影響して、入部率が低いところもある様だ。


司会:子どもたちに耐性や社会性が欠けるようになってきた原因は?今後の見通しは?
髙橋:バブルの崩壊が社会の価値観を変え、大きな影響を与えている。それまでは努力すれば報われ、認められる時代であったが、自分の力ではどうにもならない、見通しの持てない時代になってしまった。見本になるべき大人に元気がなくなり、子どもが夢をもったり語ったりできなくなった。
井上:経済的な不安で家庭環境も変わった。子どもにかまっていられない現実もある。
三宅:家族関係が壊れたり、複雑な家庭環境で生活したりと、子どもが様々な不安の中で生活している例も多くなった。難しい状況は続きそうだ。
戸丸:マスコミで取り上げられたものや、テレビドラマの影響も大きい。ドラマの登場人物の格好よさや持物等をすぐに真似して、努力なしに思う結果を簡単に得られると錯覚してしまう。できるだけ楽をしてよい結果を得ようと考える傾向がある。社会の厳しさは言葉ではわかるが、責任の取り方にしても、即やめればいいと思ってしまう。 

 


司会:心、体を鍛え、社会性を身につけるために学校生活の中では、どんな場面で、どう対応?
戸丸:社会性という場面では、部活動は先輩後輩の関係などを鍛える良い場面だが、だんだん入部数は少なくなっていきそう。部活動では厳しい上下関係があるわけではないが、同学年とのつき合いが中心になる傾向が見られる。
高橋:先輩に何か聞いたら怒られると思っているのか、接することに腰が引けている。失敗やいやなことを避けることにつながっている。
三宅:中学校の部活動で初めてやる種目もあるので、人間関係の指導は進めやすく、何とかできているつもり。技術指導に専門性を求められる点もあるが、生活指導上の顧問の姿勢が大切だろう。
井上:中学に入学する時に中学生は怖そうと言いながらも、仮入部をして、先輩がやさしそうということで入部を決める生徒も多い。
高橋:部活動以外では、授業やHRなどあらゆる場面で『人は人の中でしか生きられない』という視点で教材を取り上げている。総合高校では来年からIT化がさらに進み、朝の連絡はパソコンで各自確認するようになるが、何かしら所属 感を持ちたいらしく、HRはなくさないでほしいという声もある。IT化が進んでも、大事なことは生徒の顔を見て指導したいし、学級通信などはいつまでも自分の言葉で、手書きで、続けていきたい。
戸丸:文化祭の取り組みで意外な生徒が遅くまで残って活動している姿を見ると、今の生徒達も満更でもないという気がする。ステージ発表をみんなで創りたい。球技大会などで他のクラスと戦いたいなど共有できる場面を求めている。しかし、今は社会性を育てるべき学校の変容や授業時間、施設面の関係から生徒の要望に応えられない状況にある。
高橋:中学校の先生の学級づくりへの努力のあとがうかがえ、クラスで活動することを楽しみにしている生徒が多い。合唱コンクールの練習でも、中学校の時の様子の自慢をし合っている場面を見たりもする。世の中が急激に移り変わるが、子どもの心情で変わっていないこともある。変えてはいけないものとしては、小・中・高校の連携がある。
三宅:行事に関していえば、他の中学校と同様に本校でも行事減の方向にある。本校では文部科学省の学力向上フロンティア学習を通して子ども同士のつながりを作っていくことに全校体制で取り組んできた。各教科のグループ学習を通して、教えあい、意見の交換などをして、男女も仲良くコミニュケーションを図れるようになってきた。
井上:小さなことだが、日常の15分のHRや清掃活動などの場面を大事にしている。学校生活の一日を通して仲間のことを思いやったり、互いに手伝ったりと、毎日やっていることだからこそ生徒達にも考えさせられる材料は多いと思っている。
戸丸:社会性が大事といわれているが、近頃気になるのは、プライバシーのことが言われ出してから、お互いに立ち入らなくなったことがある。ふだん、相手のことをわかろうといろいろ話をしていたのに、聞かなくなったし、話さなくなっている。教師同士だけでなく、生徒に対しても遠慮するようになっている点もある。生徒はこちらからアプローチすると、心を開いていろいろ話をしてくれるものだ。

 

司会:教師自身の姿勢、心構えとしては?
三宅:学校でできることとして、あの先生みたいになりたいと思われるように、頑張る姿を見せていきたい。そういう責任があると思う。そのためにも、子どもに言うことは小さなことでも教師がまず実行していくようにしたい。
戸丸:今は教師が生徒から評価される時代になった。『尊敬する人は担任(または顧問)の先生』、と言ってくれる生徒を一人でもいいからつくりたい。

三宅先生 戸丸先生

 

井上:生徒一人一人といろいろな話をしていきたいし、これからのことも一緒に考えてあげたい。遊んだりもしたい。また、そのように考えているこちらの気持ちもわかってほしい。
高橋:経済状況の厳しい昨今は、教師に向ける目も厳しく、いろいろな面で注目されている。しかし、子どもの思いは変わらない面もあって、捨てたものではない。子どもの感性を信じたい。今も昔も変わらない心意気でがんばっている先生もたくさんいる。
三宅:現在は人手も少なくなった上に、教師にゆとりがなく、生徒の直接指導以外に向けなければならない時間が多すぎる。こちらが一人一人に時間をかけて対応すれば、生徒達もそれに応えてくれ、信頼関係も深まっていくはず。
高橋:教師の仕事は時間がかかり、明日すぐ結果が出るものばかりではない。10年先、20年先を考えながらやっていることが多いので、そこまで見てほしい。今、話題になっている評価についても、人が人を評価することの難しさを感じている。

 

司会:学校では課題が山積しているようですが、そうした中で大人の手本として先生を見てほしいという気概、中学校の指導の成果か、みんなで一緒に活動したいという高校生の心意気を、大変心強く、うれしく感じました。ありがとうございました。

 

情報セクション 


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■地域イントラを学習に活かす
 横須賀市、三浦市、葉山町の全部の学校は教育イントラというネットワークで結ばれています。 
 その中の「学びの泉」会議室(フォーラム)を活用した授業が、昨年11月三浦市立上宮田小学校で行われました。「交通事故をやっつけろ」を年間テーマにした、6年生の総合的な学習の時間での利用でした。自分たちの意見だけでなく、会議室での池上小学校、諏訪小学校、剣崎小学校からの意見や資料をもとに活発な授業が展開されていました。
 授業に活かせる“道具”として、コンピュータやネットワークを使った素晴らしい実践でした。
 「学びの泉」には子どもたちが、情報のやりとりを自由にできる掲示板や、会議室があります。
 これらを教科学習等で組み込むことで、子どもたちの学習意欲と学習効果を高めることができ、実際の体験を通して、“情報モラル”を学ぶ機会ともなります。横須賀市においても先生方の積極的な利用をお願いいたします。

 

■学校における著作権について
 昨年12月初め、“著作権について教える立場にいる教師が、著作権について良く知らない”実態があるという報道がされました。これは著作権情報センターや文化庁などが行った「学校における著作権教育アンケート」の結果について述べたもので、著作権の例外規定を知っているのは1割であるとしています。
 このアンケートの自由記述の中で「ほとんどの教員は、言葉は知っているが詳しいことまでは分かっていません。これからの時代には欠かせない分野だとは思いますが、どこから取りかかってよいものか分かりません。」「授業や教材研究のためのパソコンのスキルアップに重点があり、著作権の問題まで教員のレベルが追いついていないというのが現状です。」という意見があり、ほとんどの教師が著作権を知ること、教えることについての重要性は認識しつつ、できていないのが現実ではないでしょうか。

  学校でのインターネット活用が広がることに伴い、著作権に関する知識の重要性は高まっています。研究所月報の昨年1月号にも参考となるサイトを紹介しましたが、文化庁のサイトからも様々な資料や学習用ソフトがダウンロードできます。
 ぜひ一度こうしたサイトを覗いて下さるようお願いいたします。
(文化庁http://www.bunka.go.jp/index.html)

 

■読書感想画コンクールの開催について
 昨年12月1日横須賀地区読書感想画コンクール審査会が実施されました。今年度も800点を超える応募があり、この中から神奈川県への審査会へ進む50作品と市の審査を経て第15回横須賀市読書感想画展へ展示される作品が選出されました。
 審査会では、年々応募数が増えてきていることや、テーマとなった本の内容をしっかりと読み込んで表現している力作が多いことが、話題となりました。

 



【写真:平成15年度読書感想画展】

 

入選した作品は、次の日程で展示されます。
○第15回横須賀市読書感想画展
会期:平成17年1月7日(金)~13日(木)
   午前9時から午後6時まで
   (12日は休館日 、13日は午後3時まで)
会場:横須賀市文化会館第1市民ギャラリー
   入場無料
※10日は成人式が行われますので、混雑が想定されます。

(指導主事:高木 TEL837-1338・一栁 836-2418・坂庭 836-6104)

 

研修セクション 


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1月の研修講座案内

 

☆基本研修

◎初任者研修
  25日(火) 13:30~17:00 第1研修室 
  ・講演  「人権・同和教育の実践」神奈川県教育庁人権同和担当主幹 小宮 龍一
  ・グループ協議

◎11年次研修
  6日(木) 15:30~17:00 第1研修室
  ・講演「社会から見た学校教育」西建設株式会社代表取締役  西 一雄
  ・社会体験研修実践報告研究協議

◎21年次研修
   5日(水)   9:30~17:00  第1研修室
   ・実践発表
   ・各自の取り組みに関する研究協議


☆専門研修

◎登校支援担当者研修
 18日(火)15:30~17:00 総合福祉会館4階会議室
  ・効果的な保護者支援のあり方
  ・今年度の不登校状況と来年度の不登校対策
  ・グループ別情報交換・協議「校内不登校対策成果と課題」
       教育相談コーディネーター
       教育相談担当指導主事・訪問相談員


☆その他の研修

◎教育課題研修
  28日(金) 15:30~17:00 第1研修室
  「よこすかの子ども」
  岩戸小学校教諭     津島 利光
    北下浦小学校教諭  黒田 雅子
  大津中学校教諭     清宮 律子
  久里浜中学校教諭   原崎 陽一

◎教育相談研修
  14日(金) 15:30~17:00  総合福祉会館 4階会議室
 事例研究会
  「保健室で関わった気になる子ども」不入斗中学校養護教諭 佐藤 敦子



~初任者研修の様子~

ろう学校・養護学校のご協力により、校外研修を実施いたしました。先生方の様子や実習・体験を通して、教師としての原点を再認識することができた貴重な時間でした。感想の一部を紹介します。


 《ろう学校》~授業参観・実習(体育)等~
○たった15分かと思っていた自立活動だが、先生が一人一人を丁寧に、根気強く繰り返し指導されていたので、毎日の積み重ねで大きな力になると感じた。
○話し方・ジェスチャー・表情などを大きく使っている先生を見て、見習う点が多かった。お互い目をしっかり見て初めて、コミュニケーションがとれることがよく分かった。
○最初はどうやってふれあっていいのか戸惑ったが、時間が経つにつれそれは消えていった。どの子も表情豊かで教師としての自分は果たしてどうなのかと考えさせられた。
○「表現」活動を通して、自分が普段いかに言葉だけで伝えようとしていたかが分かった。自分の表現力や気持ちを伝える手段を見直していきたい。
○本人の自立と共生についての内面を養っていくことが大きな教育の使命かとも思った。


 《養護学校》~授業体験・摂食指導等~
○小麦粉と水を混ぜてこねるという活動を体験し、自分の手で感じたことが大きな勉強になると分かった。
○先生が全てのことをするのではなく、一人一人に自分でできることは自分でしてみようという姿勢で接していたのがとても印象に残っている。
○給食では、個に応じた献立、食器など全ての部分に配慮がなされており、特に調理員さんの手間と心をみることができた。
○先生方が一人一人の子どものことをよく理解されており、その子のその場面に一番適した援助をされていた。
○私のクラスは37人、全員とかみんなという言葉でくくってしまっていたが、本当は一人一人違うんだと思った。
○学校全体が一つにまとまり子どもたちのために働いているのがよく分かった。教職員の方々、子どもたちがとても明るく、それによって学校全体が本当に明るかった。


(指導主事 木屋・椿本・北村・北原)

 

こくばん


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不登校を考える
 我が校の不登校対策
 全校10クラスで30人の不登校生徒がいる状況は、どう考えてもいただけない。将来の社会的自立のための基礎を作る重要な3年間、これだけの数がいる状況はそのままにはできない。なんとか解決したい。本校でも2年前までは不登校生徒に関わるのは担任が中心で、その関わり方は担任の意欲に任されていた。時々話題にはなるが学校としての組織的、計画的な関わり方がほとんどできていなかった。教員の不登校生徒に対する考え方、とらえ方もそれぞれで、「待ちの指導」に終始した。1年で少なくても半減はできないだろうか。不登校生徒の状況を過去5年にさかのぼって分析検討をするところから始めた。その中でまず分かったことは、30名の半数近くが生徒指導に関わる内容に起因して登校できていない事実であり、その解決方法として、卒業生と在校生との非行的なつながりを徐々に薄くしていくことを考えた。授業中に大きな音を立てて校内に何度も入ってくるバイク、夜11時過ぎまで体育館周辺に座ったり、寝ころんだりして喫煙、飲酒をしている卒業生を含めた不特定多数への対応では、彼らとの丁寧な対話を繰り返した。プールに勝手に入り込んでやりたい放題の彼らにも丁寧な対応と、約束事を作っていった。夜遅くまで多くの職員で関わった。こうした甲斐あってか、しだいにこれらの卒業生が来ることが減り、また職員とも以前とは違った気持ちのつながりができていった。
 この取り組みは在校生と卒業生との関わりを薄くすることにつながり、半年はかかったが確実に不登校生徒を生み出す原因が取り除かれていった。15年度末の不登校生徒の数は前年を5割削減し15人になった。

 15年度は不登校生徒削減のための生徒指導と合わせ、学校として不登校担当者を位置づけた。不登校生徒の状況を日常的に教職員全員が知る中で、担任、学年の取り組みが進められる組織作りも試みた。不登校生徒のカルテづくりからその活用を企画したり、生徒指導会議(週1回)、職員会議の議題にのせての検討などを行った。日常的には担任の家庭訪問に学年、また全職員の支援と協力が加わった。また、保護者の不安を和らげ学校とのパイプを日常的に保つために後期から毎月不登校生徒の合同保護者会を開いてきた。カウンセラーも同席し、常に時間を延長しての話し合いがされた。回を重ねるたびに保護者の数が増えてきたのも取り組みとして心強かった。
 16年度は12名の不登校生徒に照準を当て具体的な取り組みを進めてきた。昨年度は前向きに関わろうとするその切り口、指導の手立てで昨年度困った経過があった。そこで、特に今年度の取り組みの重点として、職員の不登校指導に関わる研修を実施している。毎回講師から多くの助言をいただき実践場面での活用がなされている。不登校生徒の人数はなかなか減らないが、以前にも増して教職員が生徒理解を深めている。
 不登校生徒の取り組みは中・長期的な視点を入れての取り組みも重要であるが、本校としては、小学校との学びの継続性を大切に現在取り組みを進めている。現在も小中連携のもとに多くの小学生との交流があるが、次年度から小学生が中学校に自由に出入りできるパスポートを発行し、日常的な交流の機会を増やす取り組みをスタートさせる。このような活動の中で新たな自分の居場所を見つけ、救われる児童生徒がきっといるだろうと考えている。

(坂本中学校長 鈴木 明)

 

こくばん
 

 ◆新年を迎えて
  
 大きな節目の時ですから、去年の自分から新しい自分へ“変身”しようと、密かに考えている子どもがたくさんいることでしょう。折々の節目の時に、一人一人のそうした心情を把握して、夢や希望、未来を一緒に語りあって、応援していきたいものです。

 

 ◆ひと言が次の活力に 
 
 研究授業や各種行事、児童生徒指導などが終わって、「ご苦労さま」「お疲れさま」など、ねぎらいの言葉が教職員間で交わされているでしょうか。忙しい時だからこそ、こんなひと言があるとちがうものです。相手が子どもであっても、同じことが言えるのではないでしょうか。

 

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更新日:2023年10月31日 15:56:38