月報 2004年度 12月号

 

平成16年(2004年)12月1日
編集発行・横須賀市教育研究所/代表・五ノ井文男
〒239-0831 横須賀市久里浜6-14-3
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巻頭 特集 横須賀教育史
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巻頭


「継続」と「反復」の大切さ

 学校教育において「子どものよさを生かし、確かな学力を定着させる」ことは大切なことです。そのために日頃より子どもの知的好奇心を揺さぶり、学習意欲を持続させる指導が行われていると思います。今回はそうした指導の土台の一つとして「継続」と「反復」について考えてみました。
 10月15日に小田原市において神奈川県教育研究所連盟第51回教育研究発表大会が開催されました。本市において平成14・15年度に研究された「小中学校の連携のあり方」について、長浦小の鈴木教諭、汐入小の内藤教諭が2年間の研究成果について発表を行いました。
 鈴木教諭の発表の中に、中学校区の3小学校の5・6年生が朝学習として国語(漢字の読み書き)と算数の同一問題に取り組んだ試みがありました。算数については理解の定着について、子ども個々が記入したカードを中学校の数学科教師に進学時に提出し、授業の中でつまずきの早期発見と対応に活用したそうです。朝学習は小中学校の研究員の教諭が、小中学校9年間の指導内容のつながりを確認したうえで、共同して問題を作成しました。5年生は4年生の、6年生は5年生の内容の問題を3ヶ月間、継続して行ったそうです。
 この取り組みの結果を持って入学した中学1年生は、授業や夏季休業中の数学の学習会において、つまずきの箇所に応じた支援を受けたそうです。その成果からか、今年の9月に行った定着率確認試験(昨年と同一問題)は、昨年の中学1年生よりは+9.8%の定着率だったそうです。
 川島隆太氏(東北大学)は「足し算や引き算といった単純な計算を行っているときには、やはり左右両側半球の前頭前野、頭頂葉、ものを見る時に働く場所(後頭葉)が活性化しました。(中略)これらの実験から、文章を読んだり        計算をしたりすることが、前頭前野をとてもよく活性化するとの結論に達しました。(中略)私たちが、自分の意識の上でたくさん頭を使っていると感じることをするよりも、単純な計算や読書が脳をたくさん刺激してくれるという結果は、私自身にも予想外の結果でした。学校での学習や勉強が脳を効率良く育ててくれていたのです。(以下略)」と述べています。

 

 陰山英男氏(土堂小学校)は8月21日に「徹底反復講習会」を開催しました。陰山氏は自身の実践から「読み書き計算の反復学習が脳を活性化させ、本来ならアップするはずがない知能指数を向上させたと睨んだ。」そうです。(プレジデント紙より)土堂小学校は11月25日に「揺るぎなき基礎力の開発と未来を開く授業の創造」というテーマで研究発表会を開催し、3年間の実践を発表しました。
 近年、教育と脳科学の専門家による研究から「反復」や「音読」をキーワードにした書物や教材、学習方法が紹介されるようになりました。しかし、こうした実践は従来より授業の中で行われていたものではないでしょうか。こうした取り組みを土台にして、冒頭で述べた指導が充実していくものと思います。
 授業における「継続」と「反復」は、簡単に行えそうに思えて、指導する教師の根気と努力を必要とするものだと思います。しかし、根気と努力だけでは解決しない課題、例えば授業時数や日数があることも事実です。従って、目の前の児童生徒の状況を把握し、授業内容の構想を考えることが重要になってきます。場合によっては「宿題」という形の家庭学習も「継続」、「反復」してこそ定着するものなのかもしれません。
 今後も先生方には、子どもの心身の発達に応じた取り組みを工夫し、知的好奇心を揺さぶる指導をしていただくことを願っております。


(指導主事 北村 耕一)

 

 

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特集        


『宿題のあり方』

学校と家庭を結ぶ宿題

衣池上小学校教諭 金子 祐子 

 国語の討論会で、宿題をテーマに子どもたちの考えを聞くと「塾や習い事で宿題をする時間がない。」「やらなくてはと思うと、ストレスになる。」「分かっている所が宿題になると、やっている意味がない。」などという否定的な意見。また反対に「宿題がないと家で何を勉強したらいいか分からない。」「勉強する習慣をつけるのに宿題は必要。」「授業の復習ができていい。」などの肯定する意見も出て討論の授業は大変盛り上がって終了した。
 算数の授業終わりのチャイム。「この問題終わってない人は宿題ね。」「次の練習問題は宿題にします。」と、その場で簡単に宿題を出している自分。「え~、宿題」と多くの子どもたちが声を上げる・・。     
 改めて宿題とは何なのか?と考える機会を得た今、このように授業中にできなかったものを、宿題として家庭でやらせている自分の姿に反省をさせられる。「宿題をやる意味がない」という子どもの意見を思い出すと、確かに漢字や計算などの決まりきった反復練習の宿題が多かったように思う。反復は大切であるが、これまでのように検印や丸をつけて返すだけでは、多くの子どもたちはやる意義を感じなくなっていくであろう。子どもたちに宿題をやった喜びや充実感を感じさせる手だてが必要となる。そこで、反復練習の宿題では必ず同じ問題の小テストを行い、すぐ採点し返すことにした。このことで、結果がすぐ分かり、やれば百点が取れる喜び、間違ってしまった子も「明日は百点取るぞ!今日の宿題はどこ?」とやる意欲を出してきた。
 これからはさらに、授業に生かせる宿題を考え、子どもたちが家庭で勉強してよかったと充実感がもてるような、学校と家庭を結ぶ一人学習としての宿題にしていきたいと考えている。

自分で勉強するということ

         大楠中学校教諭 浅間 千章

 宿題をあまり出す方ではないと思う。必要ないと思っているわけではない。国語では漢字の練習、音読の練習、意味調べ、百人一首の暗記など、宿題にしたいことはたくさんある。
 でも、実際に出すとなるとどうだろう。それぞれの家庭で、落ち着いて勉強と向かい合う時間や環境が、生徒全員に保証されているのだろうかということが気になる。
 しかし一方では、宿題を出さないと家庭学習の習慣がますますなくなるのではないかという心配もある。「もっと宿題を出してほしい」という保護者の声も確かにある。
 宿題をたくさん出したら家庭学習の習慣はもっと身につくだろうか。
 自分が中学生の時、いや新採用の頃も、漢字練習や意味調べなどは宿題になるのが普通だったし、やってくるのがあたりまえだった。しかし最近はそれが変わってきている。勉強全般についてもそうだが、特に宿題は「必ずやるものだ」という感覚が薄くなってきている気がする。自分で勉強する力はかなり落ちているように思う。
 本当に宿題で力をつけてほしい生徒は宿題をやってこないことが多いし、そばについていなければ勉強に取り組めないことも多いのだ。
 それでは宿題を出す意味がない。結果的に宿題にしたい漢字練習なども授業の中で時間をとって行うようになってきている。
 どの生徒も進んで取り組みたくなり、家庭学習の習慣がつき、学力もつく、そんな宿題を出せないものだろうか。

 

 

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研修セクション 


12月の研修講座案内

基本研修
◎初任者研修
 27日(月)  9:30~17:00     第1研修室
  「国際理解教育の実践」
      神奈川県教育庁義務教育課    
      企画調査担当主幹     髙澤 崇

  「魅力ある教員となるために」
      富士見小学校教諭     永嶋 裕一        

専門研修
◎管理職研修
 《校長対象》
 3日(火) 15:30~17:00    第1研修室
  「民間企業における人材育成」     
       横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ
      研修担当ディレクター    袖山 雅弘

 《教頭対象》
 7日(火) 15:30~17:00    第1研修室
  「人権・同和教育の推進」
       神奈川県子ども人権専門委員
                    鈴木 節夫
◎教育課程担当者研修
 《小・中学校合同》
 27日(月) 13:00~17:00   ヴェルクホール
  「学校評価シートの作成に向けて」   
      横浜国立大学教育人間科学部教授
                   影山 清四郎

その他の研修
◎教育相談研修
 1日(水)  15:30~17:00    総合福祉会館
                     4階会議室
  「教室で生かせるAD/HD児への対応」  
      早稲田大学教育学部助教授    
                    本田 恵子

~2年次教職経験者研修の感想(抜粋)~ 
11月10日、57人の先生方が集まり、各自の実践レポートに基く協議が行われました。研修室には、教職2年目の先生方の活気が満ちあふれていました。研修の感想の一部を紹介します。
◆みんな自分と同じような体験をし、悩みを持っていることを知ることができた。その上で、自分の学級経営や生徒との関係をふり返るきっかけができた。
◆みなさんの悪戦苦闘ぶりを聞かせていただいてほっとする一面もありました。
◆あらためてしっかりと生徒に向き合っていきたいと思いました。
◆グループ協議の中で、クラス経営の話、普段の生活の中では聞けない他の学校の先生方の悩み、成功例、工夫しているところなどが聞けて自分にとってプラスになることばかりでした。
◆学校によって環境がここまでちがうものかと驚きを覚えた。今成功していることも他では通用しないのだと感じ、自分の思いは変わらずに持ち、他の情報は柔軟に取りれる姿勢を保ちたいと考える。
◆教科指導→学級経営とつなげていくことの重要性、教材研究の必要性を改めて感じた。
◆忙しいから、大変だから…と言い訳ばかりでなく教師としての力をもっと身につけることとが必要不可欠だと感じることができ、大変良かった。
◆今後も自分自身に課題を与え、日々努力していかなければならないと考えました。
◆教員同士がうまくいっているとそれが子どもにも伝わり、学年として良い雰囲気がでてくるという話もありました。
◆肝心なのは生徒一人一人の長所をいかに伸ばしていくかということであり、そのことにいかに情熱を注ぎ続けられるかだと思う。自分に負けないようにしながら気長に頑張っていきたい。
◆自分を型にはめず、自分自身を変えていく姿勢をいつまでも持ち続けたい。

(指導主事 木屋・椿本・北村・北原)

 

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教育情報セクション 


■スクールデジタルコンテスト審査結果
 応募251点の審査が終わり、入賞作品が決定しました。どれも素晴らしい作品ばかりで審査に大変苦労をしました。学校のご協力にも感謝いたします。

1 ホームページ部門
  <小学生の部>  最優秀賞
     諏訪小学校6年  木村 瑞希さん
  <中学生の部>  最優秀賞
      鷹取中学校1年  大録 愛弓さん
2 デジタル作品部門
  <小学生の部>  最優秀賞
      諏訪小学校4年  高橋 俊成さん
3 教育ネットワーク部門
  <小学生の部>  教育ネットワーク大賞
      諏訪小学校6年  鈴木   涼さん
  <中学生の部>  教育ネットワーク大賞
      三崎中学校3年  林   信弘さん
              秋本 清貴さん

 すべての入賞作品は、横須賀市教育情報センターイントラネット、または同インターネットサイトでご覧いただけます。

 

 


 デジタル作品部門 最優秀賞
 「未来の町 ヨコスカ 海中都市Yokosuka」
    諏訪小学校4年  高橋俊成さん

 第1回目のコンテストでしたが、次年度に向けて様々な課題等も見えてました。
 一番大きな問題は、作品の制作に関わる個人情報保護や著作権についてでした。今後募集要項に、より明確な表現を盛り込むと共に、学校における児童・生徒への指導も大切と感じております。
 個人応募が原則でしたが、学校環境を使った製作が要件でしたので、先生方には負担をおかけしました。一方、授業やサマースクール等で積極的に活用されるケースもあり、感謝をいたします。 
 来年度もたくさんの応募を期待しています。

■理科室の薬品管理について
 新潟中越地震で学校も大きな被害を受けたようですが、過去には地震による実験用薬品容器の落下が原因と推定される学校火災が起きています。
 市内各学校においても、地震に備えて薬品の管理・保管について再点検をお願いします。
 薬品帳簿を必ず準備し、すべての薬品の現有数が把握できる状態にしておくと共に、薬品瓶等が転倒しない工夫を行ってください。特に、劇物は「毒物及び劇物取締法」という法律にしたがった厳しい保管・管理が求められます。小学校で扱う劇物は、水酸化ナトリウム、塩酸、過酸化水素水、メタノール、ヨウ素液等ですが、これらは医薬用外劇物の表示をしたカギのかかる薬品庫での保管をお願いします。薬品の保管については、学校に配布された「理科指導における安全指導」に詳しく載っておりますので参考になさって下さい。
 この劇物のうち、小学校では水酸化ナトリウムを6年生で取り扱うことになりますが、水溶液にしたものは保存せず、使いきって下さい。ガラスをおかしますので蓋が開かなくなることもあり、何の薬品か分からなくなることが多いものです。
 なお、不要薬品についてのお問い合わせがありますが、教育研究所では5年ごとに調査、回収を行っています。次回は平成20年度に回収の予定です。申し訳ありませんが、それまで学校での安全な保管をお願いいたします。

(指導主事:高木 TEL837-1338・一栁 TEL836-2418・坂庭 TEL836-6104)

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こくばん


 不登校を考える 

年度の不登校児童・生徒の状況 ~不登校生徒減少の兆し~

 昨年度の不登校者数は、小学校では80人(0.36%)、中学校では541人(4.99%)で、統計をとり始めて以来最多となってしまいました。特に中学校の出現率は県や国のそれを大幅に上回り、最重要課題として取組みが強化しています。
 今年度から中学校全校にスクールカウンセラー等が配置され、小学校21校にもふれあい相談員が配置されました。また、訪問相談員も増員され中学校5校が訪問相談重点校になりました。
 その他、「スペースゆうゆう坂本」の開設や小・中学校教員の人事交流EJプロジェクトの実施、校内の登校支援担当の明確化、研修の充実等、様々な支援策を打ち出してきました。各学校でも校内相談体制の見直しや家庭訪問の強化など、今まで以上に関わることを重視して積極的に取り組んできました。 
 しかしながら、支援の効果を短時間で数字に反映させることは難しく、今年度4月は小・中学校ともに昨年度よりも更に不登校者数が増加し、その後も非常に厳しい状況が続いてきました。        

 

下図グラフからもわかるように、特に小学校の出現率が昨年度よりもだいぶ高くなり心配な状況になっています。中学校の出現率は、9月で前年の数値を下回り、10月は更に前年より40人も減少しました。これは近年に例のない朗報と言えます。各学校の取組の成果が着実に現れています。
 例年、夏季休業あけの9月は不登校が著しく増加する傾向が見られます。昨年度は7月に269人だった不登校生徒が100人近くも増加しました。今年度は57人の増加にとどめることができました。これは、各校が夏休み中も不登校生徒への支援を強め全校体制で取り組んできた成果だと思われます。 中学1年生の不登校が一人もいない学校が何校か出始めたのも心強い点です。
 今後も引き続き校内の相談体制の充実やスクールカウンセラーとの連携に努めるとともに、不登校を未然に防ぐための予防的な対応を進めていただきたいと思います。また、小学校においては不登校出現率がしだいに増加しつつある現状を重視し、個々の児童に寄り添ったきめ細かな対応をお願いいたします。

(指導主事 下川 紀子)

 

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◆災害からの教訓  

台風に続いて新潟中越地震、全国から多くの支援の輪が広がり心温まる思いがします。大災害があっても直接被害の立場にないと、時間の経過はその教訓やいざという時の対応等を忘れてしまいがちですが、改めて日頃の心構えや備えの大切さを痛感します。


◆明るい話題の提供

  朝、学級担任が教室にどんな顔で入ってくるか、どんな話をしてくれるのか、子どもたちは注目しています。気が滅入ってしまうニュースが続きますが、元気ややる気が出る話、友達や先生、PTAの方々の頑張っている姿など、明るい話題を取り上げていくことは、子どもたちの目のつけどころ、価値観に大きな影響を与えていくはずです。特に、他の教師について語ることの大切さは心がけていたいものです。

 

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更新日:2023年10月31日 23:21:19